タイワンはシンガポールになるのか

シンガポール。1965年シンガポール共和国誕生。歴史をたどれば、1400年頃のマラッカ王国が知られている。それから、ポルトガル・イギリス・マレーシアと宗主国が変わり、現在に至る。中国系住民が7割を超える。

中国拡大。「自由で開かれたアジア・太平洋条約機構」なるものを妄想したが、どうやら、妄想では止まらない。

タイワンを「自由で開かれた」諸国がどれほど本腰で護ろうとするのか。それを明示するために「レッドライン」を設けようとする動きが活発化している。

半導体不足に端を発した「世界はタイワンを重視している」現状を、中国が利用しないわけがない。「台湾は中国固有の領土」の主張と、それへの賛同を得るために「ワクチン外交」を発展途上国に繰り広げる。同時に経済弱小国の強権政治をバックアップする特務部隊の暗躍。

トランプ政権時代は「プロレス的外交」で "喧嘩もシナリオの内" だったが、最近の米中外交直接会談は "ホンモノの殴り合い" と見ていい。双方、一歩も引かず、第二ラウンドへ闘志をむき出しにしていた。

中国は米国とは真剣勝負で望むが、周辺諸国や経済弱小国向けには「人権より経済で『説得・納得』」路線で懐柔を図るだろう。「欧米一辺倒では、かれらに利用されるだけ」というスタンスで説得するだろう。

直接対決でレッドラインが設けられ "たら"、中国はどう行動するか。その線を越えるだけのメリットはあるのか、そう考えるのだろう。国境で直接敵と接しない状況を創りレッドラインが明確でない状態にして、緩衝国・衛星国が戦場になるように仕向ける戦略だ。

「欧米に侵略され、隣国に蹂躙された歴史を、絶対に繰り返さない」「責めこそが最大の防御」。その強い思いの中で、タイワンをシンガポール化する "ウルトラZ" が出ないとも限らない。中国の魅力ある市場を守るための攻めの戦略だ。台湾をシンガポール化することで中国市場が豊かになり、豊かであればあるほど、「戦わずして勝利する」ことができるからだ。

一方、欧米は二極化している。右傾化と左傾化の中で中道が細っていく。右も左も究極は全体主義。中国の統治と基本は変わらない。ポピュリズムの中で「金持ちで "キモイ変質者" の中道主義者」と偽の情報流して敵に廻す。その混乱は、中国の暗躍を助けることになる。

「自由で開かれた」政治を望む中道諸国は、「レッドライン」を設けることしか国内をまとめられなくなる。それは硬い政治へ変貌し、いつしか全体主義へ傾倒していく。やがて、中道諸国同士は「裏切者」を探すようになり、その結束は崩壊していく。

中国は欧米と真剣勝負を重ねれば重ねるだけ、勝利に近づく。そう、信じている。崩壊しつつあると見える「自由で開かれた中道諸国」。中国にしてみれば、ほんの少しのひび割れに集中して攻撃を仕掛けるだけで済む。

さて、これらの妄想だが、全く現実離れしているとは思えない。日本はどうあるべきか。米中共に一目置く経済大国を維持し、キャスティングボートのような存在を目指すのか。欧米一辺倒を踏襲するのか。はたまた、緩衝国への衰退を免れないのか。

後、10年もすれば、これが妄想で終わるのか、そうでないのかが判る。否、5年後かもしれない。数年のうちに "離れ技" で世界を安定に導かなければ、「自由で開かれた中道諸国」の未来はない。日本の未来もない。

超越した新しい外交。どんな超越か。その離れ技を密か編み出そうとしているのは、タイワンなのかもしれない。

#日経COMEMO #NIKKEI

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