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治験はキケン?

治験関連の記事も最後の一つになりました。

◎↓↓前回の記事はこちら↓↓◎

▶︎治験に参加してみた❶応募〜事前検診
▶︎治験に参加してみた❷入院〜事後検診

少し長くなりますが、どうぞ最後までご覧ください。

●治験参加を考える前に

治験治験って何度も書いていますが、そもそも治験ってなんなんでしょう。
厚生労働省のWebサイトでは、治験を以下のように定義して説明しています↓

「人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に「治験」と呼ばれています。」
厚生労働省 治験について(一般の方へ):1治験とは


そもそも新薬の開発から流通までには、何重ものプロセスがあります。研究者たちが「⭐︎⭐︎(薬の成分)って★★(病気や症状)に有効に働くかもしれない!」と気付いてから実際にお薬として一般流通するまでには、試験管の中で研究してみたり、ラットやマウスを使って実験してみたり、様々な過程を踏みながら有効性や安全性を検討していった後で、最終的に人間での「臨床試験(以下治験)」が行われます。治験の実施に至るまでにも、国内法や国際法に従って倫理的な方法で実施されることが保障されないといけませんし、治験中のいかなる状況にも対応できるような医療設備や医療スタッフを用意して準備しなければいけません。また、治験では作用や副作用を正確に把握するためのデータ収集が目的です。そこでまず健康状態の良い人、もしくは得たい情報が得られそうな条件を絞って被験者を集める必要があります。何度か治験を繰り返して、データの精度を高めていったのちに、さらに複数の過程を踏んで晴れてお薬が承認され、流通していくわけです。これは何も特別な治療薬に特化したプロセスではなく、今現在ドラックストアで販売されているお薬も全てこのようなプロセスを踏んでいます。

そう考えたらいつも使っている常備薬でさえ治験が行われているのだから、過度に治験に対して拒否反応を起こさなくてもいいかも?と思いませんか。

(私は今まで、たくさんのお薬のおかげで助かってきた命を見てきたので新薬の開発や臨床試験に協力してくださって医療の発展に貢献してくださっている方々には感謝の気持ちしかありません🙏)

◎海外治験って闇バイトなの?
もちろん日本国内でも治験は行われています。でも何故海外で「日本人(アジア人)」が条件となった募集案件があるのでしょう。理由としては、人種間の有意差を検討するため、アジア圏での新薬販売を目指しているため、などが考えられます。
前述したように治験に至るまでのプロセスや国内/国際法に従った研究であると倫理機関から承認されていることを踏まえると、怪しい闇バイトではないと思います。
(そして治験はあくまで報酬のあるボランティア⭐︎)

そうだとしても、不安はありますよね。今この記事を見ているあなたの不安を完全に解消する力は私にはありませんが、このnote内の治験関連の記事を読んで、抽象度の低い“何となく怖い、わからないから怖い“が少しでも緩和されることを願っています。

■流通されていない薬を飲むことへの不安
流通されていない薬を飲むって何だか怪しいですよね。
流通までの過程を全く知らないのであれば、以下の文章を読むことで少しだけでも流通までの過程が分かるかもしれません。

冒頭にも書いたように、安全性や倫理性は十分に検討された上で行われる最終的な試験が人体を使った臨床試験(=治験)です。
「特定の病気や症状に対して作用があると考えられている薬」が本当に根拠のあるものなのか、データを集める作業が治験です。一般的にはこの後国の承認を経て治療薬として流通していく、という流れになります。

■重篤な副作用の不安
いわば「人体実験」なので、万が一重篤な副作用が出たら‥。怖いですよね。

臨床試験に至るまでの過程は長く、さまざまな可能性を考慮した上で安全な投薬に至るのですが、もちろん重篤な副作用のリスクがゼロなわけではありません。
そのために、緊急処置や治療が行える医療施設でのみ治験投薬が行われています。
また、万が一重篤な副作用や死亡事故等が起きた場合は、その事象が治験に関連したものなのかを調査し、国に報告する義務があります。
こういった場合に備えて、製薬会社とコーディネート会社の双方は、損害賠償保険に加入しており、被害を受けた場合に一定額の補償があります。(詳しくは各治験会社のHPへ。)

治験は治療薬が承認されるステップの最終段階ですので、こうした重篤な副作用は極めて少ないと思いますが、頭痛や吐き気、発熱などの副作用が出る場合もあります。また、副作用の症状や程度も含めて観察対象となっている場合があります。後述しますが、少しでもいつもと違う症状があると感じた場合は、すぐにスタッフへ伝えましょう。

