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#1「ピエール・オリヴィエ・ボノーム」と「ELLEGARDEN」

【今日のワイン】

Vercheny '20 /Pierre Oliver Bonohme(Loire,France)

ヴェルシュニー 2020年 / ピエール・オリヴィエ・ボノーム(フランス ロワール地方)

品種:Pinot Noir(ピノ・ノワール)

【テイスティングコメント】
梅やザクロなどの香り、小粒な赤い果実の雰囲気。若干の還元臭がありつつ、口に含むとナチュラルらしいプチプチとした酸の立ちと軽やかな飲み心地。フランボワーズなどの若々しいフレッシュな甘味に小梅のような酸味が重なる。渋みはほとんどなく赤紫蘇ジュースのような飲み心地。
熟成からくる出汁感のような旨みのニュアンスは強くは感じられないが、ポテンシャルを感じる。



はじまりとなる第1回のポストに選んだのは、フランス北部・ロワールの自然派ワイン生産者、「ピエール・オリヴィエ・ボノーム」。

今やロワール地方の生産者では大御所となった、Le Clos du Tue-Boeuf(ル・クロ・デュ・テュエ=ブッフ)のもとで畑仕事を手伝っていたことからワインづくりの道へ。

当時、当の本人はワインづくりにさして興味があったわけではなくアルバイト目的だったのが面白い。

しかし畑仕事におけるセンスや飲み込みの速さをLe Clos du Tue-Boeufの当主、Thierry Puzelat(ティエリー・ピュズラ)に見込まれ、2009年から2014年までの5年間は「Puzelat Bonohme」の名義で買いブドウによるプロジェクトを共に運営し、2014年以降は独立。

注目の若手生産者であったボノームも今や中堅どころ。
そんな彼が自社畑のピノノワール100%でつくったワイン。
ちなみに「ヴェルシュニー」というワイン名は本来、この土地のピノノワールが冠することのできるブランド名(AOCと呼ばれる)が「Cheverny(シュヴェルニー)」であることに由来する。
なぜか申請が通らずにシュヴェルニーを名乗れなかったため、つづりをもじってワイン名としたのである。

若々しい果実味とナチュラル感が印象的。
ブドウの旨みを残すために過剰なフィルタリングをしていないことが伺えるほんのり薄濁り。
熟成したピノノワールではよく「出汁感」「旨味感」といった表現が出てくるが、将来的にその雰囲気を纏ってきそうなポテンシャルがある。

粗削りな味わいながら将来を感じさせるポテンシャル。

こういったワインを飲むときに決まって思い浮かべるのが大好きなバンド、ELLEGARDENのアルバム、「RIOT ON THE GRILL」。

最近再始動が話題になったバンドでもあるが、大手レーベルに所属せずともインディーズから邦楽ロックを牽引した4人組。

彼らの名盤といえば5thアルバム「ELEVEN FIRE CRACKERS」が挙げられるが、爆発前夜という意味でこちらのアルバムを取り上げた。
ライブ感を意識したラインナップ。
「モンスター」などのポップチューンもあれば、パンクさ全開の「TV Maniacs」などのラウドロックも織り交ぜた内容は、ELLEGARDENが持てる要素を全て世に打ち出し、今から登っていかんとする若々しさが感じられる。

2008年に惜しむらく活動休止するも、その10年後に日比谷で再始動したELLEGARDEN。
自分が彼らを知った頃はすでに活動休止していたこともあって、伝説のバンドとして聴いていた彼らがまたステージに立った時は本当に実在したのか…と胸が震えた。自分でさえそう思うのだから、活休前から追っていたファンの人々の感動はなおさらだろう。

10年の熟成を経て再び動き出した彼らの音楽を聴きながらボトルを見つめる。
このワインは10年後どうなるだろうか?艶やかな旨みを伴った液体か、それともまだ若々しさを残すか。ELLEGARDENはどちらかといえば後者だろうか。

そんなことを思いながら空になった今日の1本です。

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