先手必勝

その実とても臆病なのだ。

彼はそう締めくくった。
いや、もしかしたらそうではなかったのかもしれない。けれど、その印象だけが苦々しい味をわたしの舌先に残していった。

声にならない声がいくつもいくつも反響して、ついにはハウリングを引きおこす。

なんだそれは
そんな風に言われたら、もうこちらからは何も言えないじゃないか
そうであるのは自分だけとでも言うのか
だから特別なケアをしろとでも言っているのか

軽い耳鳴りを聞きながら、ようやく絞り出した生返事が所在なさげに消えていくのをただ見ていた。


#ショート
#印象
#小説
#かもしれない
#だったらいいな

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?