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乱反射する光を感じて顔を上げると、窓の向こうに海が見える。

海だよ!

喜びを分かち合うべくいそいで振り返ると、そこには水影の中で心地よさそうに眠る顔があった。

仕方ない。写真に残してあとでレポートしてやろう。

終点までお世話になった電車を降りると、からっとした日差しが涼しい風とともにやってきた。

反射的に下を向くと排水溝から湯気が昇っている。

向こうに海があるけれどこっちのは熱いよ。過去に誰かがそう言ったのだろうか、そう思いつつ駅に書かれた「熱海」の文字にカメラを向けた。

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まいです、ごきげんよう❀

今年のゴールデンウィーク、皆さんはどのようにお過ごしでしたか。私は相方とともに熱海旅行に行ってまいりました。

休暇というと、ショッピングやオリエンタルランドなど商業施設を訪れる人も多いと思います。私はと言えば、商業施設より自然が多いところでお散歩とか美味しい空気を吸うだとか、そういった時間を過ごしたくなります。

今回の旅もそうでした。

一日目は、かつての3大別荘でのちに文豪たちに愛された宿となった「起雲閣」を訪れました。

閑静な和館の窓には「大正硝子」という特殊なガラスがはめられ、外の庭園がまるで水面の中にあるかのように少しゆらめいてみえます。

ヨーロッパの山荘風の洋間もあり、扉に施された緻密な彫刻やステンドグラスが和館とはまた異なる雰囲気を醸し出し、魅了されます。

私も相方も各部屋の展示物や説明書きをじっくり見るので、気づけば同じタイミングで来館・来室したはずの人たちがいなくなり、貸切状態で観覧することができました。

起雲閣を出て来宮神社を参拝し、樹齢2000年を超えるという大楠(おおくす)を見に行きました。この大きな楠を見上げてきた人がいったいどれほどいるのでしょう。私はおよそ20年、この楠はおよそ2000年を生きている。そしてこの先の2000年をも生きていくのかもしれません。

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私たちが熱海を訪れた日はなんと「熱海サンビーチ」で海上花火大会が行われる日でした。

ホテルでお風呂と夕食を済ませ、ホテルの浴衣に下駄を履き、サンビーチまで歩きました。

打ち上げ花火、とても好きなのですが、近頃の花火大会はどこも混雑してとても行けないので、豪華な花火を見るのはとても久しぶりでした。

いつもは手元の四角い光ばかり見ている大勢の人が、みんな、空を仰ぎ見ている。

穂を引く大きな花火に無意識の感嘆が漏れる。

なんて、素晴らしいんだろう。

日常では感じることのない大きな音の衝撃に体は少し震えているけれど、恐さにも似た美しさがそこにあるのです。

火の神が空に弾けている。叫んでいる。美しい。恐れ多い。小刻みに震える眼の縁出涙も震えている。隣には相方がいる。

幸せだ。私は幸せだ。

そのありがたみに頭が下がる思いで、最後の花火を見届けました。

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ゴールデンウィーク。何がゴールデンなのか、休暇の長さなのか、お金の回りなのか分からないけれど、長くなくてもお金をたくさん使わなくても、もっと単純なことで満たせる心が我々の中にあるのかもしれません。

そうしたらいつだって、輝かしい日になるのかも。そうなのかも知れません。