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都市型狩猟採集のススメ・アサリ編~現代のタダメシ探訪記~


ねこぉ…


ネコォ…


NEKOOOOOOOOOOOOOOO!!





アサリが無料で食えると聞いて

というわけで、今回は金沢八景・野島海岸へ潮干狩りに行ってきました。

(なお野島には地域猫がおり、いわゆる猫スポットでもあります。冒頭のネコチャンにはバーベキュー場の方で会える・・・かも?)

野島公園には入場料や施設利用料などが設定されておらず、公園内の海岸では誰でも潮干狩りが楽しめます。最もGW中は人がごった返してそれどころではないので、しっかりアサリを確保したければGW前に来るのがベターです。

(GW後も全く採れないというわけではないのでごあんしんください)

ただし、野島公園におけるあさり採りには、下記写真のようにルールがいくつかあります。

①のじょれんの写真では、漁業用の網がついたものだけを指しているように見えますが、耕作用の土や砂をすくいあげるための鋤や鍬のようなタイプも『鋤簾(じょれん)』と呼ばれます。

鋤簾はマテガイ(アサリと同じく干潟付近に生息する細長い貝)堀りに欠かせないものでもあるので、②の熊手と同じようなサイズであれば問題ないと思いますが、ルールの意図する所は『乱獲禁止』ということなので、わかめと同様に節度を守って楽しみましょう。

(③の2cm以下のあさりがどれくらいかわからない時は『スマホ定規』などで測ってみて下さい)

To Do リスト

0.潮干狩り用の装備を整える。
1.野島海岸でアサリを拾う。
2.拾ったアサリを水道水で洗い流す。
3.塩分3%の塩水にアサリを漬け、常温で一晩置く。
4.アサリの貝殻をこすり合わせるようにして、よく洗う。
5.キッチンペーパーなどで水気をよく拭き取り、加熱して食す。

装備に関して、基本的に以下のものは最低限用意した方がいいと思います。

・長靴orサンダル

・軍手orゴム手袋

・100均の洗濯ネット

・ビニール袋

由比ヶ浜と異なり、トイレや足の洗い場まで草地やアスファルトを通る必要があるので、裸足だとそこそこ痛いです。

また熊手でざっくり土を掻き出した後、いざアサリを掘り出す際に手の爪に多少負担がかかるので、回数を重ねるとそれなりにダメージが蓄積されていきます。

(筆者はゴム手袋を付けていましたが、最終的には爪が割れました)

割れた貝殻や尖った石で手を切ることもあるので、素手は推奨できません。予算に余裕があれば、潮干狩り用の手袋を購入してもいいくらいです。

洗濯ネットに関しては、拾ったアサリをバケツやビニール袋に入れたまま洗おうとすると砂が残りがちです。ざっと洗った後、簡単に水抜きができるよう採用しています。

そのほか、快晴で日差しが強めなら帽子、自宅まで距離があるならクーラーボックス、足腰への負担を軽減したければ携帯椅子など、『あった方がいいもの』は色々あります。

が、あんまり欲張ると荷物管理が大変なので、単独で行くなら手元に置いておける、あるいは紛失や盗難が起きても許容できる範囲内の持ち物で固めた方がいいかと思われます。

準備が整ったら、いざ出発です!




「アサリをあっさり取る」ってフレーズが瞬時に頭に浮かんでしまい複雑な気持ちになった第一の見出し

京浜急行線『金沢八景駅』から横浜シーサイドラインに乗り換え、『野島海岸』駅から野島公園に向かいます。

アサリはワカメと違って拾い放題というわけにはいかず、まずアサリがいそうな場所を探さなければいけません。

アサリは石混じりの干潟に生息している傾向があるとのことなので、自然海浜の左端、砂浜の切れ目あたりを狙っていきます。

なお今回もおなじみ『miwa』さんと『謎の先輩アサリストXさん』の冷静で的確な判断力の元、アサリスポットを探しています。

一般的にアサリは沖に行けば行くほど大きくなる傾向がありますが、本格的に沖で掘るなら海水浴の準備か、ウェットスーツに準ずる装備が必要なので、素人は素直に干潟を狙います。

アサリは群生していることが多く、ひとつ見つかればその周辺に固まっている可能性が高いです。写真のように貝殻がたくさん転がっているような場所は、取り尽くされている場合もありますが、付近を掘ってみると・・・。

もろたで工藤!


