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初めての金継ぎを『簡漆金継ぎ』でやってみた。

洗い物時、食器をうっかり手を滑らせて割ってしまうとショック!ですよね。お気に入りの器を諦めきれず、今回は「食器として使用するための簡漆金継ぎ」で、初めて金継ぎに挑戦してみることにしました。

様々なブログを検索しましたが、各々オリジナルなやり方でまちまちなので、私が検索して集めた方法の中でベスト!と感じた組み合わせ方法をまとめました。

●金継ぎの種類

金継ぎには簡単にいうと「本物の金継ぎ」「なんちゃって金継ぎ」があります。

本物の漆のみを使って金継ぎを行う伝統的なやり方の「本漆金継ぎ」
合成樹脂(接着剤)と本物の漆を併用する「簡漆金継ぎ」
合成樹脂と合成漆を使う一番簡単な「簡易金継ぎ」

要は「簡易金継ぎ」は本漆を使用せず、“接着剤でくっつけて絵の具を塗る”というような直し方です。合成漆(新うるし)は本漆ではないので、マグカップの取っ手とかなら問題ないけど、お皿などは口をつけるものは安全面から食器として使えないんだそうです。

…って食器の意味ないやん!
「本漆金継ぎ」は安全面には問題がないですが、接着剤としての漆は空気中に放置していれば乾くものではなく、空気が動かない密閉した空間で温度・湿度を調整することによって乾きます。
なかなか繊細なので、初心者が割と大きく割れたお皿を接着するにはハードルが高い…。

というわけで今回は「簡漆金継ぎ」で直します。

●金継ぎセットを検討する

金継ぎセットは東急ハンズや漆専門店など、様々な場所で約5,000〜15,000円程度で販売されています。微妙に内容の異なったものが販売されているので、自分がどのように金継ぎを行いたいかで選ぶセットは変わってきます。

食器に使う「簡漆金継ぎ」に必要な道具は、ざっとまとめて

食品衛生法適合の接着剤
生漆(基本の漆。接着剤や穴埋めに使える)
砥の粉(砥石を細かく削った粉。小さな隙間埋めに使う)
耐水ペーパー(はみ出した漆を削るため)
テレピン油(生漆を希釈したり、漆の筆を綺麗にするため)
細い筆(食器の割れ目に沿って漆を塗るため)
金属粉(金粉、銀粉、真鍮粉など ※今回は金粉)
弁柄漆(金粉を捲く前に粉が接着するように塗る赤い色の漆)
真綿(金粉を払うときに必須。コットンはダメ!)
・スポイト(あると便利)
・ヘラ(あると便利)

こんな感じです。あとは大体家にあるもので何とか出来ます。

私が購入したのは、株式会社箕輪膝行さんの金継ぎセット(平磨き法)

理由は、金粉が綺麗に映える仕上げ用の弁柄漆と、純金粉0.2g(超高価)に加え、練習用の真鍮粉10gがセットに入っていた為です。金粉0.1gでは2mm幅を10cm〜20cm引けるようですが、今回割れたお皿には金粉だけでは足りなそうだったのでこちらに決定。

(ちなみに箕輪膝行さんの金継ぎセットには、平磨き法消仕上げ法があり、仕上がりが違います。平磨き法の金の色合いは、消仕上げ法の黒っぽいつや消しの仕上がりに比べ、金属的な質感になり艶が出て仕上がるそうです。)

中身はこんな感じです。(筆の隣の白い粉は別途購入した砥の粉になるので、セットには含まれません。)

●接着剤を選ぶ

割れてしまったお皿を食器として使用するには、食品衛生法に適合した接着剤を選ぶ必要があります。詳しくは色んな方がブログやらなんやらで細かく説明してくれているので、今回は省きます。私が選んだのは、この「タイトボンドIII」

食品衛生法適合(日本ではなくアメリカのですが)の接着剤であること、耐水性と耐熱性に優れていること、乾燥後にはみだした部分を削りやすいことが決め手でした。(あくまで漆ではなく接着剤で直すやり方になりますので、自己責任で選んでね!)

