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2021年の推しコンテンツを好き勝手に語る①『PUI PUI モルカー』『オッドタクシー』『ウマ娘プリティーダービー』

「年末だし、今年ハマった作品を振り返ろーっと」などと、パソコンに向かって書き始めたのは2021年末のこと。印象に残っている作品をちゃちゃっとまとめて、ポイッとブログに投稿してしまうつもりが……気づけば、2022年に入っていた。

こうなるともう何を書いても今更感があるので、「文章量は気にせず書きたいことを書こう!」と思い、三が日から夜な夜なカタカタとキーボードを叩き続る事態に。その結果、結構なボリュームの文章になってしまったため、4分割して連載記事っぽい形で投稿することにしました。

本記事は、その第1回となります。


2021年を“駆け抜けた”3つの作品

時は遡って、2020年末のこと。

やがて訪れる「2021年」に何を楽しみにしていたか――と振り返ってみると、まず何と言っても『シン・エヴァンゲリオン劇場版』だったことは間違いない。

『Q』から8年以上を経て、ついに完結を迎えるエヴァンゲリオン。いったいどうやって「さようなら」するのかと、もうずっとワクワクしながら待っていた――のだけれど。

いざ2021年に入り、映画館の大スクリーンに映し出されたエヴァインフィニティの群れを目の当たりにして「なんぞこれー!?」と口をぽかんと開ける2ヶ月前。年明け間もない1月に、まるまるふわふわの群れの渋滞に巻き込まれ、「なんぞこれー!?」と叫ぶことになった。

そう、『PUI PUI モルカー』である。


PUI PUI モルカー

PUI PUI モルカー【公式】より

「2021年の年明けには、モルモットが車になった世界を描いたストップモーションアニメがバズるよ!」などと、いったいどこの誰が想像できただろうか。

しかもそれが、「一部のネット民のノリによる局所的なバズで終わらず、あっという間に再放送&劇場上映が決まる」ほど人気が出るとは、最初期の盛り上がりっぷりを見ていた人でもそうそう予想はできなかったんじゃないかと思う。僕も考えてもいなかった。1月だけで2回も“モル語り”しちゃったけど。

さすがに1年も経てば熱も冷めようものだけれど、今もTwitterのタイムラインにたびたびファンアート&マンガが流れてくると、思わずタップして見てしまう。そのくらいには好き。モルカーのやさしいせかいが、今なお続いていることが嬉しい。「人間は愚か」と言われつつも、登場する人間どもにも個性があり、結構いろいろな描き方がされていて楽しいのよね。

こうして振り返ってみると、「モルモット」を主人公にした作品は意外と珍しい印象もあった。でも考えてみれば、数年前には『けものフレンズ』の流行もあったわけで。「ネット発の動物アニメ」という括りで考えれば、割とバズりやすいジャンル――というか、モチーフなのかもしれない。

とはいえ、そうそう短期間で「動物アニメ」が何本も話題になることはないだろうし、自分がハマることはないでしょ……なーんて思ってたら、そんなことはなかったぜ!

「モルモット+車」の渋滞が解消されたと思ったら、今度は「セイウチ+タクシー」がやってきた。なんてこった。


オッドタクシー

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000810.000031071.htmlより

『モルカー』ほどにタイムラインでわっしょいわっしょいと祭りになっていた印象はないものの、じわりじわりと2021年を通して人気を拡大していた、『オッドタクシー』

かくいう自分も後から追いかけた人間であり、一気見したのは放送終了後の7月のことだった。

同じタイミングで見ていた人がTwitterでは散見されていたほか、年末になっても「すっげーハマった」という声がちらほらと流れていた。自分の観測範囲の話ではあるけれど、普段はあまりアニメを見ない層や、40代以上の人にも届いていた印象がある。そういう意味では、『モルカー』以上に幅広い層に受け入れられていたのかもしれない。

『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』特報 - YouTubeより

最初の3話くらいは、「この雰囲気と会話のテンポ感、ええなあー」などとゆるゆると楽しんでいた自分。「『We Are The World』のブルース・スプリングスティーン」や、白川さんのカポエラのくだりで笑っていた覚えがある。そのまま、まったり1話ずつ追うつもりだった……のだけれど。

