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著作者人格権について

小学館の編集者より、プレスリリースが出ましたね。

著者の意向が尊重されることは当たり前のことであり、断じて我が儘や鬱陶しい行為などではありません。
守られるべき権利を守りたいと声を上げることに、勇気が必要な状況であってはならない。
私たち編集者がついていながら、このようなことを感じさせたことが悔やまれてなりません。
二度と原作者がこのような思いをしないためにも、「著作者人格権」という著者が持つ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが、再発防止において核となる部分だと考えています。
勿論、これだけが原因だと事態を単純化させる気もありません。
他に原因はなかったか。私たちにもっと出来たことはなかったか。
個人に責任を負わせるのではなく、組織として今回の検証を引き続き行って参ります。

引用元:https://www.shogakukan.co.jp/news/476200

どうして「著作者人格権」について触れられてこなかったのだろう……と
うもやもやはずっと私の中でもあったので、少しスッキリしました。

この小学館の編集者のメッセージからして、「著作者人格権の不行使条項」は、契約内容に含まれていなかったのだろう、と私は感じました。

そして、著作者人格権について真っ正面から取り上げて下さったのが、良かった。

 私たちが語るまでもないことですが、「著作権」と呼ばれる権利には、「著作財産権」と「著作者人格権」というものがあります。
「著作財産権」が利益を守る権利に対し、「著作者人格権」というのは著者の心を守るための権利です。
著者の許可なく改変が行われないよう作品を守るための「同一性保持権」をはじめ、「名誉声望保持権」「氏名表示権」「公表権」「出版権廃絶請求権」「修正増減請求権」があります。これらの全ては契約を結ぶまでもなく、著者の皆様全員が持っている大切な権利、これが「著作者人格権」です。
今回、その当然守られてしかるべき原作者の権利を主張された芦原先生が非業の死を遂げられました。

引用元:https://www.shogakukan.co.jp/news/476200

また、小学館編集部のプレスリリースについて補足しておくと、著作者人格権は一身専属権。通常言われる「著作権譲渡」があったとしても、それは「著作財産権」の譲渡であり、著作者人格権は絶対に譲渡できません。

そして、当事者である脚本家の方のコメントも拝見しました。
うーん、こちらは却って事態を悪化させただけのような気もします。
何で「証拠」となるSNSのアカウントを削除してしまったのでしょうか?
いくらスクショが出回っているとはいえ、前後関係のやり取りもあったはず。保全しておくべきだったのでは……。

「誰も責めるべきではない」という声もありますが、やはり発端となったのは、脚本家の「著作者人格権」についての認識不足、そしてそこから生じた軽挙な振る舞いに他なりません。
その点についてはごまかされるべきではないですし、民法の「クリーンハンズの原則」に則って、「あなたが自分の権利を主張することは、信義則上認められない」と、私は思います。
余談ですが、私が「著作者人格権」に基づいてバトったときの実感は、下記の投稿で残してあります。

――少なくとも私は本業の方ではきちんと書いたものについて尊重されていますし、記事としてアップされる際に多少文章の増減があったとしても、オリジナルで作った図などはそのまま使われています。
たとえ無記名記事だとしても、原作者の意志をきちんと汲み取ってもらえるというのは、ありがたいことなのだと感じました。


先日、須賀川中央図書館に『泪橋』執筆時のメモ?もとい資料、及び現地取材に行って撮影してきた写真諸々を寄贈してきました。
本日は借りていた本(「青天を衝け」のノベライズ本)の返却、及びラジオで紹介していただいたお礼も兼ねてご挨拶してきた次第です。

そして、つくづく思ったのが、泪橋の「著作権が手元にあってよかった」ということ。
泪橋は色々コンテストに出していたのですが通らなかったので、著作権は私が保持しています。PODでAmazonで販売する際も、本のレイアウト・デザインも自分で手掛けたことで、気軽に地元図書館に資料の提供ができたというわけです。

原則、撮影禁止なので館内の様子をお伝えできないのが残念なのですが、実は須賀川図書館は、「東日本で訪れてみたい図書館ベスト5」にも選出され、全国から視察が来る素晴らしい図書館なのです。
割と色々と企画も立てていて、4Fの地域資料室には、現在「文豪ガチャ」が設置されるなど、なかなかユニーク。
泪橋の資料もいずれ活用される予定なのですが、もしも何か賞を受賞していて出版権を始め、著作権が出版社に渡っていたら、こうは気軽に資料提供をできなかったかもしれません。
良いのか悪いのか、今の段階では判断がつきかねますが……。

先日の芦原妃名子先生の件以来、やはり著作権については色々と考えさせれます。
恐らく出版社のスタンスによるかとは思うのですが、できるだけ、自分の作品を大切にしてくださるところとお付き合いしたい。
資料提供のための手続き書の記入をしながら、そのように感じた次第です。

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