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2回目のプロポーズは、ヨルダンで

本noteで登場するヨルダンの写真は、友人であり、カメラマンをしている、長沼さん(Instagram)に撮影いただいています。ぬまさん、素敵な写真をありがとうございます。




2024年5月21日。1回目のプロポーズに、号泣しながら「はい」と言った日から、約3年後のことです。私は、中東のヨルダンという国にある、ペトラ遺跡で、夫から2回目のプロポーズを受けました。

すでに愛のこもったプロポーズの言葉はもらっているのに。

すでに結婚式も終えているのに。

2回目のプロポーズをされることも分かっているのに。

いざ、目を見て言われると、1回目と同じように、脳みその解像度がぼんやりしだして、耳から入ってくる言葉もうつろになります。覚えているのは、「はい」と言ったことと、私の薬指にぴったりとはまる婚約指輪があったことでした。


では、なぜ、「ペトラ遺跡」で「2回目のプロポーズ」に至ったのか。これをお話しするには、私の過去20年間に渡る歴史の話をしなければいけません。

これは、note版のプロジェクトXだと思ってください。



ペトラ遺跡への憧れ

私は、映画のインディー・ジョーンズシリーズが大好きです。大学の専攻を選んでいた時は、考古学にするか、国際関係学にするかを最後まで悩んでいました。最終的には、国際関係学を選ぶのですが、それくらい影響を受けた映画です。

インディー・ジョーンズの中で、私が1番好きな作品である「最後の聖戦」。映画のクライマックスに出てくる、イエス・キリストの聖杯が隠された遺跡がありました。

映画に登場する遺跡が、ミステリアスかつ偉大で、映画のセットだと思っていました。これが、実在するペトラ遺跡だと知った時に、いつか私も遺跡に行って、インディー・ジョーンズみたいに探検するんだ!と夢に見ていました。これが、高校生の時です。


1回目の諦め

2012年5月。私は、新卒で入った会社で戦士のように必死に働いていました。午後8時以降からが勝負!みたいな毎日です。そんな日々に、息抜きの場を与えてくれたのが、同じ部署にいた同期2人でした。

同期2人とこっそりメールを送り合い、近くにあるセブン・イレブンへ休憩に行ったり、非常階段に出ては、大変な毎日の中でお互いを鼓舞しながら頑張っていた頃です。会社にいる時間はとても長かったけど、すごく楽しんでいました。

仲良しの同期と、ゴールデンウィークに海外旅行へ行くことになりました。同期はともに男性。男性2人を引き連れて行けることは、中東に行く大チャンスなのでは?!ヨルダン行きを提案し、ありがたいことに一緒に行ってくれることになりました。

やっと、やっと、夢のペトラを見ることができる。

そして、ゴールデンウィークの1週間前。どこからともなく、「ヨルダン旅行を取り止めよ」と、上司様の声が降りてきました。理由は「危ないから」です。当時でも、ヨルダンに対する外務省の危険度は高くなく、インドと同じくらいでした。しかし、中東のイメージが先行し、そのような連絡が入ったのです。

そんなことを言われたとしても、私用だし、うるせぇ!関係ねぇ!バーイ!って言って飛び立ったら良かったのですが、入社2年目で純粋だった私たちはその言葉を真摯に受け止め、ヨルダン行きを泣く泣くキャンセルすることに。出発の2日前のことです。

最終的には自分の判断であったものの、中学生の頃から夢に見ていたヨルダン行きが止められたことに、ものすごい腹が立ちました。夢って、誰かに止められるものなんだ。納得がいかねぇ!

とはいえ、キャンセルはキャンセル。同期とは、仕事が終わり帰宅してから、午前2時くらいまでSkypeしながら、代替案を考えました。その中の1人は、Skypeしながら寝てました。安全性を最大限に考慮しつつ、楽しそうな場所を考えた結果、2012年のゴールデンウィークは、オーストラリアのケアンズで過ごすことにしました。

ケアンズの空港に降り立った瞬間に、電子掲示板で「祝・ゴールデンウィーク」と日本語で表示されていました。色々あったので、海外で見る日本語表記は、これ見よがしに「安全な国である」ことをアピールされているようで、妙にムカつきました。

しかし、仲の良い同期と行く旅行は、どの国でも楽しいものです。ケアンズに行ったら行ったで最高に楽しく、弾丸エアーズロックツアーに行ったり、とりあえずレンタカーして遠出したり。思い出すと、今でも笑い話がたくさんありますし、青春でした。


2回目の諦め

また時は飛んで、2019年。今の夫と出会った年です。

夫は、過去にペトラ遺跡に2回行っていました。なぜなら、2回も世界一周をしているからです。そんな人、います?

