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次世代型保険業務オペレーション構築に向けて -スマートプラス少額短期保険のチャレンジ

Finatextグループで保険事業を推進している河端です。

Finatextグループの保険事業では、所謂「Insurtech」と言われている領域にチャレンジしており、テクノロジーを活用することで保険の顧客体験をよりよいものにしていこうとしています。

今回は、我々グループのスマートプラス少額短期保険を例に、良質な顧客体験を届けるためにどのような業務オペレーションを運用しているかについて、ご紹介したいと思います。

保険のDXやデジタル活用を自ら進めて行こうとしている方や、保険DXに関心があって情報収集をしている方にお読みいただきたいと思っています。

■そもそも、どんな会社?

最初に、スマートプラス少額短期保険と提供する保険商品「母子保険はぐ」の概要を簡単にご紹介します。

スマートプラス少額短期保険とは?
2019年4月に準備会社として設立され、2020年8月から営業を開始した、Finatextホールディングス子会社の少額短期保険会社です。
テクノロジーを活用しながら、保険商品・販売方法・各種手続きに渡り、保険のすべての顧客体験を今一度見直すことで、より多くの人に・より適切な形で保険の価値を届けていくことを目指しています。

「母子保険はぐ」とは?
スマートプラス少額短期保険が開発し、2020年8月から販売している、妊婦さん・子育てママさんに特化した医療保険です。
ママとお子さんに寄り添う保険として「母子保険はぐ」には以下3つの特徴があります。

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詳細:「母子保険はぐ」紹介資料

■業務オペレーション設計で大事にしていること:目指す顧客体験ありき

スマートプラス少額短期保険が大事にしていることを一言で表すと、「顧客本位を徹底すること」です。まったく新しさはありませんが、でもこれに尽きると考えています。また、「顧客本位」ほど「言うは易く行うは難し」な言葉は、なかなかないことを日々実感しています。

それを踏まえて、業務オペレーションを設計する上で、どのようなことを大事にしているのかを、少し具体的にご紹介します。

「業務設計」というと、「いかに業務を効率的に回すか?」「業務推進者の負荷をいかに減らすか?」という視点になりがりです。
しかし、自社視点から入ってしまうと、「お客様にどんな体験を届けたいか?」がおざなりになりがちです。
そこで、業務設計を考える際、チームで業務設計に関する議論をする際には、まず「お客様にどうなって欲しいのか?」から入るようにしています。

それを徹底するために、事業立ち上げを進めた際、業務オペレーション設計を始める前に「作りたい顧客体験(お客様への約束)」というタイトルの社内用ドキュメントをまとめました。これは主要なお客様接点ごとに、どんなことを実現していきたいのかの目標水準を定義したものです。
加えて、日々各業務を進める際の指針となる「業務マニュアル」においても、内容の一番最初(「目的」の次の項目)に、「実現したい顧客体験」を必ず定義することにしています。

また「母子保険はぐ」においては、Finatextグループ内の女性メンバーに意見をもらいながら検討・判断をしたり、お客様からのご意見を踏まえて随時見直しを行っています。

「業務マニュアル」のサンプル:

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*追加情報:スマートプラス少額短期保険では「業務マニュアル」はワードやPDFのファイルではなく、Kibelaという社内情報共有(記事作成)ツールで運用しています。実際に業務推進していて気になったことや気付いたことをコメントしたり、業務のアップデートに応じてマニュアルを更新したりしやすくするためです。

■「保険金請求・支払い」の業務オペレーション設計におけるチャレンジ

スマートプラス少額短期保険におけるお客様に直接関わる主な業務としては、「募集・契約引受」「お問い合わせ対応」「保険金の請求・支払い」がありますが、ここからはスマートプラス少額短期保険の特徴がもっとも出ている「保険金請求・支払い」の業務オペレーション設計にフォーカスして、そのチャレンジをご紹介したいと思います。

・保険金支払いとは(保険業界外の方向けの基礎情報)

保険金支払いとは、保険事故があったお客様に対して、保険金を支払うことです。「母子保険はぐ」でいえば、たとえば妊娠中のトラブルで入院をした方に保険金をお支払いします。

