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リアル・ジョージアへ〜はじめに〜

パンデミックになってどこにも行けなくなった頃、そうだ!妄想でジョージアに行こう!と本やネットでいろいろ調べて遊び、本当に旅したかのような思い込みzine「妄想ジョージア」を作った。その時目的地がジョージアだったのはなぜだろう。
ヨーロッパとアジアと中東そして旧ソ連の文化が交わるその地への漠然とした興味と、ミステリアスなイメージが妄想にふさわしい気がしたのだと思う。

表紙:ピロスマニの漁師の、ゆる模写

zineを作っている最中はめちゃめちゃ楽しかった。様々なことを知るにつれ今までに訪ねたことのあるどの国とも違うあれこれが新鮮だったし、ピロスマニという国民的画家の作品やそのDVDも見て、「パンデミックが終わったらぜったいリアルで行くのだ!」と思っていた。しかしその時の自分の妄想力があまりにも強すぎたのかzineが完成して時間が経つとだんだん熱が冷めて「ジョージアは、もう行ったことあるからいいか」と思うようになった。(行ってないのに・・・)

そんなある時、友人からジョージアの東部カヘティ地方のパンキシ渓谷を舞台にした「アダミアニ」という映画をすすめられて見に行った。日本人の映画監督がパンキシでゲストハウスを営む少数民族のキスト(チェチェン系ムスリム)のある女性を取り巻く現実を描いたドキュメンタリーである。
https://inorinotani.com/

1999年のチェチェン紛争を逃れた人々が多く住むパンキシは、かつて犯罪組織が潜伏する「テロリストの温床」という烙印を押されてジョージア国内でも危険地域と恐れられていたが現在はすっかり落ち着いてコーカサスの山々を望むのどかな美しい所である。映画には、村の人々が以前の負のイメージを払拭しその雄大な景観やトレッキングで観光客を誘致し発展させようと奮闘する姿が淡々と描かれている。

ゲストハウスを営むレイラさんは多分私と同じくらいの歳だろう、歴史の流れ中で私には想像もつかない壮絶な経験をしてきた上にジョージアではマイノリティのムスリムである。しかしこの映画には暗さや大変さよりむしろそれらをふんわりと包む希望の光のようなものがあふれていた。
私のジョージア熱が再燃した。もう妄想じゃなくリアルでここに行きたい。

さらにその後すぐ追い討ちをかけるかのように、雑誌「TRANSIT」の特集号タイトルずばり「コーカサスが呼んでいる!」を見つけた。周辺の美しい写真とともにレイラさんの取材記事もある。
もうこれはまさにコーカサスに呼ばれてると思った。

でも少しだけためらわれた。元々彼らの歴史に決して詳しいわけでもなく、その思いやシリアスな経験とは全く遠い世界でのほほんと生きてきた私のような者がお気楽に遊びに行って良いものだろうか。
そのことを映画を勧めてくれた友人(監督の知人でもある)に言うと「そういう人が普通に行くことに意味があるのでは」と背中を押された。
そうだ、観光ってそういうことだ。平和であればこそ出来ることなのだ。

というわけで、行ってきました。

〜「リアル・ジョージアにて 山編その1」へ続く〜https://note.com/k_maysea/n/ne73953c6ebbf





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