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人造人間の告白 「話はそれからだ…」と中年男は言った シーズン2 その46

「おい、“仮面”。起きてくれ」

 俺の一言に“仮面”の眼がぼんやりと白く光った。
 微かに回転音のようなもの、起動音だろうか。そのような音が聞こえてきた後、“仮面”はゆっくりと上半身を起こす。

「おはよう、シロタン」

 “仮面”のいつもの声、機械で合成したような音声だ。

「充電はどうだ?」

「お陰様で70%まで出来たよ。
 今は何時ぐらい?」

「朝の9時ぐらいだ」

「あまり眠っていないけど、凄く寝た気がするよ」

「そうだな。それは俺も同感だ。
 それだけ俺たちは疲れていたのだろう」

「そうだね」

 と言った“仮面”の眼から徐々に光が失われていく。
 ように見えたのだが、突如として“仮面”の眼が白く点灯した。

「それよりもシロタン!僕は君たちに何てお礼を言っていいのかわからないぐらいだよ!」

「“仮面”、いいんだ。俺たちは仲間だろ」

「ありがとう!シロタン!
 ありがとう、皆んな!」

 気がつくと森本の嫁以外の皆が“仮面”の元へ集まっていた。
 皆それぞれが“仮面”からの礼に応える。

「あんたとは初めてまして、だな」

 二号だ。

「俺はあんたのことを知っているが、あんたは俺を知らないだろう。
 改めて自己紹介しよう。俺の名は城本、一部の人間からは二号と呼ばれている」

 と、二号は俺へ軽く目配せをする。

「宜しくね、二号くん。それと僕を助けてくれてありがとう」

 “仮面”から右手を差し出すと、二号はその手を握り返す。

「感動的な場面に水を差すようで悪いのだが、俺たちはあんたについて色々と聞きたいことがある」

「うん 何でも聞いて」

「それなら…」

 二号は斜め上を見ながら、何か考えている風だ。

「“仮面”、単刀直入に言うが、あんたは何者なんだ?」

「僕?僕の名前は“仮面”っていうんだ」

 学生証の名前の欄に“仮面”と書いてあったから“仮面”と呼んでいたのだが、やはりそれが本名だったのか。

「違うんだ…、あんたは人間なのか?ロボットみたいなものか?」

「そういうことか。
 僕は脳以外の殆どを人工物に置き換えている。サイボーグとか改造人間といったものだよ」

 一同、何とも言えぬ声を漏らす。
 “仮面”はサイボーグ、改造人間だったのか。
 薄々、わかっていたことだとは言え、本人の口からはっきり言われると驚きを隠せない。
 それは西松と森本も同様のようだが、二号とパリスは…、相変わらず、だ。

「何がきっかけでその身体になったんだ?」

 二号は冷静で淡々としていた。

「僕が子供の頃、家族全員で交通事故にあったんだ。
 その時、かろうじて生き残ったのが僕だけで、その現場を目撃した青梅財団の人が僕を引き取って助けてくれたんだよ」

「あんたを改造したのは青梅財団だったのか」

「そうだよ」

「ここでも青梅財団か!全て青梅財団が噛んでる!」

 西松が得意げな表情を浮かべる。

「西松、あんたはちょっと黙っててくれ」

 二号は西松にそう言うと、“仮面”の方へと向き、

「“仮面”。あんたはさっき、俺たちに助けてくれてありがとうと言ったよな?
 それは何故だ?青梅財団には事故で死にかけたところを助けてくれた恩があるんじゃないのか」

「助けてくれた恩はあるけど、彼らは僕のことを実験体として利用しているだけだ、ということがわかってきたんだ」

「実験体?」

「彼らは僕に黙って、人間兵器として改造してきたんだ。この身体には幾つもの武器が内蔵してある」

「人間兵器⁉︎」

「そうなんだ。彼らは僕に身寄りが無いことをいいことに、僕の身体を好きなように改造し、武器を埋め込んでいった。
 この前、工房へ連れて行かれた時に、僕の人しての情緒が不要だと言われて、脳改造して完全な兵器にされるところだったんだ!」

 “仮面”の眼が点滅した。それはまるで涙ぐんでいるかのように見えた。

「だから僕は皆んなに感謝しているんだ。皆んな、ありがとう!」

「いいんだよ、“仮面”。お前が脳改造されず、お前がお前のままでいてくれてよかった」

 と言いながらも、俺の眼頭や眼尻から熱い何かが溢れ落ちそうになっていた。
 “仮面”の眼が激しく点滅する。

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