2_話し方入門

『話し方入門』~良い話し手になるには

カーネギーの代表作の一つ。巻末の訳者あとがきにもあるように、カーネギーは元々話し方研究の専門家として立身出世の第一歩を踏み始めたことを考えると、本書はカーネギーの原点を知るのに格好の書であろう。

『話し方入門』では、パブリック・スピーキングを成功させる為に必要な事項を、単なるテクニック論的な話に終始せず、事前の準備や心構えの重要性や、記憶力増進の為の方法、また洗練された言葉遣いを行う為の学習方法等、パブリック・スピーキングが様々な角度からカバーされている。パブリック・スピーキングを殆ど行ったことがない人は、どの章も新鮮かつ重要である為最初のページから通読することをお勧めするが、ある程度の経験があって更に自分の能力に磨きをかけたいという人であれば、自分の弱点となる章を拾い読みしていくか、知っていることは参考程度に読み飛ばして行くのが効率的かと思う。

印象に残った点が2点。1つ目は、「自信は周到な準備から」という点である。自らの経験上、プレゼンを行う際準備時間が十分にとれなかったことから、自分が調べたことの90%以上を出してプレゼンすると間違いなく失敗する。これは、話すネタがない為プレゼン資料を読むような形となってしまい内容に奥深さが出ず、またQ&Aセッションでも殆ど質問に答えられないという事態に陥ってしまうからである。一方、十分な準備時間を取り、調べた内容の20%以下の内容でプレゼンすると、説明がスラスラ出てくるだけでなく、Q&Aセッションでも満足の行く回答を行うことができる。かけた時間だけプレゼンが良いものになるのだ。このことが本書でも一章を割かれて説明されており、改めてプレゼン準備(周辺情報の整理)の重要性を認識した。

2つ目は、言葉遣いを改善する為の方法である。カーネギーはその為の方法に、聖書等の古典で勉強すること、わからない言葉が出てきたときは必ず辞書で調べ、類語等の研究も行うことを説いている。この点は、自分でわかってはいつつも出来ていない点であり、最も改善が必要な点である。ただ、このような古典は読むことだけでも時間がかかり、これに辞書をじっくり見ていると時間がいくらあっても足りなくなってしまう。しかし、そもそもの問題点はその程度の時間ですらかけられなくなった自分の忍耐力の低下にあるのではと思う。ついつい新聞やWebの情報に流されてしまっているが、これからはそのような時間を意識的に減らし、昔から語り継がれてきた古典を読むことでスピーチの言葉を洗練されたものにしてゆきたい。

以下、備忘用。

・スピーチの準備とは…あなたの思い、あなたの考え、あなたの新年、あなたの望みを、組み立てることなのです(P34)

・さまざまな考えや事例を(メモに)書きとめたら、それで一人遊びをしてください(P72)⇒話す内容は日頃から情報を集め、メモに書き留めておく

・要点を絵にして覚えたのです(P90)

・この記憶の特性(反復作業を割り振ったほうが、続けて一気に行うより少ない回数で物事が覚えられること)は、次の二つの要因によって説明できます。第一は、反復作業の合間に、意識下で連想の網の目を強化する仕事が行われていること。…第二は、間隔を開けると、ぶっ通しの作業による緊張で、脳を疲れさせるようなことがない点です(P96)

・自分が身だしなみよく、非の打ちどころのない装いをしていることを自覚し意識していると、説明はしにくいが、確かにはっきりとした効果(自信が湧き、自分に対する信頼が増し、自尊心が高まる)がある(P161)

・話し手は聴衆の気を逸らすような行動を慎むべき(第7章)

・(聞き手の)好奇心をかきたてる(P196)

・「彼ら(聞き手)が関心を持っているのは、主に自分のことばかりです」(P275)

・「一日に一語、新しい言葉を」(P311)

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