映画「すばらしき世界」感想

鑑賞前「すばらしき世界」という題名はこの世は「すばらしき世界」と言いたいのか皮肉を込めて「すばらしき世界」と言いたいのかどちらかの映画なのだろうと考えていた。

事前情報としては懲役を終えたヤクザが一般社会にでて試行錯誤する作品だという。社会派の監督ということもあり、おそらく「すばらしき世界」としては後者の皮肉を込めたものだろうと予想した。

出所した三上はベストセラー本「ケーキの切れない非行少年たち」を地で行く人物。私生児として生まれ母親にも捨てられ施設を抜け出してヤクザとなった。理性も常識も欠き、殺人を犯し10年の懲役となった。50代で出所した三上は何とかやり直そうとするが世間は冷たく、三上も元々の自分の短所を変えられないため失敗を繰り返し、再度ヤクザへの道へ堕ちかける。とても「すばらしき世界」とは言えない。

しかし無償で三上を応援してくれる人々のおかげで三上の心境に変化が起こる。そして何とか仕事を見つけそれを仲間が心から祝福してくれる。すべてが好転していく。なんと「すばらしき世界」。

しかしここで終わらないのが社会派監督たるところで「すばらしき世界」だと思われた一般人の職場に卑劣な弱い者いじめがあることがわかる。従来の三上であればそれに対し暴発しまたレールから外れてしまうところ何とか堪える。なんと醜悪な世界か。

最後、三上は病気で突発的に死んでしまう。過去の三上であったらその死を悲しむ人がいただろうか、そんな三上の死に本気で悲しみ泣きじゃくる仲間がいる。それはそれで「すばらしき世界」なのかもしれない。

結局、この世は「すばらしき世界」ですか?という問いかけで終わった気がする。どちらとも言えないしどちらとも言える。

観る価値は


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