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インドから来たルチャリブレDUKE 390 西の覆面力士ZX-4RR 2024年バイク悩み高段

写真は「セメント」

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2024/03/16 初稿
2024/04/11 写真追加
2024/04/12 全面刷新
2024/04/14 追記修正
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 苛立ちが重なる度に私はバイク屋に足を運び、ずらっと並ぶ数多の自動二輪車を眺め、可能であれば跨ってきた。どれもこれも一癖あり、それ故魅力的で、そうした物と接することで再び私は何かを創り出すことを続けられた。
 毎年毎年巻き起こる私の中でのバイクブームだが、それは打ち寄せる波のように来ては、冬の訪れと共に去っていくものだった。2023年春、不意に立ち寄ったバイク屋にて出会ったDuke 390は、これまでと比べ物にならない大きな波となり私を襲った。シートに跨るなり股下から物欲の泉が吹き上がり、暫くの間座面の上で震え、帰宅後はインターネットにて検索の火を吹き、千切っては検索。千切っては検索を繰り返す。それはあたかも武芸、稽古、鍛錬のようであり、サッチモがショーウィンドウに掲げられた金色のトランペットに恋焦がれるかのようでもあった。そんなある日、更なる衝撃が走る。
「こ……これは」

『Duke2024年モデル発売』とのリーク情報がネット上に飛び交い、新型が出るなばここは耐え時と、臍を噛み数ヶ月……。開発中の車両写真が掲載された。まだ世の中に出ていない物を自宅に居ながらにして目に出来るなんて「なんて便利なんだ。なんて素敵なんだ」と、発奮し、掲載された写真を目にしたのだが、高なる心は直ぐに地に付した。
 2017年にモデルチェンジされたDUKE 390は完成形といえる、優れたプロダクトデザインであった。2024年でモデルチェンジされたそれは思ってたんと違う出来上がりで「形状と配色がきわい……」というのが、私の第一印象だった。2023年のバイクブームの波高し。期待値が高かった分2024年の引き潮の戻りは、それはそれは素早いよ。
 しかし、何かが引っ掛かるのだ。私の内に何か引っ掛かるものがある。このまま無かったことにすることが惜しい。美術館などでの作品鑑賞経験からいえることだが、得てして現物の方が優れていることがままあり、実際を見てみたら良かった。ということを幾つか経験してきた。インターネット向こうに掲載された写真データと、現物の違いを見比べてみたい。一年前に抱いていたDUKEへの未練なのか、それとも新しい何かを感じとっているのか。あ、あと「新しいのが出たし、これで中古が安くなるんじゃないか」という懐事情もあり、そうした三竦みがないまぜに混ぜこぜに己が咽頭にグリップし、真意を見据えるべく私はバイク屋へ向かった。

・KTM屋 現着
 店内ずらりとオレンジ党を刺激する二輪車が並ぶ。否が応でも心はバレンシアオレンジという感がするが、しかしKTMはオーストリアのメーカーであり、目当ての新型DUKE 390はインド産。つまりインド産のバレンシアオレンジ音楽の都ウィーンということであり、言うなれば「♬」であるが、筆者はこの音符記号をどう発音するのかを存じ上げませんので、発音は読者に委ねたい。
 実は此方のお店に2024型DUKE 390を見に来たのはこれで二度目。前回は生憎出払い、目にすることは出来なかった。足を運んだ日は丁度試乗会ということで「今は屋外にあります」ということ。入店するなり店員さんに引率され、再び店舗駐車場に向かう。そこにはお天道様の下「やだ……かわいい♪」 インドからやってきたDUKE 390はサイドスタンド、片足一本立てでモデルのように斜めに佇んでいる。
「では跨りましょう。跨りましょう」 

