百色図鑑 ビブリオエッセイ
日本の四季は美しい。
小さな国でありながら、北に南に、東に西に細長く、同じ季節でも、それぞれの土地によってそのの様は全く変わる。
春の桜の色、夏のむせかえるように華やかに咲く花々の色、目が冴えるような秋の紅葉、そして静まり返る冬の白さや灰色の世界。どの季節の同じ色名であっても同じはない。
春の桜
一本の木に咲く無数の花は、文字通り桜色だ。しかし、その一輪一輪の色は違うし、一枚の花びらでさえ、縁と花芯近くでは同じ桜色ではない。
一本の桜の木に、どれだけの桜色があるのか、人それぞれに感じる桜色がある。
夏の花々
絵の具をひっくり返したかのように、ありとあらゆる色の花が咲きみだれる
ひまわりにも、無数の黄色がある。
青い花も、黒い花もある。
「さいたさいた チューリップの花が ならんだならんだ あかしろきいろ」
その、チューリップでさえ、紫も黒も、ミックスもあるのだ。
おっと、チューリップは春の花だったか。
秋の紅葉
紅葉の「紅」は「赤」ではない。真紅の紅も、オレンジがかった紅も、茶色に近い紅もある。
真っ赤な紅葉は真っ赤だけじゃないのだ。
冬の白と灰色の世界
北海道でも、私の住む豪雪地帯もあれば、ほとんど雪が積もらない場所もある。
雪が1メートルも積もれば、地上の全てが「白」になる。道路なのか、畑なのか、区別がつかなくなるのだ。
車で走れば、降り続ける雪が後ろに流れ、動いているのが車なのか、道路なのか、感覚が麻痺する。時に、「白」に命を奪われてしまう。
日本の自然が生み出す色は、心を揺さぶる。
その美しすぎる色彩が、言葉の綾を作り出す。
渡辺淳一作品「桜の木の下で」の中の咲き乱れる桜には、美しさを超えた殺気を感じるし、「阿寒に果つ」の雪の白が美しく、果てた命をも美しいまま隠してしまう。
日本の小説の言葉には、「色」がある。その色が、言葉を情景に変え、頭の中で、ありありと想像することができる。
私も色のあるエッセイを綴るとしよう。
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