私のヨルダンに対して持つ、鬱々とした思いを共有しました。そして、約束してくれました。「僕が、ヨルダンのペトラ遺跡に絶対に連れて行く」と。これは、彼と初めて交わした約束です。

出会った当時から、日本にいる時間の方が少ない生粋の旅人でしたので、この人であれば約束を叶えてくれるだろう!そして、同期よりも頼もしい(同期に失礼)!と前向きに考えることができました。

私の誕生日祝いも兼ねて、2020年7月にヨルダンに行くことを計画していました。やっと行けるぞ!今回は、すでに行った気になりながら、計画をしていました。

2020年3月。皆さん、忘れていませんか。コロナです。なんだよコロナって。遠くの国で起こっている謎の病気、くらいに思っていたことが、国内でも深刻な問題とされ、ついには世界各国でロックダウンが始まりました。

また、ヨルダンに行けなくなりました。


夫のペトラ遺跡に対する想い

2021年5月。夫からプロポーズを受けました。

私にとっては、記憶がぶっ飛ぶくらい幸せな日で、パーフェクトなプロポーズでしたが、あとあと夫に聞くと、本当は違う計画があったと。

本当は、私が夢に見ているヨルダンのペトラ遺跡の前でプロポーズがしたかったそうです。コロナがいつ終息するのかわからない中、あと少し待てばヨルダンに行けるか?あともう少しか?とタイミングを見計らっていたら、予定していた時から1年が過ぎようとしていた、と。

このままでは、埒が明かない。場所は全然違うけど、プロポーズはしよう、と思ったそう。その決断、英断すぎるぜ。ありがとう。

そこから、また2年の時が過ぎました。世界的に旅行をすることも当たり前になっていたので、夫と約束していたもう1つのことを実行する時が来ました。それは、世界一周です。

今度は、ヨルダンだけではなく、世界一周をしよう。世界一周の中で、ヨルダンに寄ろう。

2023年8月に、夫とともに世界一周をはじめました。


いざ、ペトラへ

現在進行形ですが、過去10ヶ月間で、北米、南米、ヨーロッパを渡り歩いて来ました。ヨルダンに行くのは、2024年5月。

ヨルダンに行く日が近づくにつれ、イスラエル・パレスチナの情勢が悪化して行きました。一瞬、ヨルダン上空に空爆が飛んできた、なんてニュースもありました。まさか、また行けなくなるのではないか。

夫は前向きで、有言実行な人間です。「絶対に行く。約束を果たす。そして、やりたかったプロポーズをする。」気合いが入っていました。

一方で私は、期待ゼロでした。というか、ゼロにするようにしていました。すでに、2回、ヨルダン行きを諦めざるを得ない状況に立たされています。3回目があっても、驚きません。ペトラ遺跡を目の前にするまで、行けるとは思わない。そう唱えながら、ヨルダンへ入国しました。


20年越しの夢と、夫の夢が叶った日

2024年5月21日。中学生の頃に見た「インディー・ジョーンズ 最後の聖戦」で一目惚れした、ペトラ遺跡に、やっと、やっと!来ることができました。本当にあったのか、ペトラ。

ここに来るのに、20年もかかったなんて。そう思うと、なんて長い道のりだったのだろう。2回もチャンスがあったのに、行けなくなった悔しさも相まって、遺跡の前で号泣しました。もう、一生来れない場所だと思っていた。


ひとしきり泣いたあと、エル・カズネ、いや、インディー・ジョーンズが聖杯を探しに入った場所の前で、夫が私の前でひざまずきました。

1回目のプロポーズの時には無かった、本物の婚約指輪の箱をパカっと開けて。

この人と出会えて、本当に良かったです。

2回目のプロポーズは、私の溜まりに溜まった想いと、夫の想いに、やわらかいピリオドを打ってくれました。心にずーっとあった「やり残したこと」がスーッとなくなり、また、泣きました。

ちゃんちゃん。




ペトラに行く夢を叶えて思うこと

プロポーズは、何度受けても嬉しいものだ、というのは当たり前の感想として、自分の夢をやっと叶えることができて、強く思ったことがあります。

行きたいところがあったら、すぐに行くべし。

コロナ、世界情勢など、自分にはコントロールができないことで、行きたいところに行けなくなってしまうことは容易にあり得ます。今回も、危うく隣国のいざこざで、行けなかったかもしれません。

自分や周りの大切な人が、ずっと健康であるとも限りません。旅ができなくなるリスクは、いつもすぐそばにあります。

世界一周中に、色んな観光地を巡っています。中には、オーバーツーリーズムや、単純に経年劣化したせいで、元々の姿が消え去っている場所も見てきました。見たいもの、行きたい場所は、一生あるわけではないと肌で感じています。

私は、ヨルダンに行くチャンスが過去に2回もありました。3回目には行くことができましたし、それ以上に、仕事を辞めてまで世界一周に出る、という贅沢な選択ができています。私は、確実にラッキーです。色んな事情で、すぐに行きたい場所へ行けない人の方が多いと思います。

でも、もし、やむを得ない理由は無くて、何となく、とか、面倒、とか、言葉にできない理由で行けていない場所があるのであれば。ちょっと無理したら行けそうなのであれば、今、行くべきです。マジで。

時間も、モノも有限です。行きたいところ、見たい景色があったら、私のように20年も待つのではなく、行ってください。行けなくなる前に。






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