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韓国での観劇記録

先月渡韓した最大の目的は、前回・前々回と綴った中にもある舞台観劇。今回はその舞台の感想を少しばかり話したいと思います。

木の上の軍隊/나무 위의 군대


この作品は日本の演劇界では有名な故井上ひさし氏の原案です。残念なことに執筆の途中に亡くなられたため、書き下ろしたのは劇団モダンスイマーズ蓬莱竜太氏です。

沖縄県の伊江島を舞台に、終戦を知らぬまま2年間ガジュマルの木の上で生活した2人の日本兵の物語を実話をもとに描いた三人芝居

日本では2013年に藤原竜也氏主演、2016年に松下洸平氏主演で公演しています。
今回はそれを韓国の俳優たちがもちろん韓国語で演じる。
ミュージカルのように歌も踊りもない会話劇なので、韓国が好きでも韓国語レベル1の私には観劇するには中々ハードルの高いこと。
しかーし、日本の作品ということもあってどうしても観たかったのです!

上官:イ・ドヨプ氏(Wキャストでキム・ヨンジュン氏)
出演: シスターズ ・良くも、悪くも、だって母親
新兵:ソン・ソック氏
出演: 私の解放日誌 ・D .P.1・2
神秘的な女:チェ・ヒソ氏
出演: ミストレス ・今、別れの途中です

韓国ドラマを観る人は一度は見たことあるだろう方々。

演出・演技・照明そして音響


前日にホテルで藤原竜也氏主演のDVDを観て望んだ当日。
いよいよ幕が上がりました。
セットは日本と同じように舞台真ん中に大きなガジュマルの木。
下手(客席から向かって左)からチェ・ヒソ氏の登場に一瞬にして引き込まれました。
スッと出てきてセリフがない中で指先、背筋、頭のてっぺんまで全てに神経を張り巡らせてるのがわかる所作が本当に美しかった。
もう一度言いたい。本当に美しかった。
幻想的な照明、静かに流れる音の響きも含めこの時点で日本との演出の違いに私はドキドキです。

その後、ソン・ソック氏が木の上(ほぼ真ん中)からの登場でドキドキからワクワクに変わります。もちろん会いたかった人ではあるけれど、そういう嬉しいという感情よりもテレビや映画で観ているそのまんまだ!!という最初の印象でウッとなった気がします。
喋り方も表情も役を演じているのは確かなんだけど、どこかでソン・ソック氏が見え隠れする…と言った感じ。(言葉で伝えるのは難しいのですがもちろん良い意味で)
日本でもたくさんの舞台を観ているけれど、こんな気持ちになるのって中々無かったなと今振り返っています。

戦争経験豊富で他の地から来た上官と、生まれ育った場所を守るために軍人になり、まさに今そこで戦っている新兵。
全く噛み合わない2人での生活。
上官イ・ドヨプ氏との掛け合いが続く中、当たり前ではあるけれど息が合っている!
それをこんな近くで観ている私。(前から2列目)
簡単に瞬きなんてしていられないわけです。

そして少々ネタバレになってしまうかもしれないけれど、前半の上下関係から一転します。

上官は途中、敵軍の様子を見て終戦を迎えたことを知ります。
しかしそのことを新兵には伝えず、木の上での生活を続けるのです。

なぜ上官はそのことを伝えなかったのか?
それは周りで死んでいく人たちを見ながら、自分達は生きるために逃げていたと自分を恥じているから。。。
助けを待つ中、終戦がわかっている上官は米軍の残していった食糧を口にしたり戦う意識が欠けていく。
それとは逆に、何も知らない新兵は人を助けるために生き抜くために、国を守るために常に必死に生活している・・・。
言葉がわからなくとも、2人の表情、仕草、そして女(精霊?)による語りと時には相手役となって話をする全てが温度差の葛藤だったり、戦争の醜さ無益さを感じることができました。

舞台経験も多い先輩が引っ張っていっているというだけでなく、やっぱりソック氏のその場所にいるんだという演技のうまさ。個人的にニヤけてしまうくらいカッコ良かったし、可愛かったし、色気?があったなと。
日本版でもあったようにコミカルで笑いを誘う場面もあります。
あっ!あの場面だ!とわかるので自然と自分も笑っていたのですが、韓国のお客さんの反応はさらに上をいった笑いもあったし、違うところでもいくつか笑いが起きていました。
韓国版として台詞が変わっているのかもしれないし、アドリブ演技も結構あったように見えたので、悔しい。。。実に悔しい。。。
もっと理解して、そこは共感したかったー。

日本と違うところ?なのか?


舞台自体は十分楽しめましたが、1つ残念なことがありました。
これは仕事柄、造り手側の目線で観てしまっているので気にならない人は気にならないかもしれないことですが、ヘッドセットマイクを付けてのお芝居だった事です。

劇場の大きさは可動式ではあるけれど、350席ほどの小劇場。
日本では小劇場でマイクを付けているのは見た記憶がありません。
今回の劇場LGアートセンターは昨年移転してきた新しい劇場で、中劇場もあり造りもしっかりしたものなのでもちろん聞こえやすさはあるけれど、マイクを通しての声は地声と比べると響きがやはり違うんですよね。

もっと小声でもいいところや、もっと声を張ってもいいのになあと感じる場面があったので韓国ではこれが普通なのだろうか?
他の舞台はどういう感じなのか、気になるところです。

その後に韓国で一悶着あった記事を読みました。

なるほどなるほど。
どちらも合っている、間違っていることではないんだよなー。
言い方だったり、捉え方でやっぱり色々違うんだな。言葉って大事ですよね。
というわけで私の残念もただの一意見にすぎませんので。

カーテンコール


舞台が終わると順番に出演者が出てきて、お辞儀をしたり手を振ったりするカーテンコール。
勝手に2回はしてくれると思っていたら、今回1回だけだったのでこれまた残念。
一緒に行った友達が観に行ったミュージカルでは2回はあったそうなので、普通の舞台はどうなんだろう?
もう1回出てくるだろうと思っていて拍手を続けていたけれど、思いのほか周りの人たちは手を叩くのをやめていたし、立ち上がっている人もいたので中々韓国の演劇ファンはクールなのか?今回の舞台だけなのか?たまたまなのか?
些細なことだけど、韓国演劇にさらに興味が湧く理由の1つとなりました。

ソン・ソック


途中途中でソン・ソック氏の話はしてきていますが、最後にまとめたいと思います。あまり今ドラマや映画で活躍している韓国の俳優さんの舞台出演を聞かないので(ミュージカルはよく目にしますが)今回ソン・ソック氏が9年ぶりに立った舞台を観に行けたことは本当に嬉しくエンタメ好きとしては感慨深いものになりました。
そして今回騒動になってしまったけれど、舞台を終えてソン・ソック氏の舞台に対する想いは何か変わったものがあるのだろうか?
それを公で話すことはないかもしれないけれど、一ファンとしてこれからの活躍を楽しみにしていきたいと思います。

*韓国ドラマ「恋愛体質」「私の解放日誌」「D.P.2」どれもいい味出しています。

恋愛体質
私の解放日誌
D.P.2

稽古前の動画。こういう一面が見られるのもいいですね。

https://www.youtube.com/watch?v=HCxgTIbfRzk



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