案の定というかなんというか、4話「田中革命」で完全にツボった。「やりやがったなァ!(好き)」と内心で喝采を送り、完全にこの作品の世界に取り込まれていくことになる。

【#オッドタクシー】第4話予告ロングver. - YouTubeより

スクールカースト。ソシャゲの射幸性。少年時代の呪い。それなりに自分を客観視できていても逃れられない執着心。オタクの言う「沼」よりも酷く暗鬱とした底なしの空間へとズブズブと沈んでいく様子が、1話を通してがっつりと描かれる。

そのエピソードと感情の動きが、あまりにも現実的に――本当にそんなことがリアルであるかどうかはさておき、「あってもおかしくない」という説得力をもって――描写される。それに、声優さん(CV.斉藤壮馬さん)の演技がこれまたすごいんだ。淡々としたモノローグなのに、狂気に染まっていく様子がじわじわと伝わってくる。つらい。すごみがある。

この田中に限った話ではなく、本作では各キャラクターの背景や心性が、驚くほどの“説得力”を伴って語られている。群像劇であるにもかかわらず――いや、「群像劇だから」かもしれない。立ち位置としては悪役にいるキャラクターたちにも、その行動が褒められたものではないとしても、少なからず共感してしまっている自分がいた。

『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』特報 - YouTubeより

最近見た映像作品のなかでは、トップレベルで「ええええええええええ!?」と叫びたくなったラストを経て、ついに決まった映画化。めでたい。やったぜ。でも4月公開……ということは、もう結構前から裏で進行してた……ってコト!?

“あのラスト”の先を知れると聞いて、こみ上げてきたのは期待と不安。いや、割合としては後者のほうが大きいかも。こんなにも「怖いもの見たさ」で劇場版を見に行く機会もないと思うので、もしまだ見ていない人がいたらぜひチェックしてほしい。Amazonプライムで見られるよ!

それと、オフィシャルブックはいいぞ。
ヤノの生い立ちでグワーーーーッ!!!ってなれるぞ。


ウマ娘プリティーダービー

モルモットにセイウチと来て……2021年と言えば、「ウマ娘」も外せない。世間的な流行はもちろん、個人的にも激ハマりしたコンテンツでございました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000495.000005593.htmlより

アニメ第2期の放送開始が1月、アプリ版のリリースが2月下旬なので、時期としては『モルカー』でぷいぷいしていたのと同じタイミング。そういえばウマ娘の影響で、4月の皐月賞で久々に馬券を買ったんだっけ。ありがとう、エフフォーリア。「中山の直線」がトレンド入りしてたよね。

ご存じの方はご存知のとおり、アニメ第2期はトウカイテイオーが主人公。1期の時点で彼女の存在が気になっており、天真爛漫ボクっ娘好きの拙者としては、そりゃもう見ないという選択肢はないわけです。そして第1話で、「やりやがったなァ!」となるのです。

いや。だって、なんすかアレ! めちゃくちゃズルいじゃん! 最高のレース展開で魅せて、ウィニングライブでカッコいいステージを見せたかと思いきや、足元のテイオーステップのカットから、トレーナー&シンボリルドルフの表情で違和感を演出。そのまま客席からステージ上へ一気にズームし、その先のスクリーンに大きく映し出されたのは痛みを耐えるような笑顔のテイオー。そして次の瞬間、間髪を入れず黒背景に白字のサブタイトル「第1話 トウカイテイオー」をどーん! と表示させると同時に、winning the soulの「走れ」の歌詞とサビでスタッフロールに突入。そのあまりにも完璧すぎる導入で「やりやがったなァ!!」っすよ。おのれスタッフ!!!