・KTM Duke 390 2024年モデル
 色については写真写りが悪いというか、カメラ機能の問題なのか、それとも安易に画像データを弄くられた結果なのか、これまで画面越しにみてきたものは赤味が強いオレンジとは違った。
「野暮いオレンジになったんだなあ……」ゲンナリし、別色の「アトランティック・ブルー」に惹かれていたのだが、実物の「エレクトロニック・オレンジ」は適切な彩度に調整され、若い世代への訴求力ある配色にオレンジ党もにっこりの仕上がり。
「メーカーオフィシャルの写真は過大に美しく調整されるものであり、実物とは違う。それ故アンオフィシャル、素人物が現物と近しいものと判断する」というのが実物を目にする以前の私の考え方であり、なんというか専門家よりも、判りやすさが優先される現在らしいバイアスを自己に課していたと、内省したことを内緒にして欲しい。
 別色展開されている「アトランティック・ブルー」は既に売れてしまったそうで、目にすることが出来なかったことは残念だが、いや、これは良いオレンジ色ですよ。
 続いては形。リア・スイングアームの形状は400cc同クラスの中で抜きんでた仕上がり。重量を軽減すると同時に強度を保つリブ加工はユーザーの見えない部分に施し、隠すものだとされているが、そもそも本質ではない部分の裏側とは、裏側ではない。ただ目にすることが出来ないだけであり、反対側や、裏側をなんでも開闢すれば新しくなると思う安易な発想を私は肯定致しません。端的にいい表しますと「方法を目的としていない」という考えに基づきます。KTMはそれをひっくり返した上に、意匠デザインにまで昇華していることが素敵なんです。
 KTMという自動車メーカーの方針は"READY TO RACE"であり、そこに結びつける回答こそが、この会社の本質なのであろう。特徴を無為に引き出すのは、すり鉢状の「悪目立ち」に、デットコピーした他社製の段ボールを尻に引き、滑走奇声を上げのようなものではないでしょうか。一時の楽しさの後に残る侘しさ。
 ということで私はDUKE 390の燃料タンクを包むシュラウドから香り立つ悪目立ちの匂いを感知し、画面に鼻先を近づけ「クンクン」とやっては、べらぼうに早口のDUKE 390インド人オーナーの動画を鑑賞し、何を言っているのかさっぱり判らないので、その旦那の頭皮の匂いを画面越しに「クンクン」するということを繰り返していた。しかし、実物を目にし、これは杞憂であったことを知る。
 尖るシュラウドの端点が指す先に何があるかを見るべきだった。その先にはフロントタイヤがあり、タイヤホイール及びブレーキディスクがある。前モデルから排気量を25cc増し、フレームは新設計。結果、前モデルよりも重量増である。ただ重くなってしまっていては「軽くて速い」KTMの名折れであり、涙ぐましい軽量化が行われた。その矛先はバネ下クラブの「ホイールくん」と「ブレーキディスクちゃん」に凶暴な切削機械の牙が向く。結果、重量は12kg増に留まった。
☆2017年〜2023年モデル重量:153kg 2024年〜モデル重量:165kg

 ユーザーはデザイナーやアーキテクターの心情を察することはまずない。第一印象により切った張ったと判断されるものであり、であるが「本当の自分を知って欲しい」とか周囲に滅茶苦茶にスプレットな要求を出していたりもする。
「ガリガリッ」と削ったことで重量増を抑えることは出来たが、見た目というものが新たに立ち上がってくる。痩せ細ったように見えるだけでは困る。試しに前モデルのシュラウドを2024年モデルに合成してみて欲しい。スリムな車体がという印象が際立ち、それは洗いたての猫のようにも見えてくる。乾き次第良い匂いがする猫を吸引したい衝動に駆られるのは判るが、それは後にしよう。まずは変更されたブレーキディスクの形状に着目したい。その次にホイール。そこに尖り覆うシュラウドが効いてくる。細身となったフロンタイヤ周りを補い、脆弱性を回避し、尚且つデザインの特徴として成り立たせている。新型シュラウドあっての均衡であることが判る。
 開発陣が「何処を見てほしいのか」という意図を読み取らなければダイニングメッセージと化すであろう気苦労を読み込み、写真で判断していた時に蔑んだ印象は、現物が覆す。癖だと思っていた部分が輝き出し、多少の香りを歓迎する性分である私は俄然惹かれ、完成度高い前モデルから「更に一歩踏み込んだ形」に仕上げてきた結果に万々歳でございます。
☆心労をお察しし、名もなき過労し星に散っていった者が居るのであれば、ここに追悼したい。

