『ウマ娘』は第2の『艦隊これくしょん』である
お久しぶりのnote更新になります。
『ウマ娘 プリティーダービー』のゲーム面白いですね。
正直『原神』のサブくらいでぼちぼちやるかー、くらいのやる気度だったんですけど、これはちょっとダブルメインでいきたいくらいです。具体的に言うと1,500ジュエルの有償チケットを引きたくなってしまっているくらいには。
実は以前『ウマ娘』のゴールドシップに絡めた「おもしれー女」という枠でVTuberとの関連を試みた試論を書いた
んですが、チラッとだけゲームそのものに関しても私見を述べさせていただきました。
以前はキャラクター論として『ウマ娘』を採り上げましたが、今回はウマ娘そのもののブームを、かつて大ブームを巻き起こしたタイトルと共に検証──とまでは言いすぎですが、少し本格的に見ていきたいと思います。
『ウマ娘』とは
『ウマ娘 プリティーダービー』は過去に実際に競馬で活躍した競走馬を少女として擬人化。競走馬としての因子を有し、常人離れした身体能力を誇る『ウマ娘』たちを育成しレースで勝たせていく、というゲームです。
育成の最終目標は『URAファイナルズ』というオリジナルのレースに勝利し、ライブ楽曲『うまぴょい伝説』を視聴(通称・うまぴょい)することとなります。
リリースまで非常に長い期間を要したゲームとしても知られており、いつ完成するかもわからないことを揶揄して『サグラダ・ファミリア』だなんていう声もあったくらいです。
しかし蓋を開けてみれば圧倒的人気。現在放送中のアニメ2期も相乗効果で伸びているようです。
私もこの間現在公開されているところまで観ましたが、トウカイテイオーを筆頭に、2期に登場したウマ娘を全員勝たせてあげたい気持ちになりますね。
以前の記事でも似たようなことを書きましたが、長期間の雌伏を経てでも『ウマ娘』の可能性を信じ続けたサイゲームスさんは素晴らしいですね。
短期で結果を求められがちなアプリゲームの世界で長期的視野でサービス開始まで支え続け、メディアミックス展開も地道に行っていたのが、ここで一気に花開いた。重畳! 実に見事な手腕ッ! ニャー
3月はまさに『ウマ娘』一色ともいえるブームでしたが、この感じ、私はかつて8年前にも経験したことがあるような気がしたんですよね。
よくよく振り返ってみると、『艦隊これくしょん ─艦これ─』のブーム──あの時と盛り上がりが非常によく似ているなぁ──と。
以下私が感じたデジャヴュの正体に迫ってみたいと思います。
『艦隊これくしょん』と『ウマ娘』との共通点
『艦隊これくしょん』通称『艦これ』とは、かつての第二次世界大戦──その中でも『大和』『金剛』『赤城』など、太平洋戦争を戦った艦船の名を持つ少女たちを仲間にして、『深海棲艦』というかつての「史実」を思わせる勢力と戦いを繰り広げていく、というゲームとなっています。
スマートフォンでゲームをする、ということが当たり前になりつつあった時代であえてブラウザ(Google Chrome、Edgeなどのインターネットサイトを見るためのソフト)でゲームする、というブラウザゲームの流れを確立させたゲームであり、また当時は謎の多い企業であったDMMを一躍全国区へと押し上げた功労作でもあります。
そして何より、重機や工具を擬人化した『俺タワー』、
城を擬人化した『御城プロジェクト』
お花の擬人化『FLOWER KNIGHT GIRL』
など、その後のゲームにおける美少女への「擬人化」路線を確立させたという意味で、後世に非常に大きな影響を与えた作品である、ということがもっとも重要な点となります。
※画像は当時私が撮った自分のプレイ環境のスクリーンショットです
艦船・兵器の擬人化は中国の『アズールレーン』(通称アズレン)
など一定のジャンルにもなり、また『けものフレンズ』や、今回取り上げる『ウマ娘』も、大きな枠で見れば、擬人化路線を定着させた『艦これ』の流れをくむ作品であるといえるでしょう。
と、このように過去非常に多くの「擬人化」路線のゲームが生まれましたし、それぞれかなりの盛り上がりを見せましたが、擬人化路線のゲームで『ウマ娘』ほどの爆発的ブームは久しぶりなのではないでしょうか。
ではそんな『ウマ娘』は『艦隊これくしょん』とどのような共通点を持っているのでしょうか。順を追って見ていきましょう。
1:「擬人化」路線のゲームは基本的には一人でゲームをプレイするという「スタンドアロン」方式である、という特徴があります。
ウマ娘にはフレンド機能があり、知り合いの方などの育成したウマ娘やサポートカードを使うことができたり、他プレイヤーの育成したウマ娘と競争させることができるなど、ある程度人とのつながりはあります。
が、対戦ゲームのような、キャラクターを実際に操作して競ったりするような対人要素はありません。これが『APEX LEGENDS』などの現在別のジャンルでブームになっているようなゲーム群とは一線を画しています。
実際にキャラクターを操作して誰かと対戦したりするのは面白いところがあります。私も長年格闘ゲームをしていたからよくわかります。
ですが勝ち負けを競う以上、プレイヤー同士の衝突もあります。
何より対人ゲームの場合、プレイヤーの操作にものすごく熟練した動きを求められがちであり、非常にハードルが高い、という問題点もあります。
