ホテルからの風景

世界一周の旅~インドネシア④(ジョグジャカルタ、イスラムとの出会い)

ヒンズー教一色のバリでは感じることはできなかったが、インドネシアはイスラム教の国だ。ジョグジャカルタはそのことを思い出させてくれた。

地獄のバス移動の後、宿のベッドに倒れ込むように寝たが、昼の12時、「アッラー!」の大音量放送で目が覚める。何事かと窓から外を見ると、モスクの塔の上に付いたスピーカーから絶え間なくアッラーアクバルの声が出ている。そうか、これが礼拝を呼びかけるイスラム教特有のアザーンというものか。イスラム圏に来たのだなあと実感する。

このバスの移動中ろくなものを食べていなかったので、早速外に出て食べる場所を探す。特に好みはなかったが、何か安心できるファーストフードが食べたいと思い道を歩くが、まだ景色を味わう余裕はない。歩いて10分ぐらいで、エアコンの効いたショッピングセンターを発見し、そこでKFCを発見する。どんなものかと注文していたが、Puddingが就いている以外はごく普通のチキンであった。その後、KFCはインドネシアで頻繁に見かけるようになる。イスラム教国なので、鶏肉がとても重要なのだろう。値段は日本の半額ぐらいだった気がするが、あまり覚えてはいない。

食後ショッピングセンターを散策すると、KFCと同じフロアにゲームセンターを発見するが、ほとんどが日本のゲーム機であった。驚いたのが、日本語の説明がそのままゲーム機に付けられており、その上にお情け程度のインドネシア語での説明が書いていた。ゲーム業界で日本はこんなに影響力があるのかとちょっと嬉しくなる。

下の階では、何か臭い。とにかく臭い。一体何の匂いだろうと思って歩を進めてみると、すぐにその原因を突き止めることができた。こいつだ。

いくらなんでも、ここまで積まなくてもいいだろうと思う。ドリアンの臭いを嗅ぐのが初めてだったので、テレビでお笑い芸人がドリアンを前にして悶絶する理由が分かった。ベトナム人の友人はうまいといっていたが、とても食する気にはならない。

少し回復したところで外に出ようとしたが、昼14時の日差しが最高潮の時に出ていく気にはなれず、ショッピングセンター内の人間観察を開始。若者集団が多い。家族連れやカップルも多くいる。スカーフをしっかり被っている女性が男性の腕に絡みついていかにもカップルっぽいことをしているのを見ると、イスラム教徒でも色々な人がいるんだなと月並みな感想が浮かぶ。

この旅には様々な本を持ち歩いていたが、その中にはコーラン(岩波文庫)も入っていた。バリにいたときから読んでいたが、あまり「心地よい」本ではなかった。自分は、読書は本を読んでいるときの外部環境がその本の読後感に大きく影響すると思っており、バックパック旅行の中で自分に合わない本を読むと、厳しい外部環境のせいでそのマイナスの感情が増幅される可能性があることはわかってはいたものの、その点を差し引いても、不信仰に対する非難で満ち溢れたコーランを読むのは苦痛であった。イスラム教が始まった7世紀頃、異教徒が多数派を占める中でイスラム教を広めていく為には、このような攻撃的・排他的な教えを説くことで信者を必死に繋ぎ止めようとせざるをえなかったのだろうか邪推してしまう。逆に、今この本を読んだときに自分が何を感じるかは非常に興味深い。

そして…日本人を含む外人観光客がほとんどいない。これまではどの旅行先でも日本人、少なくとも中国人がいないところはなかったが、ここは本当に誰にも会わない。ちらほらと同じ安宿街に西洋人のバックパッカーがいるだけだ。いよいよ奥地まで来たなーとワクワクしてくる。

ショッピングセンターでは、ジュンというジョグジャの震災復興ボランティアを行っている若者とも知り合いになった。彼は、地元住民と政府をつなぐ役割をしているとのことにて、よく被害の甚大な海岸地域にも出向いているとのことである。自分もいくことができるかと聞いてみると、外国人が、しかも単独でいくのは難しいとのこと。ここまで来たのに、残念である。ただ、生半可な気持ちで被災地の中心部に入るのは得策ではないかもしれないとも自分に言い聞かせる。

日が幾分か陰ってから、地図を見ずにぶらぶらと町を散策。宿やショッピングセンターは中心駅の近くにあったが、少しこのエリアから外れるとすぐに貧民街の様な住宅街が見えてくる。貧民街は特に川沿いのエリアに集中している。しかし、会う人々は皆笑顔で話しかけて来てくれて、帰りにホテルに帰るときに道に迷ったときは、たくさんの人が道を教えてくれた。バリのタクシーの客引きの嵐とは大違いだ。

ネットカフェでメールをチェックし、ついでにご飯も食べる。何の期待もしないで入った食堂兼ネットカフェだが、マンゴージュースがこれまで飲んだもののどれよりもおいしかった。これで100円もしないとは。一瞬、氷は清潔な自らできているのかという疑問が湧いたが、あまり深く考えないことにした。

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