 尚、シュラウド上面には鮫肌のような意匠が施され、これは走行時の整流効果を狙ったものだと思われる。写真に現れ難い物であり、派手さの中に確とした仕事を仕上げてくる塩梅にも好感を持つ。
 装備から見える設計思想。フロントサスペンションはSTDでコンプレッション/リバウンドの減衰調整可能なWP製モデルが奢られ、素体の良さを前モデルから向上させている。バイクが何処を軸に旋回しているかという本質に立ち戻り、コーナーリングに特化した本車両。フロントタイヤからそうした思想を感じ取ったシート上の私の頭はぐるりぐるりと超回頭していたトラックモード
 足付き性は、良い。シート高は前モデルの830mmから820mmに変更され、ほぼ誤差のような値だが、シート形状変更が効いているのか、不安感はない。重量約10kg増よりもシート高-10mmの方が私には強く影響した。

 不満があるとすれば、ハンドル周りに設られたUSBソケットにある。ナビゲーションとしてスマートフォンを利用するライダーは多いかと思うが、単気筒エンジン故、振動がスマートフォンの動作不全を起こすことがあるそうだ。因みにこれはDUKE390に限ったことではないことを強調しておきたい。シングルエンジンのジレンマ。しかし、それが乗り味であり、そして軽量化に寄与していることを忘れてはならない。
 また、エンジンの気筒数に限らずバイクは雨風直撃。夏の暑さは外気だけではない。高性能車両エンジンから発せられる熱がライダーを襲う。「真夏にストーブを抱えてようなもの」と、書き表した名も無きライダーの秀逸な形容は、如何程のものかと容易く想像させられるであろう。では冬となるなると、そのストーブは鳴りを潜め、こめかみや指先が千切れるんじゃないかと思う程に冷える。雨風気温の凶暴な牙はライダーだけではない、ハンドル周りにハングオフするスマートフォンにも襲いかかるのだ。
 ハンドル周りにUSBソケットを設えてくれたメーカーからの手ほどきはありがたいのだが、私がこのUSBソケットに賢い電話を挿す場面をあまり想像できない。あるとすれば走行中の動画撮影用のカメラだろうか。
 サプライヤーメーカーから耐振動用をうたうマウント用パーツがバイク用品店に幾つか並んでいるが、私はメーター周りにゴテゴテと別途何かを取り付け、見るものを増やしたくない。
 ハンドル周りに賢い電話をマウントする、謂わばデュアルモニターのような状態でありますが、ライダーは運転中に写真のレタッチや、動画編集を行いません。いや、しちゃダメ。運転に集中しよう。ということもあり、使用頻度が高く、頻繁に目にするようなスマートフォンを吹きっ晒しの環境に取り付けることは避けたい。
 そこで各バイクメーカーへ向け解決策を提言したい。昨今アナログメーターから液晶モニターへの置き換えが自動車業界のスタンダードと化している。半導体チップの目覚ましい機能向上と、猫も杓子も画面を見ている時代故、液晶画面の製造コストが大きく低下した。それ以前の世界でデジタルメーター表示というのは「古めかしい郷愁を帯びるSFの中に」という出来具合であり、好き者を除き概ねいたない物として取り扱われてきた。ここで懐かしい話を畳み掛けたいのだが、それは昔し昔し私が開発者時代頃、液晶画面に表示するアナログメーター画面というものに携わったことがある。頭の中にあるのは「これは新しいのか古いのか?」で、ある。
 IT化が当然とされた時代、各バイクメーカーは独自のアプリケーションを展開し、バイクとスマートフォンをBluetoothを介して接続。走行中の着信の応対や、音楽再生機能もあったりで、少し前までの不便だったあの頃はなんだったのか。で、あるが、スマートフォンとバイクの液晶画面を繋げることが出来るのならば、液晶画面に何故地図案内機能を実装しないのか?
 これは既に対応しているメーカーがある。その方法が"Turn by Turn"という、シンプル明瞭、次に曲がる先と、こまでの距離を表示するというもので、それでいいんです。いや、それがいいんです。
 主体性ある旅というのが二輪車の楽しみでもあり、事前に道路を選定し立ち寄る場所を決め、旅順を組み立てていく。だからこそ楽しい。至れり尽くせりの案内を液晶画面表示に求めていない。
 各バイクメーカーは独自のアプリケーションを無料展開しているようですが、有料化にして頂きたい。¥1000辺りの額なんかだとすごく嬉しい。開発費とメンテナンス費用の補填に回してください。サブスクリクションはご遠慮願います。
 その逆に、メーカーオプションのスマートフォンとバイクを繋げる仕組みの販売額は高すぎます。地図案内アプリケーションが幾つもあるなか、浮世離れした設定になっており、既存の地図案内の仕組みを読み込み、メーターに表示するパーツ、リミッター解除のような物に現在のユーザーが数万円単位の額を払うことを私は想像し難い。
 提案を更に具体的なものとすべく、KAWASAKI ZX-4R (2024年製)の液晶画面を例に、Tunr by Turn機能を実装するユーザーインターフェイス(UI)の案を考えてみた。
 此方の車両はメーター表示に二種類ある。一つは通常の「モード1」 もう一つはサーキット走行に特化した「モード2」
「モード1」の画面を見てみると、画面左に「燃料計」 画面右に「速度計」 画面上に「エンジン回転数」 画面下に「トリップメーター(レゲーやDUB好きな方の好むそういうものではありません)」で構成されており、「燃料計」と「速度計」の間に良い空白が存在するスゥイートスポット
 アメリカの塩湖で繰り広げられるロケットエンジン搭載、オラが単車の最高速自慢を除き、バイクの速度が4桁代に突入することは絶対ない。速度計は3桁表示出来れば十分だ。それ故、燃料計と速度計の間に右左折を示す矢印意匠は表示可能である。曲がる先までの距離については燃料計寄りに数値を表示し、速度計と離反させることで運転中の判断負担を軽減したい。
「設計した奴は画面に表示することしか考えてないだろ……」という物が世の中には結構あって、ゾッとすることがあるが、そこはメーカーブランドの威信を掛け対応して欲しい。
 ではサーキット走行を意識した「モード2」の場合、地図案内をどう表示するか?
 回転数とギアポジションを優先し表示し、ラップタイムが新たに画面に刻むバトルモードである。motogpライダーや、WSBKライダーをSNSでdisり名を上げようとするラッパーは、サーキット上の常軌を逸した世界で彼が競っていることを知る入り口にもなるこの「モード2」に、地図案内をどう表示するかの解決策が私の中にある。
「そんな走行モードで地図案内を求めるな。以上」 知らない道で飛ばそうとすることがそもそも間違いであり、サーキットで次の曲る方向を知りたいライダーには「よくそこまで生きて運転出来てきたな」と思う次第でございます。
☆ニュルブルックリンは除く。

 地図案内が無料で展開される昨今、バイクメーカーがナビシステムをフルスクラッチをすることはまず考えられない。私は液晶画面に表示するナビゲーションの敷居が低くなるほど、ユーザーの獲得に繋がっていくことを確信している。同時にメーター周り、ハンドル周りから煩わしい物が減ることは安全運転に寄与することも想像出来る。
「地図案内」単体で捉えるとコストは破綻をきたすこともあるだろうが、「自動二輪車」という製品全体で考えれば可能な案であり、バイクはバイクで完結していて欲しいという私信にも合致する。
 メーカーフラッグシップ製品や、ツアラーモデルはメーターUIの地図案内を充実化は、ユーザーの求めることと、車両が合致するはずだ。商品としての価値が増す。売れる。嬉しい。
 スポーツモデルではそれを簡略化したUIで十分だろう。ハンドル周囲からゴテゴテとしたものを取り除かれ、運転に集中出来てユーザーも嬉しい。商品の価値が増し、車両特性を戻せる。売れる。嬉しい。
 というこの私の考えにNGKのプラグを一本掛けてもいい。
 そこに参入しうるはウェラブラル端末であろう。サングラスに簡易な地図案内というのもありそうだが、繰り返しますが私はバイクはバイクで完結していて欲しい。
  私はバイクを買いたいのだ。アプリケーションがなんでも噛んでも無料というのはどうかと思う。同時に車両に結構な額を支払い、走行性能に直接関わらない物へ数万円払うつもりはない。上流工程でしか潤っていないような気がする仕組みでもある。その予算枠をアクスルスライダーや、レーシングウェアに当て、ショップも私もにこにこ顔で迎えたい。
 スマートフォンが蔓延っているのであるから、リーディング専用にGPXデータを取り扱うことで外部からの改ざんを防ぎ、同時に開発保守の負担を軽減。価格にも転化出来るはず。バイクを持っていないユーザーが、バイクメーカのアプリケーションを無料であろうともダウンロードすることは考え難い。お試し期間として14日間などは欲しいが、是非有料化と、Tunr by Turnの実装展開の足を早めて欲しい。現在の仕組みはメーカーとユーザー双方の徳になっているのか甚だ疑問である。ITに特化したコンサルの入れ知恵のように私は受け止めております。
 無料と高額の二本が並走する状態は現在らしいなとも思っています。間がねえ。間が……。
 最終奥義として、オールドスクールなライダー達に習い、どでかい地図本をタンクバックに忍ばせ走るスタイルを採用するという考えを私は持っております。
 ということで間を繋ぐ今っぽい物といえば「USBだ!」 ということでKAWASAKI ZX-4Rの採用したUSBソケット位置についてを取り上げたい。
 その場所は秘密のシート下。スマートフォンを充電したいと思えば、シートを開闢し、ミイラ取りからの盗掘を防ぐが如く、深い座面の下、その中にあるUSBソケットに挿す必要があるのだが、ZX-4Rはフルカウリングされ「雨は喰らうけど、風の直撃は防げます」という車両。これこそハンドル周辺にUSBソケットを欲すると思うのだが、シート下である。「何故?」
 DUKE 390に心動いていた私を挑発するKAWASAKI産まれ、速すぎて周囲の景色が緑色になるという噂の車両だが、(相対性理論、光のスペクトラムに基づき算出)此方をを語るためには2000年頃花咲いた日本モタードブームから語る必要がある。
 KAWASAKI D-Trackerが事実上のスタンダードであった日本モタード250cc市場。そこを切り崩そうと各メーカーは鎬を削った。
 2007年、YAMAHAは市販プレミアムモデル、オフロード車両WR250Rを発売。やや遅れコンポネートを共通とするモタードモデルWR250Xを発売。KAWASAKIスタンダードを崩しにかかった。
 250ccシングルエンジンの市場価格が刺激され、2013年KAWASAKIは250ccに高性能バイクの市場需要ありと見越し、フルカウルモデルNINJA-250が発売された。シングルエンジン性能頭打ちと、排気ガス規制に対応するためエンジン気筒数を二つに変更。他市販250ccクラスから一歩抜きん出た性能を発揮。
 その後を追いかけるように2015年 YAMAHAはYZF-R25を発売。それを受けたHONDAは2017年CBR250RRを発売。エンジンやフレームはこのクラス最良の物であり、フロント周りのデザインは秀逸な造形である。個人的にはあの顔でHONDAは統一して欲しい。
 2020年再びKAWASAKIが250ccクラスを刺激する。2気筒に更に2気筒追加した4気筒フルカウルモデルZX-25Rを発売。250ccに250ccだから500ccということになるが、その辺はうまく国交省を抱き抱えたのだろう。このご時世、フルカウルモデルで250cc 4気筒レシプロエンジンとは差し詰めアマゾンの奥地で見つかったオーパーツである。小排気量故、べらぼうに超高回転で、往年のF-1のような素敵エキゾースト音はモータースポーツ愛好家共の心と財布を鷲掴みにした。結論は小排気量市場を刺激したのはモタードが引き金だったのだ。