スポットが見つかれば後は無心で掘り掘りするだけです。というか掘っても掘っても周辺を探せばいくらでも出てくるので、むしろ作業感を打ち消す工夫が必要かもしれません。

ある程度数が確保できたら選別していきます。何の変哲もないアサリに見えますが・・・。

こんなふうに隙間があったり、貝殻に穴が空いている場合は基本的にNGです。

とはいえアサリを拾うたびに1個1個確認していたら効率が悪いので、明らかに怪しいもの以外はどんどん網にしまっちゃいましょう。もし複数人で来れるならアサリを採る人と選別する人で分担すれば捗ると思います。

(最もガチでやる人は単独でも問題ないよう、分別用の道具も準備しているかもですが)

今回はあっさり殻が開きましたが、中には砂や泥がぎっしり詰まっているのにぴったり閉じていて、調理の段階でそれらを撒き散らす恐るべき個体、通称『バクダン』が潜んでいる場合があります。

残念ながらバクダンを100%見分ける方法はありませんが、生きているアサリはちょっとやそっとした衝撃では貝が開きません。壁にぶつける・15cmくらいの高さから落とすなど、衝撃を与えることでバクダンかどうかある程度見分けられます。

そのほか音や重さで判別する方法もあるようですが、こればかりは経験を重ねる必要があるので、慣れないうちは料理全体に被害が及ばないよう、アサリだけを別で加熱する料理に使うのが良いでしょう。

(もしバクダンが潜んでいても中身を濾せば煮汁は残せるので)




「あっさり味のお弁当」と脊髄反射で思い付いたものの、しっかり味だったことを思い出した第二の見出し


拾ったアサリは体内に砂を溜め込んでいるのですぐには食べられず、『砂抜き』をしないといけません。

現地で砂抜きすることは理論上可能ですが、どんなに早くても2時間くらいはかかるらしいので、実食代わりに謎の先輩アサリストXさん持参の『あさりとたけのこの炊き込みごはん』を頂きました。

アサリのダシが染み込んでおり、いい味が出ています。

その他海外で話題にもなった『イタドリ』を使った炒めものと、miwaさんお手製のヴィーガンサラダも登場。

ははーん、これサバイバルじゃなくてピクニックだな?

ならば、レアチーズケーキを食らえぃ!

(なおmiwaさんが持参してくれたマーマーレードと組み合わせることで新しい味わいが生まれました)

さすがに趣旨がわからなくなりそうだったので、昼食後は狩猟採集に戻ります。

アサリを取りやすい干潟はエサとなるプランクトンも少なめで、アサリ自身も身を守るために貝殻が厚くなり、小ぶりになる傾向があります。

そのため、大きなアサリを取りたければ栄養豊富で環境の変化が少ない場所で取るのがいい、とのことなので午後は少し沖に出てみました。

結果としてそこまで釣果は伸びませんでしたが、沖の方がアサリの砂や泥が落としやすく、何より沖は人が少なめなので、ゆったり掘れるのがぼっち気質の人間にはありがたいところです。

(写真左側が筆者の網、右側がmiwaさんの網。ちなみにmiwaさんの網に乗っかっている細長い棒のようなものがじょれんを使って採るマテガイです)

ただ、スマホや小銭入れをしまっておく防水ポーチなどがないとあまり深くかがめず、アサリを掘っている間に、網がどこにあるかわからなくなってしまいそうだったので、ある程度効率化のための道具が必要だなと感じました。

