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〈注意〉このブログに登場するクッキーの材料およびレシピは、私の主観的な記憶を基に記載されたものであり、まったくもって信用するに値しない情報であることをご承知おきください。

2010年5月

日曜日。お菓子作りはほとんどしない母が珍しくクッキーを作ると言い出した。いや、正確には何も言わずに作り出して、完成したのがたまたまクッキーだったのかもしれない。おもむろに白い粉を出してきた母の様子を横から眺めていた年少の私には、何を作ろうとしているのかも材料に何を使っているのかも予想がつかなかった。ただ、白い粉にいくつかの材料を加えたら生地が黄色くひとまとまりになって、手につかないくらいになったことと、生地にホワイトチョコレートとブルーベリージャムが混ざっていたことは覚えている。細かい過程はともかく、私は型抜きだけお手伝いしたのだった。ハート、星、お花、くまさん、クリスマスツリー。いろいろな形の型があった。私は妹と一緒にそこにあるほとんど全ての型を使って、あらゆる形のクッキー生地を用意した。型を抜いた生地はオーブントースターに入れて焼いた。パンを焼くのと同じくらいの時間だっただろうか、熱を加えた後の生地は程よく膨らんで白く、ところどころにきつね色の焼き目がついていた。焼きたてのクッキーを口に入れると、すさまじい熱さに襲われ涙目になりつつも、生地とホワイトチョコレートの優しい甘さが口の中に広がった。とてもおいしかった。

2015年3月

休日で特にすることもなかったので、クッキーを作ることにした。レシピは確か、家にあるお菓子のレシピ本に出ていたはず。おや、粉も砂糖も卵も牛乳もあるけれど、チョコレートがない。仕方がないからチョコレートクッキーではなく、抹茶クッキーに変更だ。抹茶ミルクのもとに少量の水を加えてどろどろの状態にすればほら、チョコレートのようじゃないか。このレシピでは、生地が液体に近い状態になり、型抜きはできないようだ。クッキーにもいろいろな作り方があるのだな。諸々を混ぜた生地をクッキングシートに薄く丸く伸ばして、オーブントースターで焼く。うきうきわくわくしながらトースターの蓋を開けると、そこにはペタッとした何かがあった。思いのほか生地が膨らまなかったようだが、一応中まで熱は通っているようだ。とりあえず冷まそう。余熱が取れた頃に味見をしてみると、存外にサクサクでおいしいかった。母の評価もなかなかよかった。普段はそこまで興味を示さない妹ですらバクバクと食べた。私は思わぬ成功に少しにやにやしてしまった。

2019年12月

私は高校生になった。課題も予習もたまっていく一方であるのにもかかわらず、久しぶりにクッキーを作ろうと思った。ネットで調べたレシピに従って、冷蔵庫の中にある材料をかき集めた。開封済みのバターの箱が少し軽い気がするが、クッキーを作るには問題なさそうだ。バター、薄力粉、牛乳、卵、砂糖を混ぜて生地を作る。型を使うのは面倒だったので手で丸く成形することにした。オーブントースターに入れて焼く。焼いている間に次の回の生地をクッキングシートの上に用意する。焼けたクッキーをトースターから取り出し皿に移して冷ます。用意しておいた生地をトースターに入れて焼く。取り出す。焼く。取り出す。今回は上手くいったか、どうだろう。味見として1つ口に入れたところ、サクサクせず、少し硬くてボソボソとしていた。生地を作る工程を振り返ってみて、バターの分量を誤ったことに気が付いた。

2024年2月

何となく作りたくなったからクッキーを作ろうと思った。ネットで簡単に作れるレシピを探しておいたが、材料が足りなかったので近所のスーパーで買い出しに行くところから始めた。薄力粉、卵、無塩バター、それから小さいころに作ったクッキーに入っていたホワイトチョコレートを2枚ほど買った。家に帰ると早速作り始めた。まずは材料の計量から。バターは包み紙に書いてあるメモリを参考にすれば大体の量が分かる。薄力粉は計量カップ1杯で大体110グラムであるらしい。砂糖は仕方がないから大さじ小さじを使った。お気づきの方もいるかもしれないが、我が家には計量用の秤がない。そのため、計量カップやらさじやらメモリやらを駆使して計量するしかないのである。計量した材料を混ぜると、若干粉っぽい硬めの生地が出来上がった。冷蔵庫で1時間ほど寝かせてからオーブントースターで焼く。今回は型抜きもできそうな硬さであったが、使用後に型を洗う手間を省くため手で成形した。ちなみに我が家にはオーブンもない。完成したクッキーは、しっかり甘くて味は良いが少しポソポソとしたものになった。少し粉が多かったのかと反省した。後日、この話を知り合いにしたら少しひかえめに笑われた。

2024年4月

この間作ったクッキーがいまひとつだったので、リベンジしようと思った。材料もホワイトチョコレートを除けば先日のものが残っている。レシピは、大体覚えている、はず。ちゃんと確認すればよいものを、私は謎の自信から先日の記憶をたどって作った。分量も何も測らず、混ぜる順序も気にせず、行き当たりばったりにやった。案の定前回よりも残念な食感、甘さの薄いクッキーモドキが完成した。幼いころに食べたあの頬の落ちるようにおいしいクッキーは、いつになったら再現できるのだろうか。