タイのデベロッパーが日本企業にラブコールを送る理由

日本のマンションデベロッパーが次々とタイに進出しているが、この動きはまだまだ続くだろう。“日本の人口が減少するなかアジア需要を取り込む”という日本側の都合もあるのだが、それ以上にタイのデベロッパーにとってのニーズが強い。

私はここ数年タイの建設業界向けの経営コンサルティングに携わっているが、タイの中堅規模以上のマンションデベロッパーからは必ずと言っていい程、日系マンションデベロッパーとのパートナー探しを依頼される。タイは外資企業に対する出資規制があり、外資の出資比率が50%を超える事が出来ない。したがって、日本のデベロッパーはタイ企業とジョイントベンチャーを組むことになるのだが、前述したように日本のデベロッパーはタイ企業から大人気である。

理由は幾つかあるのだが、まず前提としてはタイの不動産市場が差別化フェーズに入ってきたことが大きい。タイは5~6年位前は仕入れさえできれば売れる状態で、建設している間にどんどん値上がりする状況だったので特に外部と連携する必要がなかった。しかし、少しずつ需給バランスが均衡していき、3~4年位前から売れ行きのバラツキが明確に出てくるようになってきた。差別化する上で日本企業とのJVはタイのデベロッパーにとって3つの点で有効である。

①日本のマンションデベロッパーからのナレッジトランスファー  

・成長期~成熟期の中で数十年も差別化競争を生き抜いてきた日本企業のナレッジ吸収
・日本企業の高い開発および建設ノウハウ

②日本人顧客層へのアクセス

・マンション供給量増加とマンション価格高騰に追いつかないタイ人中間層需要の補填策
・増加し続ける日本人駐在員および投資家向けへのブランデング

③日本のメガバンクによる低金利でのプロジェクト融資

・タイの4大銀行の貸出金利は6%強に対し、日本のメガバンクの超低金利による資金調達

上記のように、タイ企業には日本企業と組む明確な理由がある。したがって、タイのマンションデベロッパーにとって、日本企業以外のJV先があってもいいようなものだが、結果的に他国企業とのJVはほとんど聞いたことがない。

タイのマンションデベロッパーによるラブコールにより、日本のデベロッパーのタイ進出はまだまだ続きそうである。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO29615280Z10C18A4TJ1000/

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