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チーターから学べることと、ヒトの走りについて

トレーナー、セラピスト、ボディワーカーをしていて筋膜系の勉強をしてきた方はおそらく一度は目にしたことはあるんじゃないかというこちらの動画。

先日、ランニングを人の進化から紐解くという論文を読んでいる中で「頭部の安定性」という項目があったのでふと思い出して久々に動画を眺めていました。

チーターが獲物を狙って走っている姿のスローモーション映像です。自分がいつも感心しているのが、

・頭がぶれないこと
・前脚で蹴るときの背骨の曲がり
・後ろ脚で蹴るときの背骨の伸び
・皮膚の余裕
・肩甲骨の動き

といった部分。

こういった四つ足動物の走りを見ていると、あらためて背骨の動きの自由度って大切だなーと感じますし、腕は肩甲骨から生えているし、脚は骨盤から生えていることを実感します。


実は四つ足動物の走り方には、チーターのように前脚主導で接地して重心をコントロールして後ろ脚で蹴って推進力を得るパターンと、後ろ脚を先に接地して推進力を得てから前脚で蹴ってコントロールするパターンの2種類があるようなんです。

後者のパターンの代表が馬。競馬場でみるサラブレッドたちの見事な走りに見とれてしまう方も多いはずですが、走る代表のチーターと馬は走り方が違うということはご存知ない方も多いのでは。


よく見ると確かに違うのがわかります。だからといって、それを知ったところでヒトの走りにヒントになるのかと言われると、ぶっちゃけそんなに意味はないのですが、やっぱりこういった意味がないと言われることもなんとなく知っておくと役に立つのかなと思ってついつい調べてしまいます。

その論文がこちら↓

Motions of the running horse and cheetah revisited: fundamental mechanics of the transverse and rotary gallop


四つ足動物の走りのことを「ギャロップ」といって、馬とチーターの走りを比較してどんな足運びをして、どんな重心の変化をしているのかを調べています。

チーターの走りの特徴といえば、前脚での接地→離地で脊柱を屈曲して前への推進力を得て、後ろ脚で接地→離地で脊柱を伸展してさらに推進力を得るという2段階の加速パターンが備わっていること。

この、前脚でのコンタクトが人間でいうところのヒールコンタクト(接地)の局面、後ろ脚でのコンタクトが人間でいうところのトゥオフ(離地)の局面と捉えることができるようです。

その点、馬の場合には後ろ脚で地面を蹴った推進力を、さらに前脚でコントロールするので、それこそ450kg前後の体を支える脚(特に前脚)には大きな負荷がかかるんですね。

ちなみにいうと犬や猫など大半の動物はこの2種類の走りを使い分けているようで、遅いスピードのときは馬と同じような走り方、スピードが上がってくるとチーターのような走りになることがわかっています。ウサギなんかもバウンドが入るものの同じように使い分けているのが面白いです。


まあ、何にしても走っている動物の姿を眺めているのは問答無用で美しいなと。チーターの頭の位置が変わらないとか、馬の重心の位置が安定しているとかありますが、皮膚のたるみからお尻の筋肉の張りまで全てが美しくて惚れ惚れしてしまいます。

この2つの動画を見比べているだけであっという間に時間が過ぎ去ってしまう。


じゃあ、これを見てどんな部分が人の走りに参考になるのか。

まずは背骨に自由度があって、適切な動きができていること。二本足で走るときには脊柱の屈曲や伸展が大きくなると無駄なエネルギーを消費してしまいますが、多少の側屈や回旋が入ることで「うねり」のような力の伝わり方をして効率的にエネルギーを使えるようになります。筋トレをしていると固めグセがつきやすいので、このあたりは参考になりそう。

それから接地から離地までの重心のコントロール。できるだけ重心が落ちないようにする必要があり、そのためにも伸張反射(バネの力)を使って高いポジションをキープできるようにする。

もう一つはやっぱり肩甲骨と股関節ですかね。腕と脚がどこから生えているかを意識するだけでも動きの大きさは変わってきます。例えば、ただ腕を回してみるのと、肩甲骨から回してみるのだと明らかに肩甲骨から意識した方が大きく動く感じがします。(もっというと鎖骨から動かす意識の方がさらに大きく動かせる方も多いのですが。)

肩甲骨や鎖骨から動かす意識をすると自然に体のローテーションが生まれやすく、体の固めグセはなくなりやすいのでそういったメリットもあります。これは股関節でも一緒なので、骨盤から動かす(左右の腸骨を動かす)イメージで走ってみるとわかりやすいと思います。



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