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で、性的同意年齢は結局どうなったか。

まずこの議論の前提として次のことを明確にさせておきます。

・基本的にマスキュリズムは性的同意年齢引き上げに反対する立場ではない
・私が懸念しているのはあくまでも「創作物への影響」である(マスキュリストの中にも創作物への規制を同時に行うべきという立場の人は少なくない)
・成人と同意年齢に達しない未成年との性的関係は地位関係利用罪を含む他法規でも罰することが可能なため議論しない。ここで議論の焦点になっているのは「未成年同士の性的関係」である

詳しくは以下の記事を参照してください。

さて、「基本的にマスキュリズムは性的同意年齢引き上げに反対する立場ではない」と述べましたが、これはこの改正論議にマスキュリズム側から提言がなされていることが関係します。もしこれが提出されていなければ、やはりフェミニズム主導の、「男が常に加害者、女が常に被害者」の理屈で改正論議が進められていてもおかしくなかったのです。その意味で、その内容はともかくとしてもこの提言は日本のマスキュリズム史上最大の成果、大きなマイルストーンといえるものです。また実際に弱者男性の当事者の声として、性的同意年齢引き上げを求めるものも少なくありません。

たとえば、この記事でphj氏が以下のようなコメントをしています。

たとえば中学生男子は未成年なのに女性専用車両に乗れないです。「弱者保護」という観点からすれば「中学生男子」は保護すべき弱者側なのに小学生と扱いが異なりますし、女子とも異なります。
性的同意年齢を引き上げるなら、なお「被保護者」ですよね。
高校生ぐらいの男女も扱いが異なりますよね。男子が夜遊びしていると素行不良ですが、女子が夜遊びしていると保護対象です。
渋谷で「居場所のない女子高生の保護活動」を行っている方がおられますが、男子に対してそういう「保護」活動をしている人を私は知りません。 性行為に関しても、これは未確認の部分がありますが、17歳ぐらいの同年齢カップルでも男子だけ淫行条例に抵触し、女子はおとがめなし(というか被害者扱い)という事例があるようです。
男性は性的同意年齢を超えると「強者」扱いなんですよね。

いよいよバトンが国会に渡される

4月12日の法務省の検討会で、取りまとめ報告書案が提出されました。これが前回と次回の会議で修正が加えられたうえで、おそらくは衆議院の法務委員会に諮られると思われます。

