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たそがれの街

絵を描いてみようと思ったのは、編集中の年次報告書の表紙に使うイラストの提供者が今年は誰もいなくて困っていたからだ。

iPadで描いてみたところ、結構楽しく描けたので、これからまた少しずつ絵を描いてみようと思ったのだ。

20代前半、僕はアーティストを目指していた。美大卒業後すぐにあきらめて筆を折って以来、ずっと長い間、心のどこかに燃えカスがくすぶっていることに気づきながら見て見ぬ振りしながら生きてきた。そんな自分にとって、これは実に一大決心なのだ。

正直、今でもアーティストに憧れているけど、50歳になった今、アーティストを目指してゴリゴリやるのではなく、もっと楽な気持ちで、絵を描く楽しさをもう一度自分の喜びとして取り戻す、そういう気持ちで取り組もうと思う。前衛アートでなきゃ価値がないという学生時代の思い込みももう捨てるつもりだ。

まだ始めたばかりだけど、毎日描くというのは結構たいへんだ。
何を描こうか悩むし、考えるのも面倒くさい。
描いている最中も「ヘタだな。むずかしいな」と葛藤するし。
でもそんな頭の中で「ヘタならヘタなりにやったらいい。それでもいいからやってみるんだ」と岡本太郎の声が聞こえてくる。
色彩に目を奪われる瞬間もあるし、想像の世界で遊んでいる瞬間もある。
なにより、学生時代から今まで、十分に満たしてあげられなかった自分のアーティスト欲、創造的欲求が少し充されるような感覚がある。

これを人様にさらすことにはもちろん抵抗があるが、それもこれも自分自身を創造して肯定していく訓練だと思ってやってみようと思う。
絵を描く喜びを、生成AIに奪わせてはいけない。



たそがれの街


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