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アンゴラ①10年前の今日、私は…

(1)内戦が続いた”日本人が訪れにくい国”にいた

日本を襲ったあの大きな災害から10年の月日が経った。まずは命を失った人々のご冥福を祈りたい。また震災の被害を受け家や家族を失った方々の気持ちが少しでも癒えることをお祈りしたい。

あの日私は、アンゴラにいた。聞き慣れないこの国はアフリカでは中南部に位置している。ダイアモンドや石油が産出される大変裕福な国で、首都の物価は世界で一番高いと言われている。ポルトガルが植民地にしていただけあって、人々はポルトガル語を話す。だがそんな資源が豊かな国だからこそ奪い合いが生じ、内戦が長く続いた。そのためこの国にはほぼ観光資源はなく、また入国するにしてもビザ発給が大変難しいので、観光客としての入国はほぼ不可能と言われている。”行ったことのある日本人はほとんどいない”だ。

(2)地震について知ったのは

あの日私が地震の第一報を受けたのは、フライト前に休息をとっていた時に友達が掛けてきた電話だった。私のドバイの家にはテレビがなく、その上スマホがそれほど普及していなかったあの頃はネットといえばパソコンだったので、どれほど大きい地震なのかは友達の情報からは伝わらなかった。

少し心配しながらも向かったフライトで、皆がフライトの前にその日のフライトについての情報を共有する(briefingという)ミーティングの部屋に入った時。私が日本人だと知ったパイロットやCA仲間から

「君は日本人か!日本は大丈夫なのか?家族は大丈夫か?」

と矢継ぎ早の質問。”尋常じゃないほどの被害が起きているのだ”と悟った。

ドバイから割と遠いアンゴラまでのフライトは上の空だったかもしれない。日本人はあまり来ず、中国人出稼ぎ労働者が多いこの国では日本の情報に通じている乗客は一人もおらず、何も聞かれることはなかった。

ホテルの部屋についてテレビの電源を入れた瞬間だった、衝撃的な光景が目に入ってきたのは。それはたくさんの家々が破壊され、黒い大きな津波が町を飲み込んでいる様子だった。

アンゴラではNHKは見られなかったので、主にCNNやBBCといった欧米系のメディアを見ていた。見たくない、でも目が離せない。報道の1時間のうち、大げさではなく50分くらいは地震のニュースだった。アンゴラでは基本的に物価が高すぎてやることがなく、おまけに現地で丸2日間も滞在があったため、ずっと流れてくる日本の地震の情報に鬱っぽくなってしまった。

なぜ私は、こんなところにいるんだろう。率直にそう思った。

(3)なぜ日本にいないんだろう

それまで東北には全く縁がなく、家族や友達もいないどころか、現地を訪れたこともなかった。でも日本に帰る機会にもそこまで恵まれていなかったその当時、大地震で日本が大きな影響を受けている様子を見ているだけで、心の拠り所が壊されてしまったかのような痛みを感じた

それまで海外で暮らすことに疑問も持ったことはなかった。家族や友達にもいつでも会える、日本に帰ろうと思えばいつでも帰れると漠然と信じていた。でも違った。いつ世界が壊れて、それまでの日常と分断されるのか分からない。そんな不安定さの中で生きているのに、なぜわざわざ日本や家族、友達と離れた遠い場所で一人奮闘しているんだろうと感じたのだ。

だが「家族は大丈夫か?」と心配してくれた同僚たち。想像していた以上に、世界は自分たちのニュースよりも優先して日本の惨状を伝え、募金を募っていた。そういった暖かい気持ちは人種や国籍を超えるのだなと感じた経験でもあった。

(4)節目の今日、考えたいこと

普段身近にはないため忘れかけているが、人間は皆死ぬ。その時期がいつなのかは誰もわからない。だからこそ毎日を精一杯生き、自分のやりたいことをやることが大事なのだ。会える時には家族や友達といっぱい話をしよう。

自分は今、やりたいことが出来ているだろうか。節目を迎える今日、じっくりと考えてみたいと思う。

②に続く

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