ゾンビランドナナ #017

 十数分後。コハルはコンビニの袋を両手に持って帰ってきた。
 
「悪いな」
「気にしないで。あ、玄関の塗料はちゃんと避けたわよ」
「ははは」

 コハルは靴を脱ぎ、冷蔵庫を開ける。ビニール袋の中身を次々入れていく。どうやら、柊ナナの食生活を慮って何かと買ってきたようである。
 
「......気を遣ってくれるのはいいが、私は料理しないぞ」
「分かってるわよ。生の食材は今日明日の分だけ。後はほとんど冷凍食品」

 今度は冷凍庫を開け、もう一方の袋の中身を移していく。冷凍チャーハン、冷凍パスタ、冷凍お好み焼き、冷凍焼きおにぎり......
 
「なんだかすまない」
「みすみす栄養失調で死なれても困るからね。でも、今日のところはこれでいきましょう」

 そう言ってコハルは柊ナナにビールの缶を手渡す。第二だか第三のビールではなく、普通のビールだ。
 
「何を驚いた顔を。さては高いから発泡酒しか買ったことないのね」
「......」

 図星である。発泡酒どころか、某高アルコール濃度飲料に手を出すこともしばしばである。
 
「何ぼーっとしてるの。乾杯しましょ、乾杯」
「乾杯?」
「再会を祝して」

 かしゅっ、と缶の開く音。炭酸の音。
 缶に口をつける。炭酸が喉でプツプツと弾ける。何故か目が潤む。
 気付けば半分ほどを飲み干していた。コハルと目が合った。
 
「乾杯」
「......乾杯」

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました