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アメリカのH-1B就労ビザについて

こんにちは。アメリカのGoogleでソフトウェアエンジニアをしているJustinといいます。今回はアメリカで働くにあたって必要となる就労ビザ、特にH-1Bビザの話をしようかなと思い記事を書きました。あらかじめ断っておきますが、私は弁護士ではないので、この記事の正確性については保証できない上にこの記事は法的なアドバイスではありません。あくまで10年以上北米で生きてきた私の理解ということでご了承ください。

概要

アメリカで就労するにあたり最もポピュラーなビザとしてH-1Bビザが挙げられます。アメリカ合衆国移民局 (United States Citizenship and Immigration Services - USCIS)のウェブサイト[1] を要約すると、H-1Bに応募するにあたり以下の条件を満たすことが必要とされます:

  1. 高度で専門的な知識の理論的及び実用的な応用が必要な職業

  2. 特定の専門分野における学士号またはそれ以上の学位の取得

大雑把にいうと、以上の条件を満たし、かつ会社からスポンサーをしてもらえればH-1Bの抽選に進むことができます。そこで晴れて当選すると、アメリカで働くことができるようになります。以下の記事ではH-1Bの細かい点について私の個人的な理解を書いていこうと思います。

高度で専門的な職業

概要で触れた一つ目の項にある「高度で専門的な…職業」の代表的なものはITエンジニア、会計士、医療従事者、弁護士、ジャーナリストなどが挙げられます。このような職業についており、かつ学士号またはそれ以上の学位を取得した場合に、H-1Bへ応募することができます。米国のIT会社ではこのH-1Bで働いている方が多く、アメリカで働くにあたって最もポピュラーなビザの一つだと思います。

就業のルール

このH-1Bなのですが、期限が3年で、1回の3年間の延長が可能なので、トータルで最大6年間アメリカでの就労を可能とします。注意点としては、H-1Bビザは個々の会社と紐づいており、自由に転職ができるとは限らない点です。そもそもH-1Bに応募するためには雇用主にスポンサーをしてもらう必要があり、その雇用主の会社以外の会社では働いてはいけないというルールがあります。これは副業に関しても適応され、H-1Bで働いている間に例えば無許可でアルバイトをしてお金を稼いでしまうと違法就業扱いとなります。

これは少しややこしい話になるかもしれませんが、法律上2つの雇用主のもとでH1Bで働くことも可能です。このスタンフォード大学の国際学生センターのウェブサイト [3] によると、H-1B下での従業員は法律上Concurrent Employment (同時就業)として2つ以上の雇用主のもとで働くことは可能ですが、スタンフォードの全てのH-1B従業員はフルタイムで働かなければいけないと書いてあります。ただ、この同時就業は私の周りでやっているという人はあまりおらず、少し珍しいケースなのかな、と思います。後述するの抽選倍率にもかかわる話ですので、ここで挙げておきました。

抽選倍率

H-1Bは毎年3月に抽選があり、この抽選に当たればこのビザでアメリカで働く道がひらけます。過去5年の倍率は移民局のウェブサイト [2] によると以下の通りです:

  • 2021会計年度 - 45% (124,415の当選件数 / 274,237の応募件数 )

  • 2022年 - 42% (131,924 / 308,613)

  • 2023年 - 26% (127,600 / 483,927)

  • 2024年 - 24% (188,400 / 780,884)

  • 2025年 - 25% (120,603 / 479,953)

これを図にすると以下のようになります。

図1: 会計年度におけるH-1Bの応募件数と当選件数

この図を見て目につくところは、まず2022年の会計度年数(2021-2022)から2023年度における有資格応募総数(応募件数のうち、応募する資格がある件数)が約55%増加しているというところです。この増加はこのウォール・ストリート・ジャーナルの記事 [4] でも報道された一部企業が外国人内定者の就労ビザ当選確率を高めるため、H-1Bの重複申請を行ったことが原因の一つとして挙げられます。

先の就業ルールの項でも触れましたが、H-1BはConcurrent Employment (同時就業)として複数の申請を行うことが可能です。この制度を利用(abuse?)して、複数の企業で一人の人をH-1Bに当選させようとしたことが蔓延したことが原因で、抽選当選確率は2024会計年度には24%になりました。以下のグラフは、過去5年のこのような複数応募件数の増加を表したグラフです。

図2: 会計年度におけるH-1Bの複数 / 単数応募件数

図2を見ると、2023年度と2024年度における青で示された複数応募件数が増大していることが見て取れます。この増加が全ての有資格応募数の著しい増加に起因していることは明らかだと思います。このことが原因の一つになってH-1Bの抽選に外れ続けてしまい、カナダをはじめとする他の国に行くことを余儀なくされた人も少なくないのではと思います。

ただ、移民局も対策を講じ、バーンズ&ソーンバーグ法律事務所の記事 [4]によると今年から応募会社単位で抽選を行うのではなく、個人の単位で抽選をすることにより、複数の応募件数は2025年度には減りました。ただし、今年USCISが準備していた当選件数は過去5年間の中で最も低い水準だったので、依然として25%という低い当選確率が続いているようです。

終わりに

アメリカ就業への一つの道としてH-1Bビザがあります。本記事では、私の理解をベースとしたH-1Bの特性について触れています。あくまで私の理解なので、この記事の正確性については保証できない上にこの記事は法的なアドバイスではないことをご了承ください。

一般的にポピュラーなH-1Bを使ったアメリカ就業の道の一つとして、アメリカの大学を卒業後、アメリカの会社で働くオファーを承諾し、会社のスポンサーでH-1Bに応募、当選すれば晴れて3年間の就業許可が降り、そのまま就業といった道があります。

ただ、近年は色々な要因でH-1Bの当選件数が低くなっている上に、応募件数が増大していることはデータから明らかです。ですが、他の記事で書こうと思いますが、H-1Bを経てアメリカのグリーンカード(永住権)を取ることも可能であるので、H-1Bがアメリカ就職の大きな一つの道ということは変わらないのかな、と思います。

ただ、これからアメリカで働こうと考えている方にとって、こういったビザという運が絡む要素もアメリカ就職には発生するということは視野に入れたほうがいいと思い、本記事を書くことに至りました。

読んでくれてありがとうござます。いかがでしたでしょうか?もし有益な情報であると感じたのであれば、この記事をライクをしていただけると今後の記事作成の励みになります。Twitterもやっているので、もしよかったら覗いてみてください。

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