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人生、綴ってみた 【結婚・後編】 #23

 小学五年生くらいだったと思う

 息子と二人
 近所のスーパーで買い物をしていた
 息子の大好きなお菓子
 ブラックサンダーの袋詰めを見つけ
 私は三百円を渡して
 レジが終わるのを待っていた
 息子は長い列を並び
 ようやく自分の順番がきた時
 レジ横にある
 ネパール地震の募金箱を見つけた

「これ、買うのやめていいですか?」
 店員さんに伝えて
 握りしめていた三百円を、募金箱に入れた

 レジの人が優しく聞いてくれた
「ボク、このお菓子が欲しいんでしょう?
 募金してしまって、いいの?」

「ボクのウチも地震の時、
 たくさんの人に助けてもらったから
 いいんです」

 そのやり取りを見ていた
 周りの人達が感動して拍手をした
「こんな小さな子が我慢して」
 と、涙を流していた人もいたそうだ

 それなのに
 自分が何かおかしなことをしたのだと
 勘違いし
 息子はずっと泣き続けていた

「お母さんがくれたオカネだったのに、
 ごめんなさい」

「いいの、いいの。
 ウチが募金で
 いろんな人に助けてもらったから
 自分も誰かを助けたかったんやよね。
 でもさ。
 募金をするなら、
 誰かのオカネじゃなくて
 自分のオカネ、お小遣いですること。
 そしたら、お母さんに
 ごめんなさい、って
 言わなくてもいいよね」

 私は息子が誇らしかった
 ADHDは、人の気持ちがわからないと
 言われることが多い

 だけど、この子は
 本当に優しい気持ちを持っている

 このまま育っていってほしい

 オカネの使い方も
 そんなふうに
 一つ一つ
 丁寧に教えていった

 金銭感覚は人それぞれ
 何が正しいかなんて
 考え出したらワケがわからなくなる
 私が正しいと思ったことを
 教えていくしかないのだ

 私はそう割り切っていた

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