 250ccで終わると思ったのだが……。しかし、そこはKAWASAKIである。クタクタになったKLXから採取した怪しいDNAこと、漏れたオイルを培養すると、不死鳥400cc4気筒エンジンが誕生した。燃えた。俺が。
 250ccの4気筒が古代秘宝であれば、400ccの4気筒は謂わば朱鷺トキであり、ほぼ絶滅し、また金を積んでも買えない野鳥で著名な存在。何かと規制で厳しい時代にそれは奇跡に近しい。
「欲しい!」しかし、どこ行っても売ってねえ。色は緑色だ。見た目上は環境に良さそうだ。太陽系惑星が十時に並ぶ奇跡のような星並びの日には販売されるといわれても俺は信じる。あと、金ならない。
 そんな折、ぶらりと寄ったバイク屋は開放弦のギターが奏でられることで有名なショップ。

・レッドバロン 現着
 ZX-4RRが早くも中古として店頭に。取り付けていない社外パーツはエキゾーストくらい。という代物で素敵なパーツが沢山付いていたが、それはやや傷ついていた。そうした立ち姿は、敵の藩から差し向けられたくノ一に縄を打ったというもので、興奮が少しであるが、増した。
「では跨りましょう。跨りましょう」そそくさと、シート上に着座。

・KAWASAKI ZX-4RR
「あ、意外に重いですね」 重量が足に来る。足つき性は、意外に良い。
「安心感がありますよね」という店員さんの声に、ものは言いようだなと笑みが溢れた。この日を境に身体の下半身強化を始めようと決意し、実行している。
「エンジン掛けれますか?」
「ええ、どうぞどうぞ」ということで、セルを回すと、もう欲しい。店内故アイドリング音はやや大きく感じたが、バカみたいな轟音ではない。イタリアから来たすげえ車たちスーパーカーは、何かが絶命したかのようなアイドリング音を出すが、それに比べたら許容範囲である。
 エンジンを主にZX-4Rの素晴らしさが語られているが、私から見るとそれだけではない。フロントマスク周りのデザインも良く、カウリングと一体化されたウィンカーの処理も素晴らしい。見易く、デザインとしても優れている。
「ウィンカーはウィンカーらしい形をしてなければならない」のであれば、それは目的と手段の取り違えである。そもそもウインカーとは別の自動車両及び歩行者、つまり他者に自車の進行方向を示す意思表示であり、形状を厳密にする必要はないはずだ。他者へ向けた意思疎通が目的である本来の役目に立ち戻って判断して頂きたい。4輪自動車ではライトとウィンカー機能を併せ持つ物もあり素敵だ。
 「おや? 前を走っている車が怪しい挙動をしているぞ」と、思うとウィーンカー表示無しで曲がるなどは日常茶判事の道路事情。物として付いていさえすれば良いのかと思われるこもあったりする。
 バイクの場合、ウィンカーをカウルと一体型にしようが、外につけようが転倒すれば砕けるものであり、視認性と同時にデザインが両立するならば柔軟な方法を採用して欲しい。これはリアウィンカーにもいえることで、ブレーキランプと一体型に出来るのであれば私はそれを望む。
 次に取り上げるのはハンドルに装着された各種スイッチ類。走行モードを変更するスイッチを操作してみると、ワンテンポ遅れて反応する感を受けた。土砂降りの雨の中不意に触れ『スポーツモード』に切り替わるとか、トラクションコントロールを全部OFFで登録したユーザー(たぶんケーシー・ストーナー)設定に変わっていたなど、不意な操作介入があっては困る。サクサク動くことよりも確実に動作してもらわないと困るものというものがございます。安全に振って造られているのであれば、それは良いでしょう。操作の軽さが操作性の良さと同一視されがちですが、それは場面によるとしかいえません
 因みにDUKEのスイッチ類の操作性は大変良い。確実性と操作性が両立しているかのような心象を持つ。ということでZX-4R走行モード、ユーザー設定のトラクション機能全てをONに変更。そうした善行を積んだ私はシート上で暫し悩む。足回りのDUKE 390か、エンジンパワー凄まじいZX-4R。私がバイクに求める「速い」「よく止まる」「よく曲がる」この三つの度合い、両車は必要にして十分の性能。何方も魅力的で真逆の特性を持つ両車。
「……」 バイクに跨り黙する私の頭の中はこうだ。乗っていて楽しいであろうDUKE 390 しかし、裸。時速70km/h以降からは風防があるかないかで疲労度は違って来る。それに応えるのがZX-4Rである。KAWASAKiに不満があるとすればまず物が売ってないこと。ZX-4R SEグレードにケワサーキ・グリーンが日本指向けは存在しないこと。
「英国向けには存在しているようだが、これは英国仕込みの嫌がらせだろか?」

 ガチンコに両車が私を悩ませる。この「ガチンコ」であるが、語源は大相撲界にあり。現在の幕内力士体重は160kg〜180kg。DUKE 390重量約160kg ZX-4R重量約180kg 両車が私の頭の中で立ち会い続く。

⭐︎参考資料:BikeBros
https://www.bikebros.co.jp

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