【韓国映画&ドラマ】モヤシのひげ取りには福があるね
▲(トップ画像)韓国映画「チャンシルさんには福が多いね」(2019年)で、モヤシのひげ取りをしながら二人の会話がはずむ、という印象的な場面。(左の俳優は「ミナリ」でアカデミー賞助演女優賞のユン・ヨジョン、右はカン・マルグム)
☛映画「チャンシルさんには福が多いね 」https://eiga.com/movie/93586/
「聘珍樓」本店のサンマー麺は絶品だった
ずっと前から、モヤシのひげは丹念に取るようにしている。
“暇だねぇ”と言われそうだが、食感がだんぜん違う。
NHKテレビ「きょうの料理」で、今井亮さん(料理研究家)も、丁寧に説明していたくらいだから、間違いないと思う。
――モヤシのシャキッとしたおいしさを知ったのは、サンマ―麵だった。
コロナ禍のはるか前のこと。
神奈川県民のソウルフードであるサンマー麺がなつかしくて、本場で食べたくなって、発祥の店と言われる横浜中華街の「聘珍樓(へいちんろう)」本店に行った。
(※残念ながら、横浜中華街の本店は現在休業中だそう)
さすが本場、予想にたがわず、うまかった。
――サンマ―は「三馬」と漢字が当てられることがある。
ふつうは、モヤシ、白菜、豚肉など三種以上の材料を炒め、仕上げにとろみをつけた醤油味のうま煮そばのことだ。
初めてサンマ―麺を食べ、モヤシのとりこに
サンマ―麺を初めて食べたのは、小学生のとき。
横浜市の東のはずれ、鶴見区のバス通りにあった町中華の「胡月(こげつ)」だった。
家の近くの商店街にあって、「胡月」の店主は中国の人らしく、豚肉、モヤシ、キャベツ、ニンジン、タケノコの輪切りなどをたっぷり入れ、しょうゆの薄味であっさりと本格的に仕立て、その極上の「三馬麺」をいつも注文していた。
それから、モヤシがすっかり好きになってしまった。
今のようにビニールの小袋(200g)に包装されているわけではなく、八百屋に行くと水を浸した大きなカメにモヤシがぎっしり詰まっていて、店のおやじさんはそこから目分量でモヤシをすくい、「はい、5円ね」などと渡してくれる。
当時、かけそばは30円、きつね・たぬきそばやラーメンが35円という時代だった。
ニッポンの円安政策がモヤシの劣化を招いた!?
それから半世紀もすると、日本の国力と同じように、モヤシじたいが劣化し、値段はかなり上がってしまった。
モヤシは茹でたりするとヘタっとしてしまうが、サッと炒めると歯ごたえがあって、どんな調味料にも合うし、栄養価はさほどないが、食物繊維が摂れ、安価な“庶民の味方”だ。
ところが、コロナ以降、モヤシのひげが妙に長くなり、先端がうっすら茶褐色になっているものが目立つようになった。
モヤシごときで硬い話になるけれど、どうやら、ニッポン政府の円安政策によって原油などエネルギーの輸入価格が高騰し、ハウス栽培の熱源にコストがかかりすぎて、モヤシの価格が上昇したのではないか、と新聞やTVは報道している。
おまけに大手スーパーなどが利幅を維持するため、一度に大量購入して冷蔵備蓄するから、店頭販売するときにはモヤシの鮮度が落ちてしまっているのではないかとひそかに疑っている。
【韓国ドラマもモヤシのひげ取りが好き】
モヤシのひげ取りには、やっぱり「福」がある
そんなこんなで、モヤシのひげ取りも作業が増え、よけいな手間がかかるようになってしまった。
それでも、ニュースを見たり、プロ野球の中継を見たりしながら、モヤシ1本ごとに両端をいちいち取り除いている。
面倒くさいなとか、“人間、辛抱だ”(先代横綱若乃花親方の有名なフレーズ)とか、ぶつぶつ言いながら、数十分かけて一袋分のひげ取りを終えると、ひとまず達成感が得られ、さあやるぞ!と料理に取り掛かる気持ちになれる。
これはこれで、「幸福」なんじゃないかなという気がする。
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