取りまとめ報告書案のうち、性的同意年齢引き上げについて述べられている部分は以下の通りです。

(4) いわゆる性交同意年齢の在り方
暴行・脅迫や被害者の同意の有無を問わず強制性交等罪が成立する年齢を引き上げるべきか

(ア)改正の要否・当否に関する議論
刑法第176条・第177条は,「13歳以上の者」に対するわいせつな行為又は性交等については,「暴行又は脅迫」を用いたことを強制わいせつ罪又は強制性交等罪が成立する要件としている一方,13歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等については,「暴行又は脅迫」を用いなくても強制わいせつ罪又は強制性交等罪が成立することとされている(以下,この被害者の年齢を「性交同意年齢」という。)。
性交同意年齢を引き上げることについては,
① 性交同意年齢の引上げを性的自由の制限と捉えるべきではなく,性的自由に対する責任を果たせる年代かという観点から,保護すべき年齢を考えるべきであって,子供の発達の程度や社会経験の乏しさからすると,少なくとも義務教育を受けている者は保護されるべきであるから,16歳まで引き上げるべきである
② 子供の被害は,子供の理解力の未発達や脆弱性,大人より狭い世界で生きていることを利用されるため,そのプロセスが第三者から見ると分かりにくいことも少なくないことから,暴行・脅迫や抗拒不能の要件とは別に,子供を被害から守るという意味で性交同意年齢を引き上げるべきである
といった意見が述べられた一方で,
③ 法律上,18歳で結婚できることとされ,その前から交際して性的行為をする場合など処罰すべきでない場合もある。脆弱な未成年者の保護は個別の事情を踏まえて行うべきであり,性的行為の相手方を一律に処罰することとなる性交同意年齢は13歳のままでよい
④ 刑事責任が問われ得るのに性的自己決定については全く能力がないとされることは整合しないので,性交同意年齢を刑事責任年齢である14歳より上に引き上げることは相当ではない
⑤ 調査によれば,青少年がキスや性交を経験する年齢は,全般的には若年化傾向にあり,児童の性的保護を直ちに強化すべき立法事実があるかを検討すべきである
といった意見が述べられた。
なお,強制性交等と強制わいせつとで性交同意年齢を異なるものとすべきかについて,
⑥ 性交等とわいせつ行為とでは,その行為に対して同意をする能力は異なると思われ,強制性交等と強制わいせつとで年齢を分けて考えるべきであって,強制性交等については16歳未満,強制わいせつについては13歳未満とし,13歳から16歳未満の者に対するわいせつ行為は,加害者との年齢差がある場合にのみ処罰されることとすべきである
⑦ キスと性交とを比べると,侵害性に差があるように思われるが,わいせつ行為はかなり幅がある概念で,性交にかなり接近した行為も含むものであり,性交等とわいせつ行為は連続的概念であるから,年齢を分けることには違和感があるといった意見が述べられた。
(イ)同年代の者同士の性的行為に関する議論
仮に,性交同意年齢を例えば16歳まで引き上げた場合には,刑事責任能力(刑法第41条)を有する14歳以上の者については犯罪が成立するため,中学生同士が対等な恋愛関係の中でキスや性交をすると双方ともが犯罪として処罰され得ることになるが,そのような場合までも犯罪とすべきでないことには,異論はなかった。
そこで,同年代の者同士の性的行為を処罰対象から除くため,
① 行為者が一定の年齢以上である場合や,行為者と相手方との間に一定の年齢差がある場合のみ処罰することとすべきである
② 行為者が被害者に対して信頼的地位に就いている場合のみ処罰することとすべきである
③ 性交同意年齢未満の者については免責することとすべきである
といった意見が述べられた。これに対しては,
④ 一定の年齢差を要件とすることについては,成長には個人差があり,年齢が高い者が必ずしも優位にあるわけではないことにも留意すべきである
⑤ 性交同意年齢は,一定の年齢未満の者には性的行為を行うか否かの判断能力がないことから設けられているものと考えると,その年齢未満の者を相手方とする行為は,必ず違法となると考えられるところ,なぜ,行為者の年齢や属性によって犯罪の成立が否定されたり肯定されたりするのかという理論的根拠を整理する必要がある
といった意見が述べられ,⑤の意見に関連して,
⑥ 14歳や15歳の者については,性的行為について適切に理解して同意する能力が一応あるが,一定年齢以上の者から性的行為を働きかけられた場合,一種の優越的な地位の利用状態が生じ,自由な意思決定を歪められると考えることにより,一定年齢以上の者が行う場合や年齢差がある場合にのみ処罰される理由を説明することは可能と思われる
⑦ 性犯罪の保護法益を性的統合性・性的尊厳と考えた場合,同年代の者同士の行為であれば人格的統合性の形成を阻害しないと評価することができるといった意見が述べられた。
(ウ)中間年齢層の者を被害者とする罰則に関する議論
性交同意年齢を引き上げるか否かにかかわらず,その年齢には達しているものの,意思決定や判断の能力がなお脆弱といえる若年の者(中間年齢層の者)に対する性的行為について,その特性に応じた対処の必要があることについては,認識が共有された。
その上で,この中間年齢層の者を被害者とする罰則の在り方については,
① 年齢要件のみをもって一律に犯罪を成立させることについては,その当否,適切な年齢の設定,当罰性の評価や法定刑を強制性交等罪と同等とすべきかについて慎重な検討が必要である
② 性交同意年齢を13歳のままとした上で,13歳以上16歳又は18歳未満の者については,地位・関係性の要件や年齢差に基づく脆弱性利用の要件を付すことが考えられる
③ 中間年齢層の者を被害者とする地位・関係性の利用類型を定める場合には,性的行為に及ぶか否かの判断能力が全くないわけではないため,およそ自己の意思に基づかないものと同様とは言い難く,行為態様の規定の仕方にもよるものの,相対的に軽い法定刑の罪とすることが考えられる
④ 一定の年齢未満の者との性的行為については,形式的に一律に処罰する絶対的保護と,当事者間の関係性や行為態様などを評価対象とした上で,言わば性的搾取であるか否かを実質的に判断した上で処罰する相対的保護の組合せが考えられる。若年者の未成熟につけ込む行為を処罰するところに主眼があるのであれば,相対的保護の考え方と整合するし,どのような年齢差や年齢要件を設けるかについて理論的な根拠を示すことも困難であるから,絶対的保護,すなわち,性交同意年齢の引上げは若干程度とし,むしろ,誘惑的・欺罔的な手段を用いるなどした行為を処罰する相対的保護のための規定を設けることが適当である
といった意見が述べられた。
(エ)その他「性交同意年齢」という言葉が用いられていることについて,
① 性交だけではなくわいせつ行為についても用いられる概念であるし,「性交同意年齢」という言葉が用いられると,若年者の同意能力や若年者の性的自由が議論の中心となり,若年者を搾取からどう保護するかという観点が希薄になるため,適当ではなく,「性的保護年齢」という言葉が用いられるべきである
といった意見が述べられた。また,関連する課題として,
② 子供の性的な問題行動の背景には,性教育を受けていないことのほか,暴行の被害に遭っていることが原因である場合もあるから,そのような子供に対する教育や支援が必要である
といった意見が述べられた。
(オ)小括
以上の議論を踏まえると,今後の検討に当たっては,性交同意年齢を引き上げる場合には,刑事責任年齢との関係を含め,犯罪とすべきでない行為が処罰対象に含まれることのないよう,具体的方策とともに更に検討がなされるべきである。また,性交同意年齢には達しているものの,意思決定や判断の能力がなお脆弱といえる若年の者については,その特性に応じた対処が必要であることに鑑み,地位・関係性を利用した犯罪類型と併せて,更に検討がなされるべきである。

