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ミチナナ浴衣デート 夜空の花火告白編

※この記事は重大なあれこれを含みません




 雑踏。
 祭囃子。
 浴衣の袖が擦れる。
 下駄の音。
 小さな下駄の音。
 
 遅れてきたことを謝る君。
 謝る必要はない。君がここにいることが、私にとって救いだった。
 
 君の、色々な姿が見たかった。
 出会ったばかりの私に、心を開いてくれた君。
 不安を笑顔で隠す君。
 傷口を舐める。
 泣きそうな顔で、私の傷口に触れる。
 
 私は君の手を取る。
 
 約束したのだ。
 私らしくもない、手紙を渡した。
 もしも私の想いが届くならば、逢いに来て欲しいと。
 
 熱を帯びる指先。
 君は、私の手を握り返した。
 
 花火が上がる。
 背伸びをする君。
 私に微笑みかける。
 
 私は今、どんな表情をしているのだろう。
 
 夜空に花が咲く。咲いては消えてゆく。
 私はかつて、何度も手を伸ばした。
 だが、ただ一つとして指先が触れることはない。
 
 私は、君の背をぎゅっと抱き締める。
 離さないように。
 離れないように。
 
 囁き声。
 絶えず鳴り響く、花火の音。
 君は頬を染める。
 私はそっと、唇を重ねた。



つづかない

ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました