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人ったらしは、言葉の魔術師!?

前回の記事の続きである。

前回は、媒酌人でもある部長が登場したわけだが、今回は、次の部署での次長。部長の補佐を行うポジションだ。

事の発端は、とあるイベント。自分の担当エリアにて、開催される予定であった。取引先で構成される団体が主体となった、毎年のルーティンの行事だったこともあり、こちらも任せっきりに。どうも、天気のせいか、集客のせいか、開催をギリギリになって中止にしたらしい。こちらも報告はもらっていたが、協力業者ともうまく話がついたようなニュアンスだったんで、特別に問題視していなかった。

現場レベルではそれでもよかったんだろうが、どうもこの件が業者の社長の耳に入ったらしい。そして、また運が悪いことに、この社長が、局長とも仲が良く、直接に情報リーク。まあ、こちら側に非があるわけだが、せめて私じゃなくても、部長(部署が変わっていたので媒酌人ではない)を通して欲しいところ。

案の定、部長が局長室に呼び出される。部長も青天の霹靂だから、説明の余地もない。そして、席に戻った部長に呼び出される私。「聞いてたのか?」との問いに、「聞いてました。すいません」と回答。始末書を提出するように、との指示。「顛末書じゃなくて?」とは聞けるような状況ではない。

ってことで、今回は、割とストンと、局長の指示が、部長を通過して降りてきた。別に、この部長のことは恨んでいない。そもそも、こちらも根回し不足だったし、そこで部長もリスクを取る必要もないだろう。ただ、業者の社長に対しては、ちょっとムカッとしていた。自分の席に戻ったが、もしかしたら、表情や態度に出ていたのかもしれない。

ここで次長の登場。しばらく経ってから、ツカツカと私の机のそばに来て、「ちょっと来い」と。当時、設置されていた喫煙所に呼び出される。「今度は、次長の説教かよ…」。

さて、この次長。顔は怖いし、体育系だし、言葉も乱暴だし、正直、一緒の部になって暫くは距離感をつかめずにいた。えいや!と懐に飛び込んで体育系のノリで付き合うのも、非体育会系の自分としては…。とはいえ、次長だから、部長の前に申請書の判子をもらったり、問題があれば相談しなければいけないわけで、遠ざかるわけにもいかない。

一方で、なんでも腕力で解決するかのような見かけの印象とは違い、数字の裏付けの質問や、先の展開に対する布石の打ち方のアドバイスとか、キチッキチッとしたプロセスを大事にするという、意外な一面もあった。

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「座れ」と次長。煙いな…(私は、嫌煙家)。

「先ず、今回の件、お前が悪い。部長の言ってるとおりだ。ただ、もし、お前が始末書を書くことによって、これからの会社人生の中でなにかあったら、そのときは俺が守る。以上」

うーん、そうきたか…。しばらく、席を立つことができなかった。さすがに、周囲に他の社員がいたから泣くわけにはいかなかったが、ほんとヤバかった。なんか、その一言で憑き物が取れたような感じだ。不貞腐れていた自分の小ささにも、あらためて気付かされた。

そして、やっぱり、思う。「あぁ、この人のためなら」。「人ったらし」である。

自分の席に戻ると、パパっと「始末書」を仕上げて、提出している自分がいた。焦らすことも、躊躇うこともなにもない。

ぴったりフィットな言葉の力ってスゴイな、って思う。前の顛末書問題も、今回の喫煙所問題も、二人とも計算や打算ではない。本能によって紡ぎ出された言葉なんだと思う。しかも、あのタイミング。

こんな上司になりたいな、って思った20年前。果たして、どうだったんだろうか?

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