妄想:環境大革命の足音が聞こえる

世界の都市で若者のデモンストレーションが頻発する。「大人はずるい! きれいごとばかりで一向に前に進まない。我々は、我々の未来のために実行に移す!」と、「緑色のバイブル本」を天に突き上げる。

環境変動による食料危機は各国の物価を引き上げ、低賃金労働者は疲弊し、富裕者は肥え太っていった。弱小国は自国の食糧安全保障のために、食料生産物の輸出を絞りながら、貧困にあえぐ食料生産者からただ同然で集めた食料を高価な "暗黒食料" としてグローバルな闇市場へ横流しし、権力者の懐を潤した。

世界の強国は「割れる "民主主義" 先進国」と「専制主義国」の二派にわかれた。専制主義国はすばやい政治行動と抑制で、そこそこに富の偏在をなくしていったが、民主主義先進国は富裕者の圧力で政治が二転三転し、国内の不満は頂点に達していた。

環境改善も民主主義先進国は専制主義国に比べ遅れが目立つようになる中、”強制的なバランス政治” を書き起こした緑色に装丁した文庫本が飛ぶように売れ、それをバイブルとする若者が急激に増えた。

「緑色のバイブル本」を専制主義国は無料で弱小国の極貧層へ配布し始める。協力するボランティアの読み聞かせにより、極貧層から貧困層、そして中間層・知識人たちに広がり、その手法をあがめるようになる。

弱小国と民主主義先進国から、うねるような熱気が沸き起こる。緑色の本をかざした群れがどっと街にあふれだす。

「緑色のバイブル本」に触発された科学者や産業界の活動により、「科学的な完全管理された疑似食料」の研究開発が進んだ。その成果を専制主義国が弱小国の極貧層へ展開していった。

専制主義国への羨望のまなざし。抑制のきかない民主主義先進国では、若者が民主主義を活用した専制主義国への体制変革を望むようになった。

人々は「緑色」の本から着想し「環境大革命」と銘打って、日夜、街に繰り出すようになった。

群れとなった人間は、暴徒と化す。古今東西、それは変わらない。必然と言っていい。民主主義先進国の街は暴徒に覆われ、治安維持は最大限に拡大された。富裕者と権力者は結託し、国民の生命と財産ではなく、自身の連なる限られた人々の生命と財産を守ろうと、国家権力と暴力装置を全力で駆動させるようになった。

「環境大革命!」の大合唱は続く。自治体の権力者や地域の富裕者は、街の通りに引きずり出され、円錐の目立つ帽子をかぶせられ、両手を後ろに縛られるか捩じ上げられ、胸に大きな板を吊り下げられ、板には「人民の敵!」と大書されていた。

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ぼくの、小学生時代にテレビ報道でたびたび見た映像をすこし混じりこませました。

良いことであるはずの環境改善。ですが、どこかでずれた解釈が、どこかで利害関係と結びつき、その時の不満がエネルギーとなれば・・・。

ぼくの妄想です。妄想でしかない。妄想であってほしい。妄想もしてはいけない。こんなことが "・・・環境・・・" から始まるわけがない。そう、思いたいのです。

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