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日本語指導ボランティア日記4

6月5日

日本語でおk。2人の会話が分からなくなっちゃった。


前回に引き続き、中国出身の方の指導が続きます。
ボランティアの数が足りず、
いつものAさんと、新しくお会いする中国出身のBさん、
2人を同時に教えることになりました。

申込書を見ると、Bさんは昨年4月に来日。
「僕あんまりできないです、N5※です」と謙遜しておきながら
私の言った日本語を、スラスラとAさんに通訳するのです。
どうか正しいレベルを申告してください…。
※ N5=日本語能力検定(英検の日本語版)の、最も初級のレベル

指導の途中、Bさんから、
「先生、ここの受け身が抜けています」とご指摘いただいたり、
「これは過去完了ですね」とご助言いただいたりしました。

私は、顔を真っ赤にし、小声で感謝を述べました。

さて、今回も文法の質問受け付けから開始。
「いつものテキスト」があれば私もラクなのですが、
毎回フリースタイルで、しかも今回は異なるレベルの2人を
担当するということもあり、総合格闘技のような状態でした。

最初の質問でAさんから、
「切ったった」とはなんですか?と聞かれました。
あまり丁寧ではない言い回しかも、と前置きしつつ分解をしてみせます。
早速の変化球で内心は汗タラタラ。
現場では間違って教えてしまったと思うので、振り返ります。

切る+てあげる (して+あげる、なので補助動詞・授受表現です)

切る+てやる(あげるを乱暴な語彙に変換・語彙の違いです)

切った(過去形)+てやった(過去形)

切ってやった

切ったった(口語的な短縮形・方言の可能性もあり)

分解があっているか不安

ネットでさらに調べたところ、理解の深まる説明が出てきたので、
それを参考に自分で追加説明をまとめてみます。

やる/あげる/さしあげる
やる…目下の人・立場 (犬に餌をやる、子にミルクをやる)
あげる…通常の使い方 (友達に教えてあげる)
さしあげる…目上の人・立場、敬語表現 (傘を持ってさしあげる)

ただし、自分をへりくだる謙譲語Ⅱに分類される「さしあげる」は、
「先生にお菓子を差し上げる」などにすると、嫌味な感じが含まれる。

「先生にお菓子をお持ちする」「先生にお菓子を選んで参りました」
などの言い換えが考えられる。

短縮系が派生して待遇表現まで飛躍するのか…

ほかに「食べちゃった」ってどういう意味ですか?
という質問も飛んできました。
チャッタ…。
よし。分解してみましょう。

食べる+(〜して)しまう(完了形)

食べて(連用形・日本語教育ではテ形)+しまう

食べちゃう(短縮系・口語表現)

食べちゃった(過去形)

合ってる?

完了の文形で、食べるという行為がもう終わっている状態を指します。
N4レベルの文法表現として登場するようです。

まだまだ話題にしたいトピックがあったのですが、
連載にしてもいいボリュームなので今回はいったんここで。

授業中、Bさんも一緒になってAさんに解説をしてくれました。
私も心配になり、「Aさん、わかりましたか?」と聞くと
Aさんより先にBさんが
「勉強が足りてないです」
と、ド直球な答えを返してくれました。
これは語彙がないからなのか、小さなマウントなのか…。
言葉の壁と文化の差が正確な理解を妨げます。

しかしBさんも、無双状態ではありません。
使役動詞の活用などはまだ正確でない部分があり、
(手を洗わさせれる(誤)←手を洗わせられる(正))
また、発音もラ行がグダッと崩れる節がありました。
ここらへんが中〜上級の方への指導ポイントなのかなと感じつつ、
今回はあまり教えられなかったことが悔やまれます。

中国出身の2人とあり、互いに中国語で話すおかげで
先生である私が置いてけぼりの時間が3分の1ほどありました。
不思議なことに、うん、うん、と自分も分かるふりをしてしまうもので、
妙に体力がすり減り、クラスの終了時は疲労困憊でした。
無意識に同調しようとするのは、日本人気質なのかもしれません。

身近な場所でディープな異文化交流が行われているので
もう少し息子が座っていられる歳になったら
連れていきたいと思います。

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