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Web Designing2024年4月号で大阪・関西万博デザインシステムについて引地耕太さんに聞きました

『Web Designing』2024年4月号が本日発売されました。第1特集は「デザインシステム」です。デザインシステムって、これまで個人的には、Webサイトの立ち上げ・運用においてコンテンツやデザイン制作の共通言語となるルールやガイドライン的なものと捉えていましたが、今はそこから一歩進んだ認識で用いられているんですね。チームでのWeb制作や、組織的な運用に関わる方にとって、いろいろなヒントがあるのではないかと思います。よかったらお手に取ってみてください。

そんな中で今回私が担当したのは、「大阪・関西万博 共創のデザインシステム」という記事です。2025年に開幕する大阪・関西万博。その「VIデザインシステム」のクリエイティブディレクターを務めた引地耕太さんにインタビューし、ビジュアルの詳説にとどまらず、デザインの指針となったデザインポリシーの策定、そこへ至る思考の過程、さらにこれからの社会とデザインのあり方まで、深く語っていただきました。

VIデザインシステムというと、一般的にはロゴを中心にサインや装飾、印刷物、グッズなどへ展開する上で守るべきデザインのガイドラインやその素材を指しますよね。でも、引地さんの発想はその先入観を覆すものでした。これはぜひ本誌で読んでみていただけるとうれしいです。デザイナーに限らず、依頼を受けてものをつくるお仕事をする方にとって、とても考えるポイントになる部分が多いのではないかと思います。

また、引地さんご自身が今回の記事についていろいろとポストしてくださっているので、それを読むだけでもかなり面白いと思います!


個人の思想がクリエイティビティの土壌になる

今回の取材で特に印象に残ったことの1つに、仕事とは別に引地さん自身がテーマとして考え続けてこられた「Nature・System・Humanの関係性」に関するお話がありました。詳しくはぜひ本誌でお読みいただきたいのですが、これまで個別に存在し世界の中心となってきた3つの要素を融和させることで、重なりあう部分にイノベーションが生まれ、よりよい未来が生まれていくのではないか、という命題です(と私は理解しました)。この数年、ずっとこの命題を抱えながらお仕事をしてこられたとお聞きして、「考える」とはこういうことかと、深く納得する思いでした。

つくる仕事って、お題を与えられた時が始まりではないんですね。日頃から自分の中で考え続けたり、研究したり、試したりし続けている土壌があるから、お題に取り組み始めた時にその土壌を使って、お題が内包する種を育てられるのだなと。種がどれだけ豊かに育つかは、土壌の豊かさ次第であって。結果的に成果物に表出するその人らしさとか、哲学、考え方みたいなものは、つまり土壌がそうしているのだと、実感したのでした。

今回のデザインシステムがこれほど深く哲学的で、システムとして合理的で、ビジュアルとして楽しく美しいものにたどり着いたのは、引地さんが何年もかけて耕してきた土壌があったからなのだろうと。万博のテーマやコンセプト、リサーチした情報、公募の条件など、外部からの要素もたくさん取り込む必要はあるわけですが、それらをいかに豊かに解釈するかも、当然その人の持つ土壌次第です。人が、人間性が、ものを生み出すということ、そのアートとデザインの融けあう境界線のようなものを感じました。

このお話について、引地さんは「ここまで話すのは初めて」とおっしゃっていました。すごく個人の内面にも近い部分を、しかも丁寧な資料までご用意の上でお話くださったことに、応えないわけにはいかないと、その時覚悟を決めました。それに、他に出していないネタと言われたらメディアの人間としては食いつかいないわけにはいきませんよね!笑

現実には構成も文章も、画像の載せ方ひとつまで、相当に悩みながら作業してきましたが、編集長やデザイナーさんの助けがあったおかげで良い形にまとめることができたと思います。また、博覧会協会様には画像や資料をたくさんご提供いただき、とてもインパクトある誌面になりました。改めて御礼申し上げます。

編集は1人ではできない仕事だと、改めて実感した特集でもありました。人に「依頼」するのではなく、人の理解や解釈を受け入れながら一緒に作業していくことを少し経験できた気がします。これがいつか「共創」に近づいていけたらいいなと思いました。


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