ペアというのは政略結婚のようなもの!?

 いろいろなスポーツにペア競技はあるが、フィギュアスケートが一番危険を伴っているように思う。肘鉄をくらうくらいなら、まだ青あざで済むだろうが、エッジで傷つけた、リンクに落とされたとなると、イコール大怪我だ。そんなペア、アイスダンス競技には、シングルとは違ったドラマがある。

 不謹慎だが、フィギュアスケートのペアやアイスダンスの試合で、kiss&cryで点数を待っている時の選手二人の表情を見ていると面白い。アスリート同士反省大会をしているカップルもいれば、「あんたなんてあんなミスしたのよ、バガでね。」とツンケン状態の彼女を慰めきれない彼がいたり、選手もコーチも爆発的に大喜びしている時もある。一人でないだけに、ドラマも複雑だ。

 ソチ五輪で金メダルを獲得したアイスダンスペアの、メリル・デイビス&チャーリー・ホワイトは、ご近所さんの幼馴染。1997年に結成し、18年間も一緒に滑っているという、全米一長いパートナーシップを保ってきたペアだ。かつて、ホワイトはソチで、インタビューでこう語ったそうだ。「アイスダンスで成功する秘訣は、滑りがどうこうよりも、いかにパートナーシップを大切にして持続をさせていくことができるかではないかと思うのです。ぼくたちがすごく若い頃にチームを結成したのは有利だったと思っています」

 ペアはもちろんアイスダンスの真髄となるのは「ユニゾン」。同じ旋律を奏でるかのように、2人がいかに息を合わせたスケートを見せるか。フリーレッグの角度から揚げたての角度までかにあっているか。スピンの回転数や姿勢の変更、ジャンプの離氷から着氷までタイミングをぴったり揃え、大技の成否も2人の呼吸が合うかどうかが成否に関わってくる。ペアとは2人でひとつ。体格の違う男女がまったく同調して滑っているように見せるために、スケーティングの歩数、フリーレッグで伸ばす脚の角度まで計算しつくされているのがペアのプログラムだ。心地よいユニゾンは、何よりカップルのお互いを信頼している熟成度によるものが多いと思う。ある程度の技術巧者同士であれば、シングルスケーター同士でもアイスショーなどで見るように、それなりにペアプログラムをこなすけれどね。しかし、試合となれば別だ。体調の良い時もあれば、悪い時もある。いかに良いチーム=カップルになるか。より良いチームワークを築けたものが、表彰台の真ん中に最も近いのだ。

 兄弟同士のペア、子供の時に通っていたクラブのコーチに言われて組んだペア。ある程度の実績はあるが、より勝つために組んだペア。リンクの上では、まさに恋人同士のような二人がそのまま結婚したカップルも多いし、リンクを降りればそれぞれに恋人がいる場合も多い。恋愛関係が終わってカップルを解消するペアもいれば、プライベートと切り離し、試合では好成績を収めるペアも多い。ただ、突然「あなたと私、君と僕、スケートでペアを組みましょう。」と決めていきなりリンクに初めて向かったというような話は聞かない。

 やはり、競技を熟知したものが企てる政略結婚のようなものなのかもしれないな。
2016年如月に記 

 政略結婚という言葉がネガティヴかもしれないなと引っ掛かってはいるが代わりにうまい言葉が見つからない。闇雲な一目惚れより互いの家庭環境を熟知した人がセッティングするお見合いの方が確率的にうまく落ち着くような気がするのだ。2022年追記


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