人は不満を探そうとする生き物である

もっとお金があればなぁ
もっと時間が欲しいなぁ
もっとモテたいなぁ
もっと仕事が上手になればなぁ

生きていると様々な不満を抱くことになる。完全に満足して眠りにつくことはそう少ないだろう。誰しももっと楽をしたいし、誰しももっと満たされたい。

頑張れば頑張るほど、結果は出るが、一方でより上位の目的が見つかるようになる。人は不満を探そうとする生き物だ。今日はそんな話をしよう。

不満だらけの人生

人生は不満だらけだ。この不満は、一つ解消されてもまた別の不満が見つかる仕組みになっているようで、この人生は不満から逃れた事がない。

エンジニア業界に長くいる私の例だと、まずは他の人と同じようにエンジニアとして働いて給料をもらう、という当たり前の生活がゴールだった。稼げてない、という不満をまずは解消した。

それが叶うと、今度はもっと給料が欲しくなったので、会社に交渉したり転職したりした。給料が少ない、という不満を解消した。

給料に満足すると、スキル的にも上流工程で通用する人材になりたかったので、反復練習に励んだ。スキルに見合った仕事ができていない、という不満を解消した。

ある程度スキルが身につき仕事が分かってくると、人を育てたい願望が芽生え、人材教育に時間をかけて取り組むようになった。スキルが未熟な人の役に立てていない、という不満を解消した。

人材教育を効率よく行えなかったので、次に会社組織の役職として深く関わることにした。組織とはどうあるべきか、様々な取り組みを提案し改善に務めた。組織的な教育が出来ていない、という不満を解消した。

いや、これは解消しきれなかったのだけれど、そういった立場に身を置くことで、根本的な不満解消に取り組むという行動を起こせることになった、という意味で一定の不満解消になった。

そして、会社組織というものがなかなか変化を受け入れ難い性質があると理解してからは、組織的な動きは一旦置いといて、個人的な活動で社内の新人たちに歩み寄ることにした。毎週のように勉強会を開催し、社内SNSで誰よりも多く技術記事を投稿し続けた。

教育を受けるべき人材が、満足できる教育の場が無いことでモチベーションが下がっていることに手を打てていない、という不満を個人技で解消した。

このように、ひとつ不満を解消すると、次のステージで新たな不満が見つかるのが人生だ。

人は不満を探し続ける生き物

プライベートでも同じ事が言える。例えば恋愛。

彼女がいないという不満があったとする。そして、めでたく彼女が出来たなら関係が上手くいかないとか、食事の趣味が合わないとか、もっとプライベートな時間がほしい、束縛しないで欲しい、といった新しい不満が出てくる。

独身で寂しい、という不満があったとして、いざ結婚してみれば、旦那が家事をしないとか、妻の小言が煩いといった新しい不満が見つかる。

面白いのは、そういった不満をひとつひとつ解消し、ほとんど大きな不満が無くなったとしても、現状に満足するということには至らない。

例えば、先の例で家事をしない旦那さんと、小言が煩い奥様が双方に改善したとする。旦那さんはこまめに家事に行い、奥様はいつも和やかで丁寧な口調を心がけるようになった。

それでも不満を探そうとする。旦那さんのテーブルの拭き方が雑だとか、洗濯物の畳み方が違うとか。奥さんにもっと建設的な意見を言って欲しいとか、たまには怒って欲しいとか。

そうやって人は現状に決して満足することのない生き物なのだ。

ちなみにこれは実話。

不満との付き合い方

人の不満は消える事がない。非常に問題点を探す能力に優れており、良くないな、と気づき不満を抱くことで、その環境を改善するために自分自身にストレスを発生させるのだ。

これは、人間の種としての本能に由来している。人類はその歴史の中で、同種にも関わらず、多様で複雑な遺伝子配列を掛け合わせ続け進化してきた。環境に適用するためである。

地球上で最も多様な環境に適用できる生物種に至った我々人類は、この不満を発見し、改善していくという行いを古来から続けている。

住居を快適にし、衣服を改良し、食物の調理方法を工夫し、娯楽や芸術、学問を生み出し、産業を進化させ、テクノロジーを発展させていった。

どれも、不満が先にあり、それを解消するための行いだ。

「何かをしたい」と願うのは、今それが出来ていないという不満があるからだ。

かと言って、不満が一生消えないから諦めようという話でもなく、人は不満の中にも納得ができると言う知性を持っている。

1. 不満だし納得がいかない
と言う状況と、
2. 不満だが納得はいく

という2つの状況がある。「2. 不満だが納得はいく」の精神状態におくための努力や、組織等のシステムが生活の上では重要だ。

意識の工夫で不満を無効化する

努力の観点では、行動と意識の工夫で十分だ。

例えば先の家事の例では、家事のなかで細かいミスがあったとしても、それはミスを起こしかねない家具の配置であったり、作業の順序性であったりする可能性が高い。

完璧な人間などいないから、環境要因によって作業の精度が変わってしまうことはよくあるのだ。「ミスをしやすい」という不満に対して、「よりミスを防ぐような環境構築を追求する」というのが、不満解消の適切な手である。

この行いをする上での意識は、「解消手段をとっている」と納得することだ。

不満はある、しかし現在その不満解消のための措置を行なっている最中であると意識することで、それ以上の不満を抱える意味を無効化することが重要なポイントだ。

システムで不満を無効化する

組織等のシステムで不満を解消することが上手いのは、メガネ屋さんのオンデーズだ。

オンデーズはこの「社員の不満はなくならない」という理解のもと、不満を解消するのではなく、納得させるための仕組みとして、人事考課精度に「選挙」を導入した。

昇進するためには、選挙で得票数を規定以上取らなければならない。さらに、ポジションごとの給与は全社員に公開されている。

選挙で選ばれたのち、その給与をもらうポジションになるという明確でわかりやすい制度だ。当然このシステムに納得がいかない、と言うことであれば会社を去るも自由、そのままの給与に甘んじるも自由だという。

会社として全員がオープンなこの制度の上で働くというルールであり、納得出来る人材のみ残る。そういうシステムで組織を運営されていると、驚くほど問題が少ないそうだ。

不満はあるが、納得している社員たちが働くので、曖昧な動機で働くこともなく、上を目指す者は目指し、現状に納得しているものは納得して働く。

これは一例だが、社会にはルールがある。ルールがないなら納得のために作っておき、ルールを超える問題があった場合は納得するための改善をする。

こうして上手く不満と向き合うことで、より生きやすい精神状態に身を置くことができる。

まとめ

今まさに不満を抱いているのならば、解消のために行動を起こそう。でも、その行動の先には新しい不満が待っているはずだ。

終わりのない不満との付き合いに、システムや意識の面で納得感を得られるよう周囲を良く見渡そう。

不満だが、納得している。精神的に健康であるためにも、そうあるための必要な工夫をしていきたいものである。

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