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「皮一枚という口伝」を解析する

大東流の極意の一つであるこの口伝は、相手の手などに触れて皮膚が少しズレる程度動かせば、相手は崩れますよ、という内容です。まさに口伝で、筆者の知る限り書伝されていないのです。多くの口伝は、習った人がそれを記録し、これが事実上の書伝として伝わることが多いのですが、そうなっていない不思議な口伝です。

ところで、皮すなわち人の皮膚は、厚さ1.5~4㎜、面積約1.6㎡、重さ約3kgもあるそうです。重さで比べると脳(1.4㎏)や肝臓(1.2~2㎏)より重いとのことです。ちょっと、驚きですね。

では、なぜ書伝されなかったのか? ということですが、筆者は、
 ①目に見える形ではないこと
 ②触感に関することで伝えにくいこと
 ③スキンシップを通じて、しか伝えられないこと
から書伝に至らなかった、と推測しています。
少し補足すると、①は朝顔や六法・千鳥のように明確な体の形として示すことができない、②は感覚のことなので表現が難しい、③は分かっている人から「こんな感じ」「これで十分」など教わりながら②の触感を醸成するしか方法がない、ということです。とすると、口伝は知っていても本当に分かっているひとから直接教わらないと体得できない、と言うことになります。

では、この口伝を理解するためにどんな稽古をしているか、一例を紹介します。まずは、鉄扇術から入ります、鉄扇破りの技法の中に「手触れ落とし」というのがあって、これを稽古します。相手が得物を持っている方がわかりやすいからです。次に手首取りを捌く稽古に入ります。皮一枚の感覚を指先→手甲→小手(腕)→生地を通して、と磨いていくのです。応用は自在ですが、基本の術理と触感を体得することが大事です。

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