■医療的処置(採血など)の不安
入院中は、ほぼ毎日採血がありました。
スタッフによって採血の手技レベルは若干差がありましたし、手技が上手な人ですら採血しにくい血管もたまにあります。
注射の痛みがどうしても苦手な人にとっては治験入院は苦行かもしれません。

■英語が話せないことへの不安
病院スタッフとのコミュニケーションは英語で行いました。他の治験会社だと日本人スタッフのみで治験を実施しているところもあるようです。
事前/事後検査と入院中(日中のみ)、電話問診の際はUK治験のスタッフさんが通訳として間に入ってくれました。また私が参加した治験では、同意書などの重要な書類は全て日本語でした。(日本語といっても、翻訳機にかけたレベルの文章なので若干わかりにくいです。)

●治験参加を希望したら

◎同意書をきちんと読んで理解した上で『同意』すること
携帯の契約とかもですが、内容や注意事項が多すぎて
全部読まずにとりあえず「サイン」してませんか?

それ、絶対ダメですよ。

治験に参加するということは、自分の身体を実験として使う臨床試験に参加するということです。

・どんなお薬なのか
・どんな試験なのか
・いつどこで何日間行われるのか
・参加する前に気をつけることはないか
・参加後に気をつけることはないか
・副作用が出るかもしれないことに同意しているか
・ルールを守れると約束できるか

などの重要な内容に対して全て説明を受け、またそれを理解した上で参加します、という意思の表示がサインです。
治験は同意書の内容に沿って行われます。
むしろそれ以外のことが行われることはありえません。
(←同意書の規定期日に報酬が振り込まれないトラブルがあり爆ギレした人)

じゃあ読んでもわからなかった場合どうしたらいいのでしょう。
実際に私が参加した治験の同意書も、分かりにくい文章がチラホラありました。
治験の内容をきちんと理解するためにこちらが行わなければならないこと、それが次です。

◎英語が堪能だとしても必ずコーディネーターを活用すること
上の話の続きです。治験の内容等で分からないことや不安なこと、「この状況だとどうなりますか?」のような個人的な質問(例えば交通費や持参内服薬など)については、施設のスタッフはもちろんですがコーディネーターである治験会社の担当者の方(今回はUK治験)に都度聞いて確認した方が良いです。
イギリスの治験では、製薬会社の担当者、施設のスタッフ、治験会社の担当者(コーディネーター)が主に携わっていると思うのですが、私たち被験者(治験ボランティア)は治験会社を介して集まっているので、私たちが直接やり取りを行うのは治験会社の担当者が望ましいです。派遣会社から派遣されたお仕事先での不満や疑問を、派遣先の会社に伝えるのではなく派遣元にまず報告する感じに似てますね。
仲介役としてコーディネートすることが彼らのお仕事なので、お仕事を全うしてもらいましょう。(圧)

私が参加した時は事前検査の際に最終的なインフォームドコンセント(説明と同意)が行われ、サインする流れだったのですが、その場で質問できる雰囲気じゃありませんでしたし、事前検診日に同意書などの書類を初めて見るのでは、短時間で治験概要や制約などを全て把握するのはかなり厳しいと思います。
ですので同意書の内容は事前に全て読み込んでおいた上で、わからないことや確認したいことは文章に残る形(メールなど)で問い合わせる方が良いと思います。
その上で納得できない場合の拒否権はありますので途中まで参加したとしても(投薬前)、途中で参加を辞退することは可能です。
ボランティア側の権利として保障されています。

また、たとえ英語の理解に問題がなかったとしても、医師や看護師の問診を受ける際は必ずコーディネーターの通訳を通して内容を把握してから返答することが望ましい気がします。
問診での質問の仕方は医療英語が使用されていて、かつYesNoが分かりにくい場合もあるし、返答内容によっては被験者に選ばれない可能性も出てきます。何より、自分の身体を使った試験なのでこちらも正確に理解したいところです。

◎ルール(行動/食事制限など)を必ず守ること
治験に参加するにあたって、いくつかの参加条件と行動の制限等の説明を受けることがあると思います。
例えば、体重やBMIなどの参加条件と、飲酒や喫煙、サプリメントの摂取に関する制限などです。
後者の制限の多くは“投薬日の○日前から禁止しましょう“といったもの。
中にはカフェイン摂取の禁止や、特定の食べ物を摂ることを禁止されることもあります。

