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ミー子さん

子供の頃から猫はいつも家に居た。好きとか嫌いとかではなく、いつも家の中で寝ていた。何歳くらいまで生きていたのか分からないが、15年くらいは普通に暮らしていた。

「みぃ物語」を読んでいて、ミー子のことを思い出した。歴代の我が家にいた猫の中でも、約21年間と長寿で、しかも人の言葉を理解しているような行動を取っていた。

30年以上も前の携帯写真

この子は猫好きな家族の家に生まれた。たしか7匹だったと思う。当時流行り始めたアメリカンショートのこどもで、産まれた時から性格が他の猫と違っていたそうだ。その家の中学生の男の子に特に懐き、仲が良かった。妻がその家に行った時に、この子が側に来て膝の上に乗ってきたそうだ。いつ行っても走ってきて、何かを話しかけて、とうとうこの子が可愛くて、何回も通ってもらい受けてきた。

いつも中学生の子から離れないのに、妻の側に来たミー子を呼んでも、その子の所に行かなかったそうで、その子も諦めたらしい。この時、ミー子は1歳だった。

こんなイタズラされても怒らない

我が家に直ぐになじんで、二人の子どもの遊び相手になった。子供が熱を出して寝てると、餌も食べずに横に寄り添って寝ていた。猫とは思えない行動に、猫好きな家で1年間も大切に育てられたので、人になじんでいたのかもしれない。

高熱で娘が寝込んだ時には、まる2日間も横から離れなかった。うなされてると、頬や額にペロペロと舌をあてていた。少し元気になると、今度は雀やトカゲを捕まえてきて枕元に置いていた。生きたままなので、それを見て娘は飛び起きたらしい。

野良犬を警戒中

当時、外にはゴールデンリトリバー種の、大きな雌犬がいた。この子を目当てに放し飼いの犬が寄ってくるので、ミー子はいつもその見張りもしていた。犬が5匹の子供を生むと、犬と一緒に子育てを手伝い、庭を走り回っていた。

ミー子自身は2回子供を産んだ。1回目は鳴きながら寄って来てたが、出産とは気付かずにいたら、押し入れの布団の上で生んでいた。半月もしないうちに風邪にかかり、1週間くらい毎日動物病院に通ったが、子ども達はみな助からなかった。

2回目の時は、出産が近づいてるのが分かり、箱を用意した。夜に私の所に来て異様な泣き方をするので付いていった。箱の中でウンチをするような格好になり、振り向いて鳴くので、背中から腰をさすって、出産を助けた。1匹生んではしばらく子供を舐めていて、また次の出産が近づくと呼びに来た。猫は出産の時に人間に手伝わせるとは思わなかった。こちらもなれてきて、背中から腰、背中からお腹の横へとさすった。ミー子も気持ちよさそうだった。

子ども達が無事に育ち、庭で揃って遊ぶようになると、3ヶ月目くらいから乳を与えなくなった。仕方なく離乳食にして面倒をみたが、その頃はミー子は見守るだけで、積極的に子供の面倒はみなかった。庭で揃って遊ぶ姿を見ていた近所の人が、それぞれ1匹ずつ引き取られていった。ハッキリしたアメリカンショートの模様であったり、シャム猫の模様だったり、身体の模様はミー子とは全く似ていなかった。後で子猫達は躾が出来ていて、とても愛想も良く、良い子だと報告された。

キータンと

犬が12歳で死んで、ミー子が18歳になった頃、産まれて直ぐに紙袋に入れられて捨てられた子猫が我が家に来た。まだ目も開かないのに捨てられ、目ヤニで瞼が開かず、鼻は血膿で固まっていた。2週間の入院治療後に我が家に来て、ミー子と一緒に育てた。茶トラ白の模様で、色が黄色だからキータンとした。キータンは甘えん坊だが、ミー子は自分の子と同じ様に、2ヶ月も経った頃から寄せ付けなくなった。

猫の子育ての仕方を、キータンを育てながら始めて知った。キータンが畳の上でオシッコやウンチを始めると、走って行ってトイレの砂まで咥えていく。トイレが済むまで近くでちゃんと出来るか見守ってる。猫といっても、人間に負けないくらいの愛情で見守り育てるものだと感心した。トイレから食事まで、シッカリと教えていた。今まで気付かなかったが、猫も教育を受けるのかと感じた。

この元気なミー子も家に来て20年になる頃、とつぜん妻の所から離れなくなった。足下に絡みつき、猫も認知症になるのかと思っていたら、今度は立てなくなった。年齢的にそろそろかも、と掛かり付けの獣医さんに言われた。食欲もなくなり、横になったままになり、入院をした。1ヶ月くらい、金曜の夕方に家に戻り、日曜の夕方に入院した。平日は夕方に会いに行くと、必死に起き上がろうとした。獣医さんから、いつまでも入院していても治らない。最期は家で家族と一緒に過ごしましょうと言われ、退院して2日後に息を引き取った。最期は首を上げ、皆を見渡してから横になり、直ぐに息が止まった。最後の力を振り絞り、皆の顔を見たのだろう。


ミー子が死んでしまった翌々年に、妻の肺癌が見つかり、余命宣告を受けた。ミー子が1年間近くも、妻の足に絡み、肩に乗ろうとしていたのは、動物の本能で癌が分かったのかもしれない。

産まれた家で愛情たっぷりに1年間を過ごし、我が家に来てから20年と少し、人間の子育てを手伝い、同居の犬を守り、自分の子供達やキータンを育て教育し、親猫としても立派だった。人の言葉が分かるように行動し、言うことを聞いていた。ミー子が居たから、キータンが優しい猫に育ち、娘が子供を産んで1ヶ月間我が家で過ごした時には、キータンが一生懸命に孫の相手をしてくれた。

孫はキータンに会いたくて家に来た

妻が逝って10年、最後の家族としてキータンと一緒に暮らしていたが、そのキータンも18歳になり、向こうに行ってしまった。厳しかった親代わりのミー子さんに、向こうの世界で逢えたのだろうか。

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