みんなちがってみんないい
ぼくはいままで小学校がきらいだった。
だってみんなと「おんなじ」じゃないと変だっていわれるんだ。
みんなはおんなじ本をよんで、
おんなじ字をかいて、
おんなじものを食べて、
おんなじうたをうたう。
みんなは、もってるもの、きてるもの、ぜんぶおんなじにしようとする。
みんなは、赤い消しゴムをもってるけれど、ぼくは青い消しゴムのほうがすきなんだ。
みんなは、白いくつをはくけれど、ぼくは黒いくつのほうがすきなんだ。
ぼくはぼくのすきなようにしたいのに、みんなとおんなじじゃないと変だっていわれるんだ。
さいきん、とつぜん小学校があたらしくなった。
あたらしい学校はいままでとぜんぜんちがう。
みためはふつうなんだけれど、学校の門をくぐって、きょうしつにはいると、どうしてかみんなべつべつの言葉をはなすようになるんだ。
しくみはよくわからない。
でもみんながいってることが、なんにもわからなくなるんだ。
ミカちゃんはミカちゃん語、ケンくんはケンくん語をはなす。
ぼくはぼくだけのことばをはなす。
はじめのころはみんな、ことばいがいのものをつかっていっしょうけんめい分かりあおうとした。絵をかいたり、からだをつかったりしてつたえようとした。
がんばって、「おんなじ」をみつけようとした。
でもそのうちみんな、「おんなじ」なんてことがどうでもよくなってきた。
みんなはすきな本をよんで、
すきな字をかいて、
すきなものを食べて、
すきなうたをうたう。
ぼくは、黒いくつをはく。
カナちゃんは、かみのけを緑いろにしてる。
ユウくんは、ピンクいろのスカートをはいてる。
みんなみんなちがう。
だからぼくは、いまはたのしいんだ。
みんなとちがってても、だれもわるぐちなんていわない。
ほんとは、わるぐちをいってる子もいるかもしれないけれど、なにをいってるのかわからないから、かんけいないんだ。
みんなみんなちがう。
だからぼくは、たのしいんだ。
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