干潟で採っていたmiwaさんの方が明らかに釣果が良いので、装備に合わせた戦術で潮干狩りに臨むことをオススメします。

なお、アサリを持ち帰る前に、公園施設の水道水で軽く洗っておきましょう。

これは雑菌を落とすだけでなく、アサリが真水を嫌がって口を固く閉じるので、ある程度衝撃や温度変化に強くなるからです。

また、気温が高かったり自宅が遠かったりする場合はクーラーボックスに入れるべきですが、アサリに馴染みそうだからと海水を一緒に入れてしまうと、

・アサリが貝を開いてしまうので、運搬中の衝撃に弱くなる

・水が循環していないので、アサリが砂を吐くほど水質が劣化する

・海水の雑菌が繁殖してアサリに付着する

と、デメリットの方が大きいので、多少鮮度が落ちたとしても、衛生面に力を入れておいたほうが賢明です。




「あのとんかつ屋のみそ汁も美味かったな」と一瞬思ったが、あれはしじみのみそ汁だったことに気付いた第三の見出し


さて、持ち帰ったアサリは一旦ザルに入れて、軽くこすり合わせるように水道水で再度洗い流しましょう。アサリが弱ってしまうリスクはありますが、バクダンの除去や持ち帰るまでに繁殖した雑菌を落とすことで食中毒の予防にも繋がります。

(なお写真では思いっきりキッチンで作業していますが、飛び散った水が食器や調理器具に付着して雑菌が繁殖する恐れがあるので、なるべく風呂場などで作業を行ってください)

次に砂抜き用の塩水を作ります。塩分約3%(500mlの水に対して塩15g)が目安、濃すぎても薄すぎてもイマイチ砂を吐いてくれないので、ちゃんと計量しましょう。

なおアサリを採った場所の海水を使うとよく砂を吐くそうですが、先述の通り海水には雑菌が多く含まれる上に、海と違って容器内は水が循環しません。長時間海水に漬けたままだと水質がどんどん劣化してしまうため、スピーディな処理をする必要があります。

あさりの量が多ければ多いほど海水も沢山持ち帰らなければならないので、慣れないうちは塩水で十分だと思います。

塩水を軽くかき混ぜたら、ザルごとアサリを入れます。水深はアサリが完全に浸からない程度に抑え、なるべくアサリが重ならないようにしましょう。

広めの水切りかごなどがあればそちらを使用した方がいいと思いますが、アサリの量が少なければザルとボウルで十分です。

最後に新聞紙やアルミホイルを被せて、暗くしてやれば準備完了です。

魚介類なので冷蔵庫に入れたくなりますが、水温が低すぎると砂を吐いてくれないので、常温で一晩置いておきましょう。気温が20度くらいまでなら問題ありません。

一晩置いたアサリがこちらです。中身がでろーんと伸びて元気がなさそうですが、真水で洗うとまた殻が閉じます。

(洗っても殻が閉じていない個体がいたら念のため取り除いておきましょう)

今度はしっかり洗って大丈夫なので、殻をこすり合わせるようにガシガシ洗って、吐き出した砂やぬめりを落としてから料理に使いましょう。

なお、貝の中に塩分が浸透している関係上、そのまますぐ料理に使う場合、塩分量を調節する必要があります。余分な塩気を取りたい場合は、塩水だけ捨ててもう1時間ほど新聞を被せて放置しておきましょう。

ちなみに一晩で砂が↑これくらい出たので砂抜きはめんどくさがらずちゃんとやりましょう。さもないとめっちゃじゃりじゃりしたアサリを食べる羽目になりますぞ!

砂抜きしたアサリは後日『春キャベツとアサリのボンゴレパスタ』で美味しく頂きました。

レシピはこちら

なお、アサリも小分けにして冷凍することで賞味期限を延ばすこと自体は出来ますが、長く見積もっても1ヶ月が限度で、3ヶ月もすると味がかなり劣化するそうです。

(真空パック器や温度変化が少ない業務用の冷凍庫などを使えば長期間の保存も可能)

貝毒や腸炎ビブリオなど食中毒の要因となるものが複数あるので、ワカメ同様ヤバそうだと思ったら潔く諦めましょう。

砂抜きをする関係上、常温で置いておく時間もそこそこ長いため、あまり溜め込まず、旬のものだと割り切った方が美味しく頂けると思います。




君もアサリストになろう

春は行楽シーズンということもあり、さすがに落ち着いた雰囲気はありませんが、ほとんど暑さ対策なしでレジャーを楽しめるのが春の海のいいところですね。

アサリは秋にも旬を迎えるので、水に浸かる前提なら秋もアサリが採れるそうです。

美味しいアサリを手に入れたくなったら、ぜひ野島海岸にお越しください。

ひょっとしたら海から首だけ出した筆者がいるかもしれません・・・フフフ。