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ジュウ・ショのサブカルマンガマガジン

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マンガについてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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2021年3月の記事一覧

丸尾末広とは|経歴から「美しさ」と「エログロ」の源泉を探してみる

江戸川乱歩が好きな人は、おそらく夢野久作が好きだろう。そして夢野久作が好きな人は、ほぼ100%丸尾末広にハマる。「芋虫」と「瓶詰めの地獄」が並ぶ本棚には「少女椿」もあるはずだ。 きゃりーぱみゅぱみゅが5年ほど前に、お目目モチーフのアクセサリーを流行らせた。のを見て「眼球はかわいいよね〜(にっこり)」とプラスチックのおもちゃじゃ我慢できなくなる系の人種が、この方程式に当てはまる。ポップなエログロより本物のエログロのほうが好きなのだからしょうがない。 平成〜令和の今観ると、彼

佐々木マキとは|手塚に狂人と、村上に天才と呼ばれた前衛漫画家

20歳のころ、旅行先の岡山・倉敷市で古本屋に入った。そこで手に取ったのが佐々木マキ作品の集成「うみべのまち」だった。「なんかどっかで見たことある絵やな」と思って、手に取ったのを覚えている。後から「あ〜村上春樹の『羊男のクリスマス』だわ」と気づいたんですが、当時は思い出せなかったんです。 なかを読んで、あまりの衝撃にひっくり返った。開脚後転2回かました後に華麗にロンダートを決めました。まさに「マンガ」に対する概念が変わった瞬間で「あ、こういうマンガがあってもいいんだ」と思った

「うる星やつらが萌えの元祖」といわれる理由を語らせてくれ

「高橋留美子の『うる星やつら』が、萌えの元祖らしい」と聞いたとき、正直ピンとこなかった。「うる星やつら」の発表は1978〜1987年。しかしそれ以前にもいわゆる「萌えキャラ」は生まれている。 例えば日本初の少女マンガ・リボンの騎士は1953年に出ている。主人公のサファイアは両性具有であるがゆえに、かなりツンデレ。しかも女性兵士というコスプレ感も、今の萌えに近い。 セクシー系ドタバタコメディでは、1968年の永井豪「ハレンチ学園」がすでに存在し、PTAのおばさま方をめちゃめ

祖父江慎のブックデザイン|「誰もやってないからおもしろい」という話

数年前、祖父江慎さん(以下、僭越ながら敬称略)にお会いした。彼が代表を務めるコズフィッシュが関わるお仕事に、ホント「カスる」くらい参加させていただいた。それ以前からもちろん大ファンだったので、実際に目の前にすると興奮したものだ。 祖父江慎さんは、ブックデザイナーである。「装丁画家」ではなく、ブックデザイナーだ。ではブッデザインとはなんぞや、というと「本そのものをデザインする仕事」です。表紙はもちろん、中の紙質、印刷の色、フォント、行間の幅、ノンブル、スピンに至るまでをデザイ

サブカルとアングラの違いとは|ヤバい世界について本気で考えてみる

「アングラとサブカルの違い」は一般のメインカルチャーで生きている人には理解し難いものがある。「いやいや、どっちも絡みにくいでしょ」とまとめてしまいがちだ。 しかし気をつけてほしい。アングラ畑で"毒"を撒布している人と、サブカル畑で"無駄"を耕している人は違う生き物だ。当人からすると「一緒にしないでくれ」と思っているパターンは結構ある。 アングラの人に「お前、ほんっとにサブカルだな」と安易に声をかけるのはマズい。「ちげぇよ。俺はアングラだよ」と血走った眼で返されるだろう。な

24年組とは|少女マンガの歴史を塗り替えた天才女性漫画家たち

少女マンガが、長年にわたって日本の少女たちの人生観、恋愛観に大きな影響を与えているのは間違いない。ちゃお、りぼん、なかよしに育てられ、なんとなく大人の世界に触れて成長していく。うっかりそのまんま大人になって、いつの間にか黒歴史にまみれた人もいるだろう。我々はあのキラッキラで巨大なお目目から大人の世界を学び、憧れを抱いてきた。 そんな少女向けのストーリーコミックは1953年、手塚治虫の「リボンの騎士」から始まる。それからトキワ荘の紅一点、水野英子が、現代少女マンガに通ずる、ロ

今敏について|46年の生涯、パプリカ・パーフェクトブルーなどの作品解説

今敏(こん さとし)の作品は、アニメ史のなかでも明らかに異質なものだ。ジャパニメーションブームが去った後に颯爽と現れて、海外に日本アニメの価値を再認識させたのは、今敏の功績が大きいでしょう。 このメディアでも何度か記事を書いてきました。 そんな今敏の作品には、いまだに熱狂的なファンが多いんです。サブカルオタクのなかで勝手に神格化され、崇め奉られているんですね。「パプリカしか観ていない」けど「今敏はすごい」と言いたくなるサブカル諸君もいるだろう。アレは「NEVER MIND