一般的に、保険金支払いはお客様にとって好ましくない状況で行われるものである一方、「お客様が『保険に入っていて良かった』と保険の価値を一番感じられる瞬間」とも言われています。

保険金支払いのプロセスは、
1.保険金請求受付:お客様から事故報告をいただき、保険金の支払い請求を受付
2.支払い査定:保険会社にて保険金の支払い可否を判断
3.支払い:保険金の支払い(保険会社からお客様の口座への振込等)
の大きく3段階に分けられます。

・実現したいのは、お客様が「早くスムーズに保険金を受け取れること」

スマートプラス少額短期保険が、この保険金支払いでどのような顧客体験を目指しているのかをご紹介します。

上でご紹介した「作りたい顧客体験(お客様への約束)」においては、以下のように目標水準を定めています。

80%以上の支払い案件を1営業日以内に支払い完了

また「支払いマニュアル」の「実現した顧客体験」においては以下のように定義しています。

ストレスなくスムーズに保険金請求手続きができて、「こんなに早く保険金が受け取れるの!?」と思ってもらいたい。


お読みいただいての通り、我々にとって保険金支払いにおける一番のチャレンジは「いかに早くスムーズに支払うか?」だと考えています。


では、この保険金支払いについて、どれくらいの時間がかかるものか。
一般的な保険会社の保険金請求・支払いでは、お客様が保険金請求の手続きを開始してから保険金の支払いを受けるまで、1か月近くもしくはそれ以上かかることも珍しくありません
一方、「母子保険はぐ」においては、約9割の保険金支払いがお客様の保険金請求手続きから2営業日以内に完了しています。(お客様からの提出情報・書類に不足や不備がなく、支払い可能と判断された場合)

・保険金請求手続きをデジタル化することで、手続き期間を大幅短縮

ここからは、具体的に保険金請求・支払いのプロセスをご紹介したいと思います。

まずは一般的な保険金請求・支払いのプロセスについて、入院の保険金請求を例にご紹介します。

<一般的な入院保険金請求・支払いのプロセス>

1.保険金請求受付
1-1. 入院をし、保険金請求をしたいお客様は、まず保険会社のコールセンターに電話。そこで入院の保険金請求をしたい旨を保険会社側に伝達
1-2. その後、保険会社からお客様のもとに請求書類(記入用)が送られる
1-3. お客様は、その書類に必要情報を記入、必要書類(医師の診断書等)を取り揃え、保険会社に書類を提出
1-4. お客様から保険金請求書類を受け取った保険会社は、その情報をシステム上に登録

2.支払い査定
2-1. その後、保険会社の支払い査定担当者が、お客様から提出された情報を見て、必要に応じて調査を行いながら、支払い可否とその金額を仮決定
2-2. その後、その仮決定内容を決裁者が承認することで、支払い内容が確定

3.支払い
3-1.保険会社の支払い担当者がお客様の銀行口座への振り込み手続き
3-2.お客様の銀行口座に着金


一方で、「母子保険はぐ」の場合は、この手続きの多くをデジタル化することで、手続き期間を大幅短縮しています。

<母子保険はぐの保険金請求・支払いのプロセス>

1.保険金請求受付
1-1. お客様が、契約者マイページ(WEBサイト)上の保険金請求申請フォームで、保険金請求・必要情報を申請(請求に必要な書類も、スマートフォンで撮った写真をアップロード)。その情報が管理システムに即時反映され、同時に社内のSlack(社内コミュニケーションツール)にも通知が入る
*上述の一般的な例の1-1~1-4をオンラン上で一括で行ってしまうようなイメージ

このプロセスにおけるポイントは、次の3点です。
・そもそも、保険金請求申請フォームをオンライン化していること
・お客様にとって、わかりやすい(誤解や迷ったりしにくい)申請フォームのUIになっていること
・お客様が用意しやすい書類で保険金支払いをできるようにしていること