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 第1話「トウカイテイオー」 - ニコニコ動画より

そんなノリでアニメ各話について語り始めたら長くなりそうなので割愛しますが、「ライスシャワーとツインターボで泣いた」とだけ書いておきます。最終回は言わずもがな。

他方で『ウマ娘』といえば、アプリ版がリリースされたのも2021年のビッグニュース。

もともとは2018年冬にリリース予定だったとのことなので、実に3年越し。「なかなかリリースされなかったウマ娘が!? ついに!?」「でも肝心の内容はどうなん?」などと、驚きや懐疑的な声も2月にはまだ多かったと記憶しているけれど……いざリリースされたら、もうあっという間でしたよね。ハマるのは。

リリースから1年が経とうという今、そのゲーム性やシステムやキャラクターの魅力についてどうこう書くのは今更な気もする今日この頃。なのでここでは、「ゲームとしての楽しさ」ではなく、「物語と演出の魅力」の話をしようと思います。――そう、アプリ版『ウマ娘』もまた、アニメ版に負けず劣らず「物語」としての強度がめちゃくちゃ強いのだ。

たとえば、メインストーリーの2章「小さながんばり屋」。

アニメ2期でもスポットが当てられていた、ライスシャワーのエピソード。「アプリ版のライスはちょっと……」という声も少なからずあるようだけれど、個人的にはこの2章がお気に入り。なんならアニメ版よりも泣いたかもしれない。最後のライブで。おんがくのちからはつよい。

もちろんアニメはアニメで好きなのだけれど、「スマホアプリでそこまでやる!?」というインパクトが大きかった。テキストと立ち絵でどばーっと描くだけでもいいはずなのに、会話ひとつとっても3Dモデルのキャラクターがなんとまあ細やかに動くこと! 特にライスのエピソードは、声優さんの演技も相まって悲壮感と孤独感がより強く印象付けられており、胸が締め付けられるような思いで読むことになった。

あともうひとつ、12月に配信されたばかりの5章『scenery』については、どうしても取り上げておきたい。

これまでのメインストーリーでもいろいろな演出や表現があったけれど、今回の演出とストーリー展開は飛び抜けてすごかったしお気に入り。それこそ「影」の演出なんかは、「やりやがったなァ!」の一言。

というのも、『ウマ娘』というコンテンツにおいて、“史実”の存在はやはり外せない。

この作品の世界観を支える屋台骨であり、現在に至るまで長年をかけて積み上げられてきた、文字どおりの“歴史”。基本的にはその史実を忠実に再現しつつも、キャラクター性とその関係性、物語展開においてアレンジを加えたのが、『ウマ娘』というコンテンツ――とというのが、ひとつの見方になるんじゃないかしら。

そんな“史実”の描き方が、この5章は、とにかくもうすごかった。

“景色”が瞳に映る演出いいよね……。

ウマ娘世界の住人からすれば唐突にも感じられそうな、「不安」に対する謎の説得力。その暗雲が立ち込めていくまでの丁寧な描写と演出。アニメ第1期とはまた違った「サイレンススズカの“秋”」の描かれ方と、その場面に至るまでの過程の積み重ね。特に各所に挿入されているムービーの力の入れようはすさまじく、制作陣の尋常ならざる思いが込められていることをひしひしと感じた。

テイオー好きであると同時にスズカ好きでもあり、なんならアプリ版で最初にお迎えした☆3ウマ娘がスズカということもあって、もともと彼女への思い入れが強かった自分。そんなところにあんなシナリオをぶちこまれたら、そりゃもう感極まるってもんですよ。ありがとうウマ娘。ありがとうCygames。課金します。しました。

本当はこの勢いで『シンデレラグレイ』の話もしたかったのだけれど、さすがに長くなるので泣く泣く省略します。同じくウマ娘好きのVTuber・夕影ミコトくんとPodcastで喋っているので、よかったら聞いてくださいな。


連載「2021年の推しコンテンツを好き勝手に語る」

  1. この記事

  2. 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

  3. 『ルックバック』

  4. 『ボクのあしあと キミのゆくさき』

  5. 『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』

  6. 『ふたりでみるホロライブ』『SANRIO Virtual Fes』

  7. 『PROJECT: SUMMER FLARE』

元記事:https://blog.gururimichi.com/entry/review/best-contents-2021-1

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