2021年の推しコンテンツを好き勝手に語る⑤『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』
エヴァほどではないものの、『Fate』というコンテンツとも長い付き合いになる。
自分が出会ったのはたしか、DEEN版のアニメが放送される少し前だから……って考えると、2005年くらいになるのかしら。17年前ってマジ……?(震え声)
当時は夢中になって徹夜で読みふけった、『Fate/stay night』の3つのルート。自然と関連タイトルも追いかけるようになり、当然『Fate/Grand Order』もプレイすることになる。リリース直後はアレがコレでソレな感じで、途中で離脱しそうになりつつも、それでもゆるっとメインシナリオを追いかけて、第六&第七特異点で完全に沼った。
そうして迎えた、2016年末。
終局特異点のレイド戦とSNSでの盛り上がり、そしてその結末は、ある意味ではスマホアプリならではの特別な「ゲーム体験」として、今も自分のなかで強く記憶に残っている。
2021年は『FGO』と疎遠になる――かと思いきや
――とはいえとはいえ、でございます。さすがに6年も続いているゲームともなれば、少しは気持ちも離れてくるもの。メインシナリオが更新されるたびに「やっぱりFGOは最高だな〜〜〜!」などと熱量を補充されつつも、今年はちょいと疎かになっていたことは否めない。
ここまでに取り上げてきた魅力的なコンテンツの存在もあったし、時間もなかった。それに、『FGO』のメインストーリーを読むには時間が要る。パワーが要る。夜遅くまで没頭して読むことになるのが目に見えている――というか、せっかく読むならば、没頭したい。作品世界に浸りたい。それゆえになかなか手を付けることができなかった結果、第2部6章は12月中旬まで読み終えることができていなかった。
それだけではなく、季節イベントですら満足に周回ができないくらいに『FGO』から離れてしまっていた1年間。2021年はそんな年になる――かと思いきや、最後の最後で引き戻された。
第2部6章『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』。
「文庫本4冊分」というトンデモボリュームのテキストに「バカなの!?」とツッコみつつ、あっという間にその世界観に惹き込まれ、時間も忘れて連日早朝まで読みふけることになった。途中でダレることもない刺激的な道行きで、妖精圏の歴史を一気に駆け抜けた、本当に楽しい旅だった。
妖精圏の魅力的なキャラクターたちは言うに及ばず、ひとつの「歴史」としての妖精歴の強度、2人のクリプターが迎えた結末、妖精騎士たちの願いと最期、戴冠式に至るまでの物語構成と怒涛の展開――などなど、切り口はいくらでもあるし、考えるほどにあの旅路の思い出が蘇ってくる。
どうしようもなく特別で、どうしようもなく普通の女の子
そんななかで、あえてひとつだけスポットを当てるとしたら……やっぱり何と言っても、「アルトリア・キャスター」という女の子の存在を取り上げずにはいられない。
この妖精圏における「物語の主人公」であり、世界から選ばれた特別な存在。
そして、『Fate』という作品の代名詞的存在である騎士王、アルトリア・ペンドラゴンの別世界での姿。本質的には同一存在でありながら、ほかの「アルトリア」たちとはどこか異なるキャラクター。
年相応に悩み葛藤することもある、等身大の女の子――と見せかけて、その出自と背負わされたものの大きさゆえに、卑屈で、ネガティブで、とんでもなく達観した精神性を持つ、どうしようもなく特別で、どうしようもなく普通の女の子。
当初こそ「元気っ娘なアルトリア……いい……(ほっこり)」などとニコニコしていた自分も、彼女のモノローグが増えれば増えるほど「ふぇぇ……もうやめたげてよぉ……」などと読むのが辛くなっていったことを覚えている。重いよ……重すぎるよ……この重さ……まるで型月作品のようだ……。
第2部6章は、そんなアルトリア・キャスターの物語。と同時に、「往年の型月ファンにとっては、『Fate/stay night』を追体験するような展開だったのでは……?」なんて、ふと考えてしまった。
クー・フーリンや千子村正の存在がどうの、という話ではなくて、「“星”を追い続ける物語」としての共通性。“星”とは、『stay night』においてはセイバーのことであり、この物語においてはアルトリア・キャスターが幻視した騎士王の姿であり――そしてもちろん、終盤の回想に繰り返し登場する、彼女を照らし続けてきた“星”のことだ。
アルトリアという“星”を目指す物語だった、『stay night』のセイバールート。対する『アヴァロン・ル・フェ』では、主人公であるアルトリアが、ひとつの“星”を目指す。
それが何なのかもわからないのに。心底ではすべて投げ出したいと思っているのに。それでも手を伸ばさずにはいられない、ひとつの“星”。遥か彼方の輝きを追い続ける彼女の姿は、衛宮士郎のようでもあり、岸波白野のようでもあり、藤丸立香のようでもあった。誰よりも後ろ向きな女の子が、絶え間ない嵐の中でもがき苦しみながらも、“星”を見据えて歩んできた、巡礼の旅。
そんな物語を読まされて、そりゃあ感極まらないわけがないじゃないか。
ずば抜けてぶっ刺さったのが、この部分。
というか、この2行だけで泣いた。
感動的な音楽とか、声優さんの真に迫る演技とか、そういうものは一切なしに、このテキストだけで、ボロッボロに泣くことになった。もちろん、それまでの積み重ねや演出の力もあっただろうけれど、それ以上に、このテキストにやられた。なんか知らんが涙が止まらなかった。ノベルゲーって、やっぱりすごい。
その後、終盤の■■■■■■■■の主張にスッ...と真顔にさせられつつも*5、それも含めて、2021年を締めくくる最高の「物語」だったと断言できる。戴冠式の配信が8月なので、本来は夏休み中に読むべきだったのだろうけれど……まあ結果オーライというか、季節の節目となるタイミングで読めたのはよかったのかもしれない。読み終わったあとに『躍動』のフルを聴いて、もっかい泣いた。
終局特異点を含め、第1部のストーリーだけでもあれだけすばらしい体験をユーザーに提供しておきながら、今なお負けず劣らない最高の物語を提供してくれる『FGO』というコンテンツに、改めて感謝。課金します。福袋ガチャ、回します。回しました。ライネスヤッターーー!!!
連載「2021年の推しコンテンツを好き勝手に語る」
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