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米国Tech企業のレイオフについて

こんにちは。アメリカのGoogleでソフトウェアエンジニアをしているJustinといいます。最近ベイエリアにいて実感するのは、昨今の米国IT企業では職を探すのが非常に難しくなっているという現状です。そこで、今回はこれからアメリカのIT企業で働きたいと考えている方に向けて、私のレイオフに対する実感をお届けできればなと思い、この記事を書くことにしました。


概要・レイオフとは

まず、レイオフとは企業が行う人員削減のことです。コロナ禍が始まった2020年初頭からレイオフは始まり、アメリカの政策金利の上下も合間って、レイオフの数は上がったり下がったりしています。下記の図がLayoffs.fyiを参照した2020年から24年までのレイオフの増減表です。

2020年から2024年までの人員削減の増減  (source: layoffs.fyi)

2020年初頭にコロナウイルスが蔓延し、2022年のQ1までIT企業の大規模なレイオフは実施されませんでした。上の図を見るとわかりますが、2022年のQ2から人員削減をする企業が増えています。有名なところだと、AmazonやMetaが2022年の11月にそれぞれ10,000人と11,000の人員削減をこの時期に行いました。それに続いてGoogleとMicrosoftも2023年の初頭にそれぞれ10,000人以上の解雇を行いました。これには大別して2つの要因があると思っています。

理由1 - 過剰雇用

コロナ禍によって人々が家にいる時間が増え、IT企業の収益が増収になりました。コロナ禍による低い政策金利もこれに加わり、多くのIT企業はこぞって人を雇うようになりました。この時期に転職をした人も多いのではないのかと思います。この過剰な雇用により、Tech企業に転職する数が増えました。AIの台頭という条件も加わり、レイオフしやすい環境ができてしまったことが要因の一つではないかと思います。

理由2 - 政策金利

もう一つの大きな原因は政策金利ではないでしょうか。下の図は連邦準備制度の定めるアメリカの政策金利の過去4年の変化です。パンデミックが始まった直後に金利は下がり、企業は人を雇いやすくなりました。そこから2022年まで低金利は続きますが、2022年に金利が上昇しました。そこで、今まで安く人を雇えていたのが金利の上昇により経営が圧迫され、レイオフに至ったのではないかと私は思います。

過去4年の政策金利 (source: stlouisfed.org)

2024年6月における現状

2024年6月におけるIT企業の雇用市場は労働者から見ると厳しいと言わざるを得ません。私の周りでは転職が難しいと話す人が多く、それはデータにもあらわれていると思います。下記のグラフは過去2年間のIT企業の求人数です。2022年中旬の48万件をピークに、現在は20万件まで落ち込んでしまっています。

過去2年のIT企業の求人数 (source: trueup.io)

LinkedInの求人を見ていても、仕事の求人が出てからその1つの仕事に対して1週間で500件の応募があったなどというのはザラに聞く話です。幸いなことに、これ以上悪くなりそうな気配はないですが、AIという不確定要素があるので言い切るのは難しいと思います。

アメリカのエンジニア新卒採用

さらに今1番厳しい状況に置かれているのが新卒のエンジニア志望の学生さんではないでしょうか?ここ1年でBig Techはインターンの数が減り、新卒の学生さんの採用は5年前と比べて非常に少なくなったように感じます。

さらに言えば、近年のComuter Science専攻の数の増加も職探しの難しさの一因ではないかと思います。The Atlanticの記事でも書かれているように、10年前に比べるとスタンフォード大学のCS専攻の学生の数は倍になりました。日本でも、東京大学の情報理工学系研究科も2020年に修士の定員を158人から85人増やして243人としました。(ソース

このCS専攻の学生の増加に対して、求人の数がここ2年で半分以下になったことから、ここ数年でCS専攻で大学を卒業する人にとってアメリカのIT業界への就職というのは難しいものになっているのではないかと思います。

終わりに

いかがでしたでしょうか?現状の米国Tech企業のエンジニアでの就職はなかなか厳しいものがあります。企業もAIの台頭を見据えて資金繰りをしていかないといけないので、これから将来的に雇用状況が改善するかどうかはわかりません。また今後も大きな動きがあれば記事にしたいと思います。ここまで読んでいただいてありがとうござました。

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