あね

姉の名前は一体何だったろうか。


目が覚めたばかりではっきりとしない意識のまま僕は「典くん典くん」と呼ぶ声のほうへ歩いて行った。


姉。


名前はやはり思い出せない。名前など、どうでも良いのかもしれない。姉と弟、というこの関係こそが僕にとって至上の喜びだったのだ。

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