旭川の事件はどう影響するか?

この案を見る限りでは、少なくとも未成年同士の性的関係そのものを罰すべきでないという方向になっているようですが、予断は許されないでしょう。

前回の検討会の後、旭川市で女子中学生が集団性的暴行を受けたことで自殺する事件がありました。海外ではこうした事件をきっかけとして性的同意年齢の引き上げや性表現規制が強行された例はかなりあるので、次回の検討会でどうなるのか全く予想がつきません。

インセル・保守派の反応にも要注意

またもう一つ言及しておかなければならないのは、若者の性的行為についてインセルやジェンダー保守派のほうがより厳罰化を求める可能性があるということです。

特に衆議院の法務委員長(ここで名前はあえて出さない)は、Wikipediaを見る限りでは「性暴力(もちろん男が常に加害者・女が常に被害者という前提で)はジェンダーフリー教育とゲームの影響によって起こる」などという見当違いも甚だしい発言もしたほどのガチガチのジェンダー保守派だそうです。

彼らは皆婚社会を自由恋愛社会へのアンチテーゼとしていることも重要なポイントです。それは結婚までの純潔貞節を若者に守らせることが皆婚社会に必要な条件であることを暗に示しています。極端な主張では性的魅力の行使さえ「性暴力・性犯罪とみなすべき」であるとされます。

また実際に「女性の加害性及びそれを可能にする性的魅力の権力性に対する異議申し立て」が問題と認められ、制限された社会というのは既に存在する。というよりギリシャ問題のパンドラや傾国の美女という言葉で、古来から人間社会は正しいか否か?は別として、性的魅力の危険性に対して警鐘を鳴らしてきた。現代においても世界3大宗教であるイスラム教は女性が肌を見せる事を禁じている。
あと実際に性的魅力の行使が制限された社会においては性的魅力に頼って生きてるメンヘラ女性は大変厳しい事になると思われる。というか性風俗産業における脱税を本格的に摘発するだけで冗談抜きで×者が多数出るのではないだろうか?またコロナの助成金を通じて可視化された事であるが、性風俗産業は脱税等のフリーライダーとして割と多くの国民から反感を買っている。また流石に日本では、そこまで行かないだろうがイスラム国が支配した地域における性風俗産業従事者がどのように扱われているか?というと…。

ここまででもお分かりかと思いますが、彼ら保守派は性犯罪の保護法益を、個人の性的自由の侵害(推進派が極論として「両者の合意のないセックスをすべて犯罪とすべき」と訴えているのもこのため)ではなく、「皆婚社会」「伝統的家族観」を破壊するものとしてとらえているわけです。未成年が、たとえ合意の上で子供を作ったとしても、「伝統的家族観」に組み入れられない、だから成人と未成年の性的関係と同じように罰すべきとなるわけです。

またこれはインセルの本音とも相性が良いものです。自由恋愛社会になってスクールカーストの高い男子(インセル用語ではチャドという)が女子をとっかえひっかえヤるようになり、それを罰するように法改正することができれば奴らに一泡吹かせられるというわけです(実際のところこれはマジで環境によります。男女別学の学校が多い地域では成人するまで男女ともに非モテが多数派になりますし、そうでない地域でも女子がスクールカーストの低い男子に対して性的暴行をふるうことは少なくありません、実際私がそうだったので)。

文科省は(推進派が改正の条件としていた)性教育の強化方針を、この刑法改正に先駆けて発表しましたが、やはり保守派への配慮?みたいなものがあって、タイトルが『生命(いのち)の安全教育』となっていますし、「各学校や地域の状況等に応じて適宜内容の加除や改変を行った上での使用も可能」とのことです。

そもそも性的同意とは、「ノー・セックス」「セーファー・セックス」といったように幅(選択肢)があるものなのですが、保守派は「ノー・セックス」、すなわち婚姻に準ずる関係でしかセックスを許してはならないということしか教えようとしません。特に日教組に反感を持っている教育者(現在の法務委員長もその影響を受けている)は「どんどん変なことを教えて家族というものを破壊しようとしている」と言って、性教育を全くさせないようにしたばかりでなく、統一教会やマッキノン学説とも組んで若者の間での性に関する話題を流通させないようにしたのです(児童ポルノ法に創作物規制を盛り込むのはその集大成でした)。

自分たちの「性的自由」を守るための法として

またrei氏は、上述の記事で次のようにも述べています。彼もオタクの立場として、「あてがえ論」もとい皆婚社会、ひいてはインセル・保守派の台頭に懸念を抱いているようです。

しかしながら社会の流れとしては「フリーライダー排除」が進むだろう。フェミニスト、マイノリティ…弱者である事を盾に他者への施しを拒否する者…への反発は滅茶苦茶広まっている。これは1切の研究や統計が必要ないレベルで自明だろう。そして…当たってほしくない予想であるが…オタクもフリーライダーとして排除される対象になるだろう。社会へのコミットを必要最小限?に抑え、自分の趣味嗜好に忠実に生きる…リベラリズムがオワコンした社会で、そんな生き方が認められるわけがない。

そう、この改正論議は二次元の女を愛するオタクたちにとっても、決して無関係ではないのです。少なくともインセルや保守派に改正の主導権を握らせてはいけません。そのためにどう動くべきかを、考えてほしいと思います。そして、二次元オタクを含めたすべての人の「性的自由」を守るための法として、適切な改正がなされることを願います。