見出し画像

「ブラッシュアップライフ」~たった一人の<ウーマン・リブ>(下)

「ブラッシュ――」の主人公・麻美は、<中ピ連>の榎美沙子さんがモデル!?

女性解放運動は、もちろん欧米だけのものではない。
ニッポンでも明治時代から「元始、女性は実に太陽であった」の平塚らいてうたちの青鞜社(明治―大正期)による婦人解放運動や、その理念を引き継いだ市川房枝(戦後に参議院議員)らの女性権利拡張運動があり、さらに“男権社会”に対する女性の直接行動もあった。
 
それが、1960年代後半から1970年代初めの“政治の季節”に、<女性の中絶の権利と妊娠しないためのピル解禁>を訴えた、榎美沙子さん(京都大学薬学部卒)率いる<中ピ連>の活動だった。

<中ピ連>のリーダー・榎美沙子さんとヘルメット姿の同志たち

とりわけ、“不適切な女性関係”を結んだ男を追及するため、勤務先に集団で押しかけ<女性の泣き寝入りを許さない>告発行動を起こしたことが週刊誌に派手に取り上げられ、TVのワイドショーには<中ピ連>のヘルメットをかぶった榎さんがたびたび出演するなど、世間の大いなる注目を浴びた。
 
こうしたラディカルな行動は、啓蒙的な学者や社会活動家が唱えるフェミニズム論やジェンダー論とは一線を画すものだったかもしれないが、多くの女性からは拍手喝采を浴び、<中ピ連>の活動が、“一夜の花火”とは思えないほどの影響を社会に与えた。
 
ただ、このことだけで、「ブラッシュアップライフ」の生まれ変わり人生の2周目で薬剤師として働いたことのある麻美が、実際に薬剤師の資格を持っていた榎美沙子さんをモデルにしていた――というのは早合点にすぎるかもしれないが、あながち的外れとも言えないような気がする。
 
やがて、<女性闘士>として“マスコミの寵児”となった榎さんは、<中ピ連>の活動のあと、<女性党>という公認政党を立ち上げ、当時のTVのワイドショーに引っ張りだこだった評論家の俵萌子さんたちを擁立したが全員落選し、選挙資金の借金を返済したあと学生時代に結婚した夫と離別し、薬剤師として生計を立てているというあたりまでは報じられたが、それ以降、二度とマスコミの前には姿を現さなかった。

上野千鶴子さんの<おひとりさま>か、それとも<おふたりさま>か?

ここで、最後に疑問に思ったのは、麻美たちには目立った恋愛話もなく、どうして<おひとりさま>のまま、医療ケア付きの老人ホームに入所したのか、という点だ。

「ブラッシュアップライフ」最終話の一場面。

うがった見方をすれば、<男支配><女性嫌悪>の社会に嫌気がさし、<女子会>に生きるという選択をした結果なのだろうか。
 
<おひとりさま>の生き方を提唱してきた上野千鶴子さん(元・東大教授)が、実は<おふたりさま>だったことが世間に公になってしまった今、もしかすると麻美たちにも隠されたドラマがあるのかもしれない、などと思ったりもする。

新作ドラマ「やっぱり猫のブラッシュアップライフ」が観たい

「ブラッシュアップライフ」が、ここ<note>でも特集が組まれるくらい話題になったのだから、<シーズン2>があってもよいのでは、などと期待してみるのだが、どうだろう。
 
もし実現するなら、「やっぱり猫が好き」もたいまさこ(現70歳)、室井滋(64歳)、小林聡美(58歳)さんたち、人生の先輩世代にもタイムリープに加わってほしい。
 
「ブラッシュアップライフ」安藤サクラさんたち30歳代のレギュラー陣との競演は味わい濃いものになると思うし、「やっぱり猫――」の三谷幸喜+「ブラッシュ――」のバカリズムのコラボ脚本となれば、これはもう最高の話題作になること間違いなしと思うのだ。
 
そうなったら、まったくの新作となり、日テレとフジの双方の著作権の問題もあるだろう。
豪華出演陣の出演料もネックになるかもしれない。
それならいっそのこと、両TV局も製作陣に加わってもらい、予算が潤沢なネットフリックスあたりでのオリジナル作品はどうだろう。
(地上波でその1年後に放送してほしいが……)
 
そうでもしないことには、TV局だけの都合で、視聴者からのニーズがまったく反映されず、ついに【Jドラマ】は海外市場で見向きもされなくなるのでは。
(☛「愛の不時着」はじめ次々とヒットを飛ばす韓国の<スタジオドラゴン>の制作手法に学んでほしい!)
 
そこで、シン・ドラマ「やっぱり猫のブラッシュアップライフ」のテーマは、ブラックユーモアたっぷりに、オトコ社会への女性たちの叛乱劇である。

(おわり)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?