ポイントの3点目について簡単に補足すると、「母子保険はぐ」では、「診断書」ではなく「診療明細書」でも保険金をお支払いできるようにしています(すべてのケースではありません。診断書の提出をお願いする場合もあります)。
一般的に、「診断書」は医師に依頼しないと発行してもらえませんし発行料もかかりますが、「診療明細書」は医療機関を受診すれば原則全員が発行を受けるものですので、お客様にとって書類入手の負担が格段に小さくて済みます。

2.支払い査定
2-1. 支払い査定担当者は、管理システム上に表示される、請求情報や画像データを見て、必要に応じて調査を行いながら、支払い可否とその金額を仮決定し、管理システム上にその情報を登録
2-2. その後、その仮決定内容を決裁者が承認することで、支払い内容が確定

原則、保険金請求を受け付けた当日か遅くとも翌日までに、ここまでいきます(日数は営業日ベースの計算)。

このプロセスにおけるポイントは、次の2点です。
・同じ管理システム上でワンストップで業務処理が完結するようになっていること
・システムの入力補助により、査定内容や支払い金額のミスを防止しつつ、担当者は極力少ない操作で済むようにしていること

3.支払い(ここは、一般的なプロセスと同様)
3-1.保険会社の支払い担当者がお客様の銀行口座への振り込み手続き
3-2.お客様の銀行口座に着金

振り込み手続きをしてお客様の銀行口座に着金するまでに、少し時間がかかってしまっているので、これからもっと期間短縮をしていきたいと考えています。

以上でご説明した、保険金請求・支払いのプロセスを整理すると、この図のようになります。

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・お客様からも好反応

お客様には、オンライン上からご自身で必要な情報と書類を申請いただく必要がありますので、発売前は「スムーズに申請いただけるだろうか?」と心配しておりました。
しかし、発売から半年経った2021年3月現在で「保険金請求手続き方法がわからない」といったお問合せはいただいたことはなく、特に大きな問題はなくスムーズに保険金請求申請を行っていただけているように思います。

また、実際に保険金をお支払いしたお客様からも、この支払い対応に対して、以下のようなお褒めのお言葉もいただいています。

素早い対応で、この保険に入って本当によかったと思います。ありがとうございます。

■今後の展望

次世代型保険業務オペレーション構築の本質は、先端テクノロジーの活用そのものではなく、顧客に向き合いながらテクノロジーを上手に活用していくことにあります。

「Insurtech」「デジタルオペレーション」「業務効率化・時間短縮」という言葉から、AI技術やOCR技術等に関する内容を期待された方は、本記事の内容の地味さに少しがっかりしたかもしれません。
もちろんスマートプラス少額短期保険でも、今後これらの技術を取り入れることも検討していきたいと思いますが、まだその段階には至っていないと考えています。
それは、先端でハイコストな技術を入れなくても、業務の組み立てを変えたり進め方を工夫したりするだけで顧客体験は格段によくできるので、まずはそこを愚直に回していくことの方が先決だと考えているからです。

今後、業務オペレーションを更に改善したり、先端技術を導入したりしていくための土台として、Finatextが開発したSaaS型の保険基幹システム「Inspire」が重要な役割を果たします。「Inspire」は保険業務に必要な機能をワンストップで提供するクラウドサービスで、高度なシステム設計により柔軟性・拡張性の高さを実現しています。新奇な保険商品や商品改変にも簡単に対応でき、外部のデータベースやシステムと連携したり新たな機能を追加したりすることも可能な仕組みです。

このInspire(システム)を開発するエンジニアリングチームと、業務オペレーションを設計・推進するチームが一体なって連携していくことで、顧客体験の磨き込みを高速で進めて行きます。

■お知らせ

Finatextグループの保険チームはまだまだ小さな組織ですので、今なら守備範囲広く、ダイナミックな事業成長が経験できると思います。お客様との対話を通して保険の本質を追求した商品・オペレーションづくりをしたい方、ぜひ一度お話ししましょう。まずはカジュアル面談からでもご連絡をお待ちしております!

またFinatext、スマートプラス少額短期保険との協業に関心のある方からのご連絡もお待ちしております

■ご連絡先
Finatextホールディングス 採用ページ
スマートプラス少額短期保険 問い合わせメールアドレス
河端Twitter @KazuKawabata

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