また、FPSゲームなどでは特にそうですが、いわゆる「チート」、プログラムを操作して強化された状態で戦う、という不正行為が横行しています。
そうした対人戦の厳しい環境にあまり身を置きたくない、というゲーマー層もいる、というのが実際のところです。
対人要素の敷居の高さをあえて取っ払うことで一人でもプレイしやすい、ということが逆にウケている要素の一つでもあるのです。
また、艦これもそうでしたが、Twitterなどのソーシャルでの交流によって一人でプレイしたとしても一緒のゲームをプレイするという事実は共有できます。
負けたり、誰かの足を引っ張ったり、といった部分を気にすることもなく自分なりのペースで一人でできる、といった意味で、気軽さをもってプレイできる、というのは大きいと思います。
2:『艦これ』と『ウマ娘』に共通する要素として、最終的には戦闘や競争がプログラムのさじ加減次第となる運の要素が強い、ということが挙げられます。
『ウマ娘』もトレーニングによってステータスを上げたりして負ける確率を大きく減らすことはできますが、レース中は一切プレイヤーは操作することができず見守るのみとなります。
位置取りが悪かったり、スタートに出遅れたりして、必ずしも100%勝てるとは限りません。スキルが発動しなければあっさり負けてしまうこともあります。
というか私の育てたダイワスカーレットちゃんがそうでした。
スキルが発動すれば大差で勝てることもしばしばだったんですが……
ごめんよダスカちゃん育成ベタなトレーナーで……
自分語りすみません。
とまあ、そのようにですね、最終的にはお祈りの世界となります。
『艦これ』もちゃんと育成したからと言って目標にうまく攻撃しなかったりカットイン(特殊演出が発生し、ダメージに大幅なボーナスがつく)が発生せず仕留めきれなかったりがよくあったものです。
これはプレイヤーの操作の腕による差を極力なくそうと思えば結局運頼みの仕様にするしかない、と考えればある種仕方ない部分ではあるんですけれどね……
※『ぱかライブTV』放送中の育成でリベンジうまぴょい。嬉しい。
艦これとウマ娘に共通する「パワーワード」
これは以前のnoteでもチラッと書いた部分であるのですが、『艦これ』と『ウマ娘』のブームを考える上でプレイヤー層のかぶりが顕著だと思う点にTwitterでの盛り上がり方があります。
それは実際の競走馬の経歴を解説されることで理解が深まり、盛り上がっていくという流れです。
最初に話題となったゴールドシップの破天荒さ
や、00年代に大ブームを巻き起こしたハルウララのエピソード、競走馬たちが繰り広げた名勝負、そして多くの実際の競走馬たちが辿った悲劇……それらが多くの人に共通の知識として共有されたことで、擬人化されたウマ娘たちへの感情移入も深くなったのです。
その際に『艦これ』(と『アズレン』などの艦これフォロワー群)と共通して出てくるキーワードがあります。
それがある種のパワーワードとなり、ブームを巻き起こしたと私は見ています。
それは「史実」というワードです。
もはや「史実」というワードなくして『ウマ娘』を語ることもできないほど広く使われているように、少なくとも私には映ります。
単にウマ娘を競走馬として見ていたのならば、歴史上の事実──「史実」という言葉は通常選ばれづらいです。あくまでも競走馬としての一生とだとか経歴だとか戦績だとか、運命だとか──そのようなワードチョイスがなされるのが相当だと思います。
が、あえて「史実」というワードが使われているのは、現在の『ウマ娘』ブームに乗っているユーザー層がかつて『艦これ』を通過しているという事実を端的に表しているのではないでしょうか。
つまりいま『ウマ娘』にハマっているユーザー層は、競走馬のエピソードなどを単にいちエピソードとして捉えているのではなく、「歴史的な事象」として捉えている、というふうにも言い換えることができます。
競馬ファンという「当事者」というよりは、すでに「歴史」となった事象を追っているのである、とも言えます。
彼ら彼女らの深堀りしたい欲求を満たすだけの潜在力を有する競馬というジャンルが長期間にわたって築いたあゆみの深さが、そのままコンテンツ力の強さにもなっていますね。
『ウマ娘』が「史実」を丹念に拾っているらしい(私は競馬にまったく詳しくないので、あくまで「らしい」という表現に留めます)ことで神は細部に宿ると信じているオタクにウケたのかなぁ、という印象です。
題材こそまったく違いますが……
そのような意味で、『ウマ娘』は『艦これ』ユーザーと非常に重なっているところがあり、彼らに「発見」されたことで、『艦これ』の時を思わせる爆発的な盛り上がりを見せているように感じるのです。
これは『俺タワー』などの他「擬人化」路線の作品群には見られなかった盛り上がり方であり、この点こそが他の擬人化ゲームとの大きな差なのではないかと思います。
3月は文字通り『ウマ娘』がバクシンした月となりました。
さてここから『ウマ娘』が話題を維持していけるか。
『艦これ』のように息の長いコンテンツとなることができるか。
ここからが本当の勝負であろうと思います。
ちまちま楽しませていただきつつ、今後の動向を見守っていきたいです。
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