それは何故でしょう。

何度も言いますが、流通前の薬の承認を得るために行われるのが“臨床試験=治験“です。
治験では「薬の作用や副作用」を知りたいし、そのためには影響が出そうな邪魔な要因(バイアス)をできるだけ排除したデータを集める必要があります。
だって例えば薬で肝機能を改善するのかどうか知りたいのに、集めたデータの中に飲酒者が混じっていたら、お薬の効果がどのくらいあるのか正確に把握できませんよね。反対に薬の副作用として肝機能が低下する可能性があることがわかっているけど集めたデータの中に飲酒者のデータが混ざっていたら、薬によって肝機能が低下したのか、治験期間中飲酒を続けたことが影響しているのか判断が出来ません。
処方されたお薬が杜撰な管理下で試験してパスした薬だったら、誰も使いたくないですよね。
以上のことから、指定された制限は遵守する必要があるのです。

それは入院中に限ったことではなく、事前検診や事後検診の前後も同様です。
もしかしたら特に説明がないかもしれませんが(私達の時は非常に分かりにくい説明だった)、
「データとして使用できる人材なのか、この人は投薬者として適切か」
という点から被験者を選定するにあたって、“投薬日に同コンディションであること”を前提に事前検診を行いますし、
「退院後も薬の作用や副作用を確認する/投薬から数日後経った後の身体の状態」を知る目的で事後検診を行うため、こちらも限りなく“投薬日〜入院中と同コンディション”であることが求められます。

飲酒や喫煙、特定の食べ物、サプリメントの制限は守れても意外と穴なのがカフェイン。
お茶もコーヒーもコーラにも‥色んな飲料にカフェインは含まれています。
量にもよりますがカフェインの摂取によって不整脈や動悸が出ることがあり、心電図の波形が異常波形になることがあります。一つ一つの制限には理由があるのです。

薬を承認するための大事なプロセスに参加するわけですから、有効な臨床試験結果が得られるように協力しましょう。

◎副作用は些細なことでも必ず伝えること
投薬後は重篤な副作用(ショック症状など)以外にも、頭痛やめまい、軽い吐き気などの症状が出る場合があります。どんなに些細な症状でも報告することは被験者の大事な任務です。

「もしかしたら気のせいかも」「薬の影響じゃなくて慣れない入院生活の影響かも‥」なんて原因を考える必要はなし。因果関係は頭のいい人たちが集めた情報から分析してくれます。
治験ではデータで分かることのみではなく、多くの被験者の主観的な副作用の報告を集めていくこともおこなっています。薬の説明書にどんなに軽度でも起こりうる副作用が全て記載されているのは、こうした報告があがってこそなんですね。


いかがでしたか。
治験中は時間が拘束され、一定期間我が身を預けて管理されるわけですが、薬を承認していくためには、より精度の高いデータを集める必要があるわけです。新薬を国から承認してもらい、世に流通させていくために治験が行われることが何となく理解できたでしょうか。

ですが全く協力してくれない被験者ばかり集めても、治験を通して知りたいデータ収集ができません。条件がマッチする被験者を集めるためにサバイバルゲームのように選定されていく過程があるのも、一般的なお仕事に比べると高報酬なのも納得ですね。


この記事を通して「不安すぎる怪しい案件」だという治験に対するイメージが少しでも改善され、治験の意義や目的を理解した上で気持ちよく参加できることを祈っています。

ついでに今回お世話になったコーディネーターのUK治験さんには、人の身体を預かっていることを前提に倫理面やコミュニケーションの見直しをぜひ行ってもらいたいところです。(ちくり)


イギリス国内で行われているアジア人向けの治験は
UK治験
HMR
リッチモンドファーマコロジー
の3社が募集をかけています。
UK治験さんとリッチモンドファーマコロジーさんは
2022年11月28日現在、治験案件が出ています。

UK治験さんは短期間の治験も含めコンスタントに案件を出している印象です。
最新情報はチコちゃんのTwitterやNoteを見ると良いと思います◎

興味がある方はとりあえず各社登録しておいて案内が来るようにしておいても良いかもしれません。

以上!連日の治験ブログにお付き合いいただき
ありがとうございました。ぴやちゃんでした〜◎◎◎

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