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金の板 「非有識者だけの考察会」

 こんにちは。美術家の伊山桂です。
 今回は2022年10月10日に岩手県盛岡市、アートショップ彩画堂で行われた話し合い、『激論!金の板 非有識者だけの考察会』にて発見したことをまとめていきたいと思います。
 この会は2022年12月14日から同会場にて行われるアンデパンダン展「金の板展」の企画として行われました。

クリスマス 金の板展案内

 あいにくの雨に見舞われた盛岡でしたが、当日は開店直後から参加者の方が入店してくださり、多くの見解や関わり方を一緒に考えてくださいました。
 ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。 

 会場では実験用の金の板を3枚用意いたしまして、参加者は油やアクリル、彫刻刀、釘など、実際に塗る、彫る、打つことができました。
 いきなり手をつけるには少し気が引けるこの金の板ですが、今回の会が幾分そうした怖さを払拭する機会になればと思っておりました。
 さて、それでは実際に様々な画材で実験してみた結果を見てみましょう。

研究結果メモ

金の板を彫ってみれば…

朝一で来てくれた高校生の方の「釘を打ちたい」の一言から始まった今回。
打ってみるとしっかりと打てました。

釘を打てて、彫刻刀も使える金の板

 その後、打った釘の影が視点を動かすことによってパラパラと動くことが発覚。これは面白い。立体作品を乗せるとこうして影を楽しむなんてことが出来るのかもしれません。

お次に彫刻刀で彫ってみることに。
すると何と、金の下から現れたのは石膏地。

 最近わかった情報によると、この金の板はイタリア製であるとのこと。調べてみると石膏地を絵画制作に使用してきた国はイタリアとのことで、さらにグッと説の説得力が増してまいりました。(よくよく考えてみると金の板には刻印がされてあるので石膏が使用されていたことは考えればわかってたかも…)
 彫ると白のワンポイント、もしくはラインを作ることができそうです。

金に金。補修の金!

 彫刻刀で彫ったり、思わぬ部分が欠けてしまったり、少し金の板の汚れが目立つ、なんてことがあるかもしれません。そんな時は金色の絵具を試してみましょう。
 金の板の金色というのは金箔ではなく金泥であるようですが、昨日試した金色絵具の中には限りなく色が近いものもありましたのでご紹介します。
 ・アキーラ 金
 ・リキテックス  アンティークゴールド
 ・ゴールドフィンガー(金額縁用の補修絵具)

黒い線の下あたりがアキーラの金色

 この3種類を試験してみましたが、この中で一番金の板と近い色はアキーラの金色でした。
 リキテックス  アンティークゴールドもとても近い色でしたが、少しくすみを感じる質感になりました。
 そしてどれもそうなのですが、塗り方や種類の違いから、やはり角度や光が強く当たると異質感を感じるのが欠点やもしれません。(逆に変な角度からしか見えない絵が描けるのかも…hehe)
  
 最後に、ゴールドフィンガーですが、これも色が大変近いです。ただしこちらはあまりお店に置いていないかもしれないです。(注文することで購入は可能です)

油、アクリル、膠、そしてアルコール,etc

 お決まりの画材。油絵具、アクリル絵具、膠絵具、そしてボンド、それぞれがしっかりと乗りました。経年劣化は推し量れませんが乾けばガッチリと定着し擦っても落ちないほどには頑丈に乗るようです。
 ただしアクリルガッシュは、水に濡らした指や布で擦ると溶けてしまうようです。バーニッシュという定着剤を使うと安定するかもしれません。
 
 そして衝撃、コピック(アルコール)は落ちません。落ちないどころか油性ペンをも溶かすようです。擦っても滲まず伸びずでした。もちろん、色によっては見えづらい色がありますが使うことが出来るます。

油絵具と水性クレヨンの中を走る牛(接写)


 
 また、油性クレヨンも紙に書くときと同様の可愛らしい線を引くことができました。擦って伸ばそうと思えば伸ばせる感じです。
 水に溶けるクレヨンも同様、しっかりと乗りました。やはり水には溶けますが、うまく使えば溶かしたいところは水で抜くことが出来るため、これもまた使いようだと思われます。
 また、ハードパステルや色鉛筆ですが、粉が定着するというよりは砕けて溝に残るようでそれ自体では定着しません。フェキサチーフを使うことで膜を作り固定させることができそうです。

 そのほか、漫画インク、卒塔婆用の墨汁なども問題なく定着しました。
 墨汁ですが、種類や製造によって膠の濃薄が違い一概に言えませんが、今回私が使用した墨汁は弾いてしまいました。濃ければ乗るのかもしれません。


賑わう雨の盛岡の彩画堂、午前11時

 今回はこのような結果が出ました。改めまして、一緒に色々と実験してくださった皆様に感謝いたします。ありがとうございました。
 まだまだ色々な画材や技法があります。そのどれもが使用可能なのか、併用可能なのか実験を各々でやってみていただけると嬉しいです。
 12月の展示の際に、それぞれがどのようにこの金の板と向き合ったのか、作品を見ながら考えられることを楽しみにしております。まだまだ金の板もございます。金の板展には県内はもちろん、県外からもご参加いただけます。ぜひご連絡ください。
 会に来られた方は薄々感じていたとは思いますが、このアンデパンダン展、想像以上に自由です。ぜひゆるくご参加ください。どうぞよろしくお願いします。


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