●金継ぎを始めます

見よ、この見事なまでにガッシャンと割れてしまった愛しのお皿よ。

まずは、割れてしまったお皿の破片を一生懸命集めてタイトボンドⅢで接着します。結構ゆるめの液体なので、割れ目に沿って爪楊枝などで丁寧にボンドを塗り、少しだけ時間を置いて粘着性が高まったところではり合わせるとズレにくいのでオススメです。

全てのパーツを貼り合わせたら、接着剤が乾くまで(約8時間)ズレないようにマスキングテープで補強します。細かい部分の隙間はあとで埋めていくので今は気にしなくて良いです。

お皿の裏面に大きめの欠けがありましたので、ダイソーで購入した「エポキシパテ」で穴埋めします。

※今回は裏面であった為パテを使用しましたが、食品の触れる表面で大きめの穴があった場合は刻苧漆(生漆+小麦粉+木粉)で穴埋めします。

接着剤が乾いたら、水を含ませたメラミンスポンジではみ出した接着剤を削り取ります。タイトボンドIIIは扱いやすくて本当におすすめ。

▼(裏面)接着剤を削り取った後

▼(表面)ちょっとパテ見えてる笑

画像で見るともうほぼ完成に見えるのですが、接着した割れ目に微妙な段差があるので、これを「錆漆」(砥の粉:生漆=10:7~8 を混ぜたもの)で滑らかにしていきます。

▼砥の粉は水を混ぜてペースト状に。泥のようになったところに生漆を混ぜます。

▼錆漆を段差に塗りつけ、凹凸をなくしていきます。

漆は、空気中の水分を取り込みながら硬化します。食器が収まるくらいの蓋の閉まるダンボールを準備して、中にビニールの上に濡れた雑巾を敷いておき、2日ほど置いて乾燥させます。

うまく乾いたら、水に濡らした「耐水ペーパー」で、はみ出した錆漆を削っていきます。

▼削った後がこちら

失敗しました・・・錆漆は、修理する器の表面(釉薬)がツルツルの食器なら綺麗に剥がれるので問題ないのですが、ザラザラ・マットな質のものはマスキングが必要なのだそうです。かなり微妙な質感だったのでマスキングなしにしましたが、見事に後が残ってしまいました・・・(残念)

耐水ペーパーで磨いた後も、やや段差があったので、もう一度マスキングして錆漆の工程を重ねます。

▼この乾いた錆漆を耐水ペーパーで削ります。

●蒔絵をする

段差がなくなったら、いよいよ金粉を蒔く工程に入ります。

弁柄漆を細い筆でとって、割れ目のラインに沿って細くなぞります。あまり厚く塗りすぎると金粉が漆に沈み込んでしまうので、薄〜く薄〜くなぞっていきます。

弁柄漆の表面が少し乾いたら、金粉を蒔きます。今回裏面は真鍮粉を蒔きました。こんな感じです。

金粉を軽く蒔いたら、線の上を真綿をくるくると滑らせて金粉を馴染ませていきます。

このまま3日ほど漆を乾かして、余分な粉を筆などで払い落とします。

●蒔絵粉固め

蒔絵の上から、生漆:テレピン=10:3ほどに緩めた生漆で線をなぞり、ティッシュで何度か抑えて拭き取ります。生漆も数日ムロで漆を乾かし、金粉を固定します。

生漆を乾かした後、鳴滝砥石粉+ほんの少しのサラダ油を混ぜクリーム状にし、布につけて金属質な艶が出るまで金を磨きます。出来上がりです!!

▲表面は金粉で、艶が出ました。(金粉の方がシブい)

錆漆の工程で、腕が足りず、段差を完全に無くすまでには埋められませんでした。(精進あるのみ!)

今回は、本物の漆と接着剤を使用して食器として使用できる『簡漆金継ぎ』でなおしてみました。手間暇かけたお皿にはまた一層愛着が湧きますね♡!このまとめがお役に立てれば嬉しいです。

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