第1回 「請求が認められるか」
請求が認められるか否かは、請求権の存否によって判断される。
「請求権が認められる」と言うときと、「請求が認められる」と言うときでは、「認められる」の意味内容が異なることに注意してほしい。
第2回 請求権の内容
請求権=債権・物権的請求権
第3回 請求権の存否の判断方法
請求権の存否は、以下の手順で判断する。
権利の発生の有無
↓
権利の消滅の有無
↓
権利行使の阻止の有無
請求権の存否を判断するにあたっては、権利は変動しうるため、判断の「基準時」が重要となる。
例えば、
4/1の時点で権利が発生した(=同時点では権利が存在していた)と認められるとしても、
5/1の時点で権利が消滅したとすれば、同時点以降、権利は存在しないこととなるから、
権利の存否判断の基準時が6/1であるとすれば、権利は不存在であると判断されることになる。
第4回 要件事実について
権利の発生・消滅・阻止(とその障害)を「法律効果」として、その条件、すなわち「法律要件」を示したのが民法である。
このような「権利変動」を軸とした民法の理解を「要件事実」という。
民事実務の学習が進んでいる人は、「要件事実」と聞くと「請求原因・抗弁・再抗弁…」の分類を連想するだろう。しかし、これは要件事実的な解釈の結果に過ぎない。
例えば、代金支払請求訴訟において、「弁済期の合意」が抗弁とされ、「弁済期の到来」が再抗弁とされるのは、
実体法上、「弁済期の合意」が権利阻止原因事実であり、「弁済期の到来」が権利阻止障害原因事実であると解釈される結果である。
すなわち、債権の阻止は、債務者(給付訴訟ならば被告)に有利な法律効果であり、かつ、債権の発生(=請求原因)を前提とするものであるから、「弁済期の合意」が抗弁事実になるのであるし、
債権の阻止障害は、債権者(給付訴訟ならば原告)に有利な法律効果であり、かつ、権利の阻止(=抗弁)を前提とするものであるから、「弁済期の到来」が再抗弁事実となるのである。
第5回 裁判官による権利の認識過程
第1回〜第4回までの内容は、裁判官の視点から説明することもできる。
すなわち、民事訴訟において、裁判官は、訴訟物たる権利の存否判断を行う。しかし、権利は抽象的観念的存在であるため、直接認識することができない。
そこで、裁判官は、証拠から事実を認定し、事実から権利変動を認識する。このようにして、裁判官は、権利変動の結果状態である権利の存否を認識することができるのである。
このような裁判官の権利認識過程を理解することは、特に既判力の作用を理解する上で重要となる。