Web Designing2024年6月号で「デザインと言語化」対談を取材・執筆しました
『Web Designing』2024年6月号が4月18日に発売されまいた。第一特集は「少し立ち止まって、考える『デザインと言語化』」です。
「デザインと」とありますが、どちらかというと「言語化」を主題とする記事が結構多くて、なんというか、初めて(編集者でなく)当事者視点で本誌を読んだ気がします。Web制作やマーケティングに関する記事も仕事として普遍的なことが多くて勉強になったりするものの、今回は書く仕事をしている自分にとって本当に自分ごととして読める記事ばかりでした。
「書く仕事」の立場から読む言語化特集
例えば「“良い”言語化のための思考のデザイン(原明日香さん)」では、「読み方を提示する」とか「表現の余白」に対する意識とか、「言語化というより読解力」が大事とか。言われてみたらほんとそうです、というポイントばかりで、ぼんやり考えていたことが言語化されると気持ちいいっていう感じを体感しました。
「言語化に強くなる習慣と組織のつくり方(野田克樹さん)」では、経営視点で見た言語化の重要性、合意形成のための言葉の使い方、思考の構造化といったお話が、自分が企業さんからお仕事の依頼を受ける上での心構えのプラスになりました。こういう理由でこういうことを求められているのだなと。打ち合わせや取材から読み取れることもありますが、言葉で伝えてもらうととても明確なのだと実感しました。
あと、「曖昧なものを言語にするトレーニング」「アウトプットを繰り返す」「出すことへの慣れ」「書くことを習慣化する」などなど、とにかく数をこなすことの大切さをいろんな人がいろんな言葉でおっしゃっていて、仕事以外でほぼ自主的にアウトプットしない自分を改めて恥じ入った次第です。noteも月1がやっとですよ……。
企画とデザインと編集と写真
そんな中で、今回私が担当させていただいたのは対談記事2本です。中野信子さんと川田十夢さん、原研哉さんと小玉千陽さんという、今思い返しても背筋の伸びる、貴重なお話をお聞きする機会でした。
「デザインと言語化」という特集の上での企画ではありましたが、デザインについて・言語化についてという以前の、人が生きること・考えること・創造することと言葉、みたいな、とても大きなフィールドの中でお話しいただいたことが印象に残っています。
このページは見開きの両端に装飾的に文字があしらわれています。デザイナーさんが「言葉が生きている」感じをイメージしてデザインしてくれたものです。書かれている言葉はそれぞれラテン語で↓です。
中野さん・川田さんの対談:cerebrum et linguam, homines et verba(脳と言語、人と言葉)
原さん・小玉さんの対談:vincula significationis faciunt linguam(意味の連鎖が言語を構成している)
人間が思想や哲学を発展させた時代の言葉ということと、一瞬英語のように見えるけど読めない……みたいな仕掛けがあるのもいいかなと考えまして(ちょっと厨二でした)。デザイナーさんのアイデアと編集的な遊びどころがいい感じで合体したポイントでした。あと、写真の力のすごさを思い知った仕事でもありました。とても素敵なのでぜひ本誌で見てみてください。
土壌を豊かにすることでのちに実る
言葉はコミュニケーションの道具でありながら、極端にパーソナルなツールでもあります。それは思考の体幹であり思索の指先だから。
かように人はそれぞれに自分の言葉でできた世界に住んでいる。だから何?というわけではないのですが、現実世界の成り立ちを考えることがあまりないのと同じく、忘れがちな事実ではあります。読むことはそれを思い出させてくれます。
ちょっと話が飛びましたが、最後に、最果タヒさん、津野青嵐さん、藤崎圭一郎さんの寄稿を読んで、そんな感想を持ってしまったという話でした。多分、どれか1つだったらそう感じなかったと思います。雑誌に載っていたからたまたま読んだ。それで考えた。そういう出会いでした。そういう出会いの場でしたよね、雑誌って。
すぐに役立つ、実になる、ではないところで出会うものが人生を耕す栄養になったりするわけで。実際、この特集を読んで自分がどれだけ努力できるかというと、よくわかりません。でも、言葉の捉え方という意味では新鮮な視点を得ることができたと思います。それがもしかしたらこの先何かに影響するのかもしれません。今はなんとも言えません。でも今回は読者として、読んで楽しい一冊でありました。
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