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一文の熟成、または、発酵。

高校を卒業してからも、当時使っていた教科書のうちの何冊かは捨てずにとっておいた。「もしかしたらいつか役に立つかもしれないな」なんて思っていたけど、そんないつかは大体やって来ない。今回はテーマが教科書なので、珍しく本棚から一冊を取り出す。

『精選 現代文B 新訂版』大修館書店

こんな仰々しいタイトルだったっけ。

パラパラとめくる。
26ページ、『山月記』中島敦。懐かしい。
高校1年の読んだ時には、まず読み進めづらい文体が気になって、内容どころではなかったような記憶。今読み返してみると、割と当時よりも読める。なんとなくのストーリーが頭に既に入っているからか、難しい熟語群を読解することを諦めているからかは分からないが。

30ページ、シャープペンの黒い線が引いてある。高1の時の自分がつけた印。

理由も分からずに押し付けられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きてゆくのが、我々生き物のさだめだ。

『山月記』中島敦

おお、なんだか深い一文に線を引いている。
しかも後にも先にも引いてるところは、そこだけ。

なんで当時の自分はそんなところに線を引いたんだろう。
先生に言われたからなのか、
それとも何か自分自身で思うところがあったのか。
全く覚えていない。

昔、確かに自分が何かを思っていたはずなのに、
もう思い出せなくなっている。
大体のことはそういう風に過ぎていくのだろうけれど、
過ぎたものの痕跡を感じると、その時のことを思わずにはいられない。

昔好きだった小説、昔好きだった音楽、昔行ったあの場所。
忘れてしまったものを、思い出せなくなってしまったものを、
思い出す作業があっても良いのかも知れない。

それはまるで、
何かがじっくりと熟成していくような、
あるいは発酵して独特の香りを発するような感覚。
それが今現在の自分に何かしらの示唆を与えている。

理由は分からないけれど、何だか面白い。


<ここで一曲>

昔聴いてた曲、振り返って改めて聴くとめちゃめちゃ良いじゃん!って思う時ありますよね。この曲も、ある意味自分の中で熟成されてました。

書いた人:けい
ひところ:久々に飛行機に乗ったのですが、自分がどこでも寝られる体質ということが証明されました。

WACODES

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