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ロマンス暴風域があと1話で終わるので吐き出しておく。

暑さが肌にへばりつくこの夏におすすめしたいドラマがある。それが「ロマンス暴風域」だ。

https://www.mbs.jp/romance_bofuiki/


全員に刺さるかと聞かれたらYESとは言えないけど、10人に1人くらいはドはまりするんじゃないかと思っている。私はその1人の方です。

乾いた映像と濃度の高い物語のバランスが絶妙なんです。
BGMが少ない分リアルに届く音にドキドキするし、映画のような少しフィルターのかかった映像にうっとりする。見て欲しいけど大ヒット!と言われて盛り上がるタイプではない、単館映画のような作品です。

しかしオススメしておいてあれなんですが、次で最終回なんです。全5話。は、はやい・・・!
なので、その前にこのじめっとした熱を吐き出しておこうかと。



せりかというロマンスと出会うサトミン


私の中でロマンスとは人生においてスパイスの一種のような立ち位置で、それに当てはめるとサトミンは一回で摂取した量が過剰だったのかもしれない。 それ程彼にとって忘れられないスパイスがせりかという風俗嬢です。

主人公・佐藤民生(通称サトミン)は長らく独り身の30代半ばで非正規美術講師。もう少しで契約が切れてしまうのに、次の就職先も決まらずにいる。婚活をしても非正規と分かった途端に相手女性は目の色を失い、うまくいかない。
そんなある日、ふらっと立ち寄った風俗店でせりかと出会う。彼女はサトミンが初めての客だと言い、どこかたどたどしい様子だ。
ハスキーな声で「佐藤くん」と呼ぶ声。砕けていく口調と出てくる方言。愛くるしさとミステリアスさの混ざった雰囲気を持つせりか。
自分の生い立ち、肩書き、年齢関係なく話を聞き、カラッと笑う彼女との出会いをサトミンは「運命の出会いだ」と確信し、風俗嬢である彼女に恋をする。

話を聞く、受け入れる、寄り添うなんて、そりゃあそれが彼女の仕事なんだよ。でも私がサトミンの立場だったら、「あんたに会うために私はここに来た」なんてあの眼差しとあの声で言われたら感情も高ぶっちゃう。営業だと分かってても絶対にクラッときちゃう。知り合いには言いたくない(言えない)けど匿名のブログで長々とポエム交じりにこの出会いを綴ってしまいそう。

その後、彼女が人妻だということをサトミンは知るんですが、"せりかとの出会い"が巻き起こした嵐はもう止められない。それどころかますます激しさを増していく。
ある日を境にせりかと連絡が途絶えてしまいストーカーまがいなことをしてしまったり、別の風俗店で出会った、せりかと同じ位置にほくろがあるなっちゃんにいきなり同棲を持ちかけたり、出会い系でマッチングした顔写真詐欺女や、バーで知り合ったつまらなさそうにしている女とただ体を重ねたり。
踏み入れた暴風域に足を絡めとられたかのように暴走するサトミンは本当にどうしようもないんだけど、どこか目が離せない。

どうしようもない、のに、見続けたくなる



そう、どうしようもないんですよ。サトミン。
せりかとの恋に溺れてる時は旦那と別れさせて自分が養おうと正社員に拘って就活したり(でも彼女と別れた後は出会う前よりもさらに覇気がなくなった)
せりかの家に行って旦那と対面した時も自分とさほど変わらない風貌に「勝てる」としれっと比較して見下してしまうし(ところが相手はいいとこの会社で働くハイスぺ旦那だった)
なっちゃんとの出会いは運命ではないものの自宅に住まわせたり(反対になっちゃんの方はサトミンとの出会いを運命だと信じている)

分かりやすくひどいことはしてないけど、どうしようもない。

でも分かっちゃう自分もいるんです。
私も独りよがりで爆走してしまうし、人とすぐ比べては心の中で下に見る時もあるし、自分にとって都合のいい相手がいたとしても誠実に対応できるかなんて保証は出来ない。そもそもそんな相手と出会ったことないけど。
だから見ていて「痛々しいな」とサトミンに指を差せない。指したい指をグッと握りしめている。

どうしようもないけど人間味あふれていて、なんとなく目が離せない。幸せになれと言えないけど、不幸になれとも思わない。それがサトミンの魅力なのかな。


彼と関わり合う女性陣も魅力的なんです。

前述した通り、あの状況でせりかと会ったら私もメロメロになってしまう自信がある。すごく魅力的なのに心から彼女を信じることは出来ない。そんな危うさがたまらなくて、一度その橋を渡ってみたくなるんです。
本名だと言ってた"せりか"も偽名(源氏名)だったわけだし、旦那の元に押しかけてきたのはサトミンが二人目だというように、あれだけサトミンと心が通じているように見えた彼女の本心が読めない。そこがまたいい。工藤遥さんの声、めっちゃいいよなぁ。

そしてなっちゃん。せりかとは反対にシュガーボイスが愛らしい。不幸の香りが漂う素朴さに守りたくなるし、応援したくなる。彼女もまた、サトミンの暴風に巻き込まれているけど、この先彼との関係がどうなっていくんだろう。 

大学時代からの友人・芝内との距離感も興味深い。別作品だったらこの二人も一回は関係を持ちそうだけど、このドラマにおいてはそれがない。だからこそ一番理解できないのがこの二人の関係かも。そう言った関係を築いたことがないのもあるけど、こんな風になれるんだと不思議なものを見ているよう。友情に性別は関係ないと思いたいけど、性別そのものは存在してるわけだし、二人は異性愛者だと思われるし。


このドラマを楽しみにしているのは、私も寂しいから



客観的に見ているのに、見ていくうちに私の奥に眠る寂しさが顔を出すんです。私も無条件に受け入れて欲しいし、抱き締めて欲しい。誰でもいいわけじゃなく、運命を感じる相手と出会ってみたい。そんな寂しさが呼び起こされるのです。

きっと、みんなそう。寂しさを抱えて日々生きている。
そう考えると客観的に見ていた彼らがとても近く感じてしまう。それがこの作品の視聴者への寄り添い方なのかもしれない。


残り1話なんですが、この物語はどこに着地するんだろう。
サトミンに運命を感じてたなっちゃんはスケッチブックの中に彼の恋を見つけてしまうし、予告映像にはせりかもいたし。
どんな結末であれ、最終回の結末がこの先永遠に続くとは思えないけど、ドラマとしてどうピリオドを打つのかがとても楽しみです。

ロマンスって言葉、掴んだら消えちゃいそうな繊細な響きと、言葉の持つ意味がすきです。まるで